私が勤める会社は分業制で、入社後の研修を経て金属製のクラウンいわゆる銀歯を作るフィット部門に配属となりました。歯科医院の先生からの指示書に従って銀歯を作るのですが、患者さん一人ひとりの歯の形状は異なるため、一つとして同じものはありません。一度では完成せずに作り直すこともありますが、銀歯を必要とする多くの人たちに自分が作った技工物を提供できることにやりがいを感じています。患者さんと接することはありませんが、担当営業を通じて、歯科の先生から「作ってくれた技工物がよかったよ」という言葉をいただけた時は頑張って製作してよかったと思います。
小学生の頃からねじ締めなど祖父の手伝いをするほど手先が器用でした。家族が医療関係の仕事をしていたことから、資格を取り、得意なことを生かせる職は何かないかと調べていくなかで、たどりついたのが歯科技工士です。歯は食べるためだけでなく、健康そのものに直結するため、この先もずっと必要とされる仕事だと感じ、本校への進学を決意しました。在校中は歯の特徴を覚えたり、手を動かして正確に作り上げたり難しさを実感しましたが、一つのものを作り上げていく面白さがあり、充実した学生生活を送ることができました。国家試験対策の授業でも大事なポイントなど丁寧に教えてもらえたことで、安心して受験に臨めました。
歯の特徴や寸法を覚えて石膏を彫り歯の形を作る授業で身につけたカービング(彫刻)の技術が、今の仕事に役立っています。1本ずつ作っていくため本当に大変なのですが、国家試験前には1日に5~6個製作し、時間制限内に彫ることができるよう練習を重ねたことは良い経験となっています。また、2年次には大学病院で1週間の病院見学実習を体験しました。患者さんによって異なる歯の形や歯並びに合った技工物を製作することの責任を実感しましたが、提供することで喜ばれる人がいるということを知り、学びへの意欲が高まりました。歯科技工士が歯科医療において重要な役割を担っているのだと改めて実感することができました。
和田精密歯研株式会社 勤務/歯科技工科 卒/2023年卒/卒業後、「歯科技工士としての経験や技術の幅を広げたい」と、和田精密歯研株式会社へ入社。ひと通りの部署を経験したあと、やりがいと面白さを感じた金属製技工物を削って微調整までを行うフィット部門に配属となった。「フィット部門は製造の中間工程を担います。だからミスを防ぐためにも、他部署の方とのコミュニケーションを大切にするように心掛けています」と話す。今後はクオリティを高めながら、早く正確に加工できるよう技術の向上も目指している。「将来的には社内の試験を受け、歯科技工士の称号スーパーテクニシャンに認定されるよう頑張りたい」と語る。