「新卒でNPOに就職」という選択肢はあり?なし?
将来は社会に貢献する仕事に就きたいと考えている高校生は少なくないはず。そこで選択肢の一つとして浮上するのが、社会問題を解決することを目的としたNPO法人(特定非営利活動法人)。
リクルート進学総研が実施した『高校生価値意識調査2012』では、「NPOなどで働きたい」という項目に「あてはまる」「まああてはまる」と回答した高校生は合計で12.0%に上り、現状でも将来の進路として関心をもたれていることがわかる。
その一方で、日本ではまだまだ「NPO=ボランティア」といった見方が根強いのも事実。「NPOで働く」というのはやはり厳しい選択肢なのだろうか? NPO、ソーシャルビジネス(社会問題の解決を目的とした事業)に詳しい立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科の中村陽一教授に話を聞いてみた。
「現在の日本で、有給の常勤職員がいて、それだけで人並みに食べていけるNPOはまだわずかです。また、今のNPOを支えているのは民間企業などからの転職組が中心。人を育てる余裕がなく、新卒者の就職先としてはいろいろなリスクがあるというのが現実です」
しかし、これはあくまで現時点の話。今、日本のNPOをめぐる状況は変わりつつある。そもそもNPOは利益を追求することを第一の目的とはしていないが、利益を上げてはいけない組織ではない。NPO先進国アメリカでは、寄付も含めて安定的な収益を上げることに成功している組織が多数あり、教育系のNPOであるTeach For Americaが大学生の就職希望先ランキングでトップにもなっている。
「日本でも、ここ最近の流れとして、NPO、株式会社など法人の形態はさまざまですが、民間で経験を積んだ人材が社会問題の解決にビジネスの手法を取り入れて成功している事例がいくつも出てきています。若手はもちろん、経験豊富な中高年の参入も増えていますから、紆余曲折(うよきょくせつ)はあるにせよ、NPOやソーシャルビジネスをめぐる状況は、今後好転していくはずです」(中村教授)
数年でアメリカ並みに…とまではいかないまでも、今の高校生が大学を卒業するころには経営基盤の安定したNPOや社会的企業(社会問題の解決を目的とした株式会社など)がグンと増えている可能性は十分。新卒でNPOに就職するケースも珍しい話ではなくなっているかもしれない。では、そのために準備をしておくべきこととは?
「NPOなどの活動には高校生、大学生でもボランティアとして参加できます。また、高校や大学の教育の一環として社会貢献活動の企画・運営に携わる機会も今は豊富。高校・大学での勉強と現場での経験を通して、即戦力として通用する力を養ってほしいですね」(中村教授)