【藤原和博×西野亮廣の未来講座⑤】「信用でつくる経済」とは
2時間目「信用でつくる経済」 西野亮廣
西野:
座標軸(上:認知、右:信用)があったとして、横に行けば行くほど信用ある。
で、上に行けば行くほど、認知がある。
くれぐれも言っておきますけど、好感度じゃないからね。
信用度だからね。
たとえば淳さん(ロンドンブーツ1号2号)どう?
クラウドファンディングで全然お金が集まらないのね。
真ん中の上ら辺?多分そのあたりだよね、認知はすごいあるから。
そのあたりでもいいんだけど、大体、左上のマス目に入るよね。
僕とかホリエモンとかは、多分この辺(右上)なんですよ。
ざっくりいうとこちら側、右側に入っているわけですよ。
じゃあ、おばさん、むっちゃいいおばさんっているでしょ?
朝起きて、頼まれてもないのに近所を掃除して、悪口も言わないし、人のためにすごく奉仕する。
おばさん、ここだよね(右下)。
何が言いたいかって言うと、信用さえあればお金をつくれる時代になったって言ったでしょ?
つまり、クラウドファンディングという信用を両替する装置ができた。
クラウドファンディングだけじゃなくてオンラインサロンもまさにそうだよね。
自分の身を切り売りしているファンクラブもそう。
後は「VALU」、自分を株式化して売っちゃうみたいな。
「タイムバンク」もそうだよね。
自分の信用をお金にするための装置がいっぱいできて、信用さえあればいいじゃんとなって、通貨が、ある時から紙幣から信用になった。
信用さえあれば紙幣をつくれるようになっちゃった。
それでみんなもよく聞くと思うんだけど、 Twitter のタイムラインでも「信用経済」とか「評価経済」とやたら流れてない?
要は“信用さえあればいいんだよ"っていうことやたらみんな言うよね。
信用を稼ぎにいけと。
僕も言うんだけど、信用稼いだら結果的にお金をつくる選択肢をいただけるからね。
そういった装置、たとえばクラウドファンディング。
クラウドファンディングのターゲットというのは信用があって認知がある人。
ここ(座標軸の右上)にいる人たちが、恩恵を受ける。
「ゲスの極み乙女。」もクラウドファンディングをやったら絶対お金集まる。
テレビタレントはこっち(左上)にいるんですよ。
だからクラウドファンディングとすこぶる相性が悪い。
アーティストは結構こっち側(右上)にいる。
アーティストは嘘をつく必要ないし、グルメ番組にも出ないから、本当のことしかやってないからこっち(右上)にいる。
“テレビに干されても全然構わないよ"って人たちがこっちにいる。
それで、ターゲットもそこ(右上)なんだけど、これって信用経済だっけ?って思ったの。
だって、信用あるおばさん取りこぼしてるよね。
これ信用経済じゃなくて、人気経済じゃない?って思った。
おばさんをシェアしないと信用経済とは言わない。
これは人気経済である。
人気がないとお金が入ってこないっていうのは、ちょっと息苦しくない?
つまり、SNSでいいことやんなきゃいけないし、常に発信しなきゃいけないし、有名にならなきゃいけないし、こんな息苦しい世の中はおもしろくねえなと思って。
おばさんをシェアして初めて、信用経済だよね。
ここ(右上)だけだったら人気経済だよね。
つくりたいのは信用経済なんでね。
本当の意味での信用経済は、おばさんを助けること。
で、前回の終わりで宿題を出したと思うんだけどおばさんを助けるためにはどうしたらいいでしょうか。
答え出ました?
出た!?すごいね。
ちょっと前出てしゃべって!
どういうの出た?むちゃくちゃリアルに言うとおばさんにお金が集まるようにしたいわけよ。
学生:
私はおばさんを助けるっていうか、今演劇やっていて、その指導をしてくれる先生にすごいお世話になってるんです。
前に公演に行ったときに、その先生が自腹で衣装やセットを用意してくれたらしい、というのを耳にして、演劇のメンバーでカンパするみたいな話になったんですけど、先生が「いーよ、いーよ」っ言うから、どうやったら先生を気持ちよく援助できるかというのを考えたんです。
西野:
超いい!
学生:
それで「ありがとうシール」っていうのを考えました。
可愛いデザインでありがとうって書いてあるシールを販売して、「ありがとう」と思ったら台紙か何かにペタッと貼っていくんです。
ありがとうが一定数貯まると、何かいいことが起きたらいいな、というのを考えました。
西野:
先生に支援したいんだけど、具体的にはお金を渡したいんだけど、先生はそれを受け取らない。
お金はさすがに申し訳ない、と。
お金は受け取りにくいってことだよね。
確かにおばさんはそうかもしれないね。
おばさんはお金を受け取らないんだよね。
だからここ(右下)にいると思うんだよね。
何かに置き換えるってことだよね。
ありがとうシールだったら先生もペタペタ貼られて気持ちいいな、みたいになる。
ありがとうシールが10個集まったらりんご買えるみたいなね、超素晴らしい!
他ありますか?
学生:
僕はおじいちゃんを思い浮かべました。
そういう人たちの信用を可視化できるものを考えたときに年賀状だと思ったんです。
お父さんとおじいちゃんには、すごいたくさん年賀状が来てて、テレビで見たことある人とかからも来てました。
でも人気があるわけじゃないし、でもお金欲しいなと思ったとしたら、年賀状をその人に送るときに、“お金ください"じゃないけど、集金みたいな感じの形にしてクラウドファンディングとかネット上のサービスのURLを貼り付けておいて、“僕はこういうことやりたいんでお願いします"みたいな形で送ったら、お金集まるんじゃないかなと思って。
西野:
すごくいいね!
新しい通貨をつくるという解決策
西野:
僕の結論はね、おばさんを助けるサービスというか、
おばさんに集まるような通貨をつくってしまったらこれで解決かなと思っている。
あれやこれや考えて僕が出した結論は、「文字」だなと思ったの。
文章、手紙ね。
つまり、運営母体を一つつくって、そこから一文字10円で買うのね。
レターポットっていうサービスを使うんだけど、みんなが持っている状態なわけね。
ポットはコーヒーポットのポットね。
スマホ上にポットを持っているようなもの。
たとえば、その運営からまず一文字10円で買います。
それで友だちに「お誕生日おめでとう!今年も頑張ってね」というような500文字ぐらいの内容の手紙を書いて送る。
一文字10円だから、5000円だよね。
5000円の請求が僕のとこに来る。
請求が来てお支払いしたら、友だちのレターポットに500文字が振り込まれる。
500レターね。
500レターが振り込まれる。
友だちはこれを運営に言って、換金してもらう。
つまり500文字と5000円を交換してもいいんだけど、たとえば同級生が転校しちゃうとか、
そういうときにその500レターを使って300文字の文字を送る。
その同級生は運営に3000円に換金してもらってもいいわけ。
“文字を通貨にする未来"です。
それなんでいいかって言うと、たとえばすごく部下から愛された上司が退社するとなったら、
「ご苦労様でした、お疲れ様でした」とか寄せ書きを書くでしょ。
部下に愛されていればいるほど、信用されていればいるほど、そこに寄せられる寄せ書きの文字数って多いと思うんだよね。
つまり、さっき年賀状って出てたけど、まさにね、その人の信用度とその人に寄せられる文字数は結構比例すると思うんですよ。
うちの父ちゃんは、おばさんと同じように、家の周りの掃除をして、ご近所から寵愛されてるんだけど、父ちゃんはクラウドファンディングできない。
やってもそんなに集まんないんだよね。
でも父ちゃんは何が強いかって言ったらね、今なおね年賀状が届くんだよね。
年賀状やら感謝の手紙が届く。
それは認知度とは全然違う。
つまり“おばさん"だよね。
信用度とその人に集まってくる文字数というのは比例するから、文字を通貨にしてしまえばいいんじゃないか、というのがレターポットなんです。
年末にリリースするんだけど、年末にリリースするのはα版、プロトタイプ。
プロトタイプでリリースするんだけど、同じように一文字10円で買って送り合うところまで一緒なんだけど、この文字が換金できない。
せっかく500文字が振り込まれたにもかかわらず、これは換金できないんだよ、っていうのを一回やってみようと思って。
換金できないけどそれでもよかったら使ってくださいね、って。
みんながこの文字に価値があることがわかってるんだけど、だからといって換金はできない。
換金する装置をつけるのはその先なんだよね、金融庁とかにやらせてくださいってお願いしにいって、OKがでたら後のせで装置をつける。
α版は換金できません、となったときに人はどう動くかっていうのをすごい考えたんだけど、換金できない文字を送られてきたとするじゃない?それどう?やだ?
紙幣の成り立ちから考えてみる
一つ思うのは、レターポットはもはやこれで回るんじゃないか?って思ったの。
なんでかって言うと、口で説明したほうが早いかな。
紙幣ってどうやってできたか知ってる?知ってる人いる?
誰か教えて欲しいんだけど、あてずっぽうで話しますね。
紙幣が生まれた歴史、紙幣って最初は元々貝殻とかそんなもんだったと思うんだけど、どこかのタイミングで金になったじゃん?それで金匠という人たちが出てきた。
彼らが何をしたかって言うと、「金を預かります」ってことだよね。
僕たちが100ゴールドを持っていたとしたら、その金匠に100ゴールドを渡す。
金匠はすごく頑丈な金庫かなんかを持っていて、そこにしまってくれる。
その金匠は預かった代わりに「預かり証」を渡す。
この預かり証でもって、
僕がたとえば焼きそばかなんかを買う。
焼きそば屋さんは100ゴールドをいただくわけだけど、この時点で焼きそば屋は金匠に行って金に換えなきゃいけないんだけど、「ちょっと待てよ、焼きそば売ってもらったこの預かり証には100ゴールドの価値があるぞ」と焼きそば屋は分かって、焼きそば屋はその紙でかき氷とかを買った。
かき氷屋は、かき氷を売りまくって500ゴールドの預かり証でもって、iPhoneとか自転車みたいな高額なものを買った…。
金に交換できる預かり証なのにもかかわらず、みんな金に交換するのを辞めてしまった。
預かり証だけで経済が回ることに気づいた。
この瞬間に紙幣が生まれた。
つまり、この預かり証はただの紙ペラなんだけど、これには100ゴールドの価値があるっていうのをみんなが理解したら、もはや換金しないってことだよね。
これで回せるわけだから。
レターポットのレターもまさにそういう仕組み。
レターポットもこのアプリをダウンロードする段階で、一文字10円ってことはわかってるわけだよね。
500文字が振り込まれたら5000円ってこともわかってる。
500文字を持ってるってことは、5000円持ってるというのをレターポットを持っている人同士はみんなわかってる。
文字が人を救う
東日本大震災が起きたときに「Linkin Park」っていうバンドが、ニコファーレ(六本木にあるネットとリアルが融合する次世代ライブ空間)に360度の画面があるんだけど、そこでサプライズで東日本の人たちを支援するためにライブをしたのね。
その画面はニコ生と仕組みは一緒で文字が流れてくる。
“東日本負けんな!"とか“東北頑張れ!"とか“まだまだいけるぞ!"とか“日本頑張れ!"とかの文字が世界中から届いた。
東日本の人を応援する文字で画面が埋まったんだよね。
あれがレターであれば、被災者の人たちをもっと支援ができたと思うんだよね。
つまり被災地には文字が集まる。
東日本大震災のときもそうだし、阪神淡路大震災と熊本地震のときもそう。
だから文字を通貨にしてしまえば、被災地支援が結構進むんじゃないか。
何兆文字って集まっているわけだから。
それがレターであったら、被災者の人たちにお金が集まるんじゃないか。
それで今レターポットをつくってるわけです。
レターポットをつくるにあたってこれだけ決めようと思ったの。
通貨をつくるっていうのを一か月ぐらい前に発表したのね、ブログ上で。
そうしたら僕のオンラインサロンに“通貨オタク"がむっちゃ集まってきたんだよね。
彼らは何をやってるか、彼らは何を狙っているかって言うと、基本的にギャンブル。
安いときに通貨を買って価値が上がったら売る。
マネーゲームをするために情報を仕入れたいわけだ。
でも僕は、大前提としてマネーゲームのための通貨をつくる気は一切ない。
おばさんを助けるためにつくるわけだから、大前提としてまずマネーゲームにならないようにデザインするよね。
つまり通貨の価値は変わらない。
一文字10円とか、一文字100円とか、そういうアホみたいな設定にするというのが一つと、便箋という言葉を使ってる。
何故かって言うとおばさんたちに届けようと思ったら、サービスの偏差値をあげすぎたらだめなんだよね。
ほんとにね、おばさんでもわかる、おばさんでもなるほどねっと思うような仕組みにしないといけないから、すごく簡単な、一文字10円とか一文字100円とか、便箋で送りますとか、3行ぐらいで説明が終わるようなサービスにする。
人気経済じゃなくて、信用経済、おばさんを助けるための僕の答えはこれでございました。
でも皆さんの「好きっていうサービス」もすごくいいし、「年賀状」って目の付け所も、僕まったく同じことを考えていて、そこに文字が集まってるからね。
超おもしろいし、お金渡しにくいから一回、何かに置き換えるっていうアイデアも超おもしろいと思うんだよね。
そんなのどんどんどんどんどんどんお待ちしてます。
僕がこの仕事をお受けした理由は、“今の高校生は何考えてんのかな"っていうのが知りたくて、高校生が一番おもしろがってるものはなんなんだっていうのを吸収したくて、なるべくなら面白いやつは自分ところのスタッフに引っこ抜いたろってのが狙いとしてあるんで、こんなサービス思いついたとかレターポットをこうした方がいいんじゃないっていうのがあったらまた次回にでも教えてください 。