農業を営みながら、完全予約制の宿とレストランのシェフとして、お客様にこの地の物をゆっくりしっかり味わっていただける野菜中心のコースお料理をお出ししています。食材は自分が育てた農産物はもちろん、近隣の農家さんが丹精込めてつくった野菜も使います。宿泊客は東京など遠方からいらっしゃる方が多く、どういう人がどんな環境でこの野菜を育てたか…そんな背景や地域性のお話をしながら料理をサーブすると、とても関心を持ってひと口ひと口噛みしめながら召し上がっていただけるんです。そんな風に自分の料理で誰かを笑顔にできた時、そして作り手と食べる側を繋ぐことでこの地域の活性化に役立てたと感じられた時にやりがいを感じます。
実家が農家ということもあり、もともと「食」と「経営」に興味がありました。また、農業を営む両親の背中を見て、私も自分の手で何かを生み出す仕事をしながら生きていきたいと思うようになり、調理の道に進みました。学校を卒業後は東京のビストロに就職したのですが、だんだん田舎で働きたいという想いが膨らんできて(笑)。ここで暮らしていた子供の頃はそんなこと思わなかったに、不思議なものですね。そうして故郷に帰ってきたら、農業と食を通して自分自身で仕事を創っていける魅力と強みに気づいたんです。農家レストランをオープンして、今年で14年目。お客様や生産者をはじめ、たくさんの人とお互い支え合える環境がうれしいですね。
正直に言って、学校を出たからすぐに現場の第一線で活躍できるわけではありません。でも日本調理技術専門学校では基礎的なスキルはもちろんですが、料理人に一番必要で一番磨かなければならない、料理人の基礎となる「姿勢」と調理現場の「流れ」を身に着けられる。それさえきちんと確立できていれば、きっとどこでもやっていけるんだと思います。私自身、料理はひとりではできないチームワークなんだと学びました。また、志を同じくする同期の仲間に恵まれたことも財産ですね。東京でバリバリ働いて地元に戻ってくる同級生もいますし、シェフ同士で生産者の畑を訪れたり情報交換をしながら刺激し合える、良い関係が生まれていると思います。
東和季の子工房勤務/西洋料理専攻/2004年卒/日本調理技術専門学校卒業後、東京のビストロ店に勤務し、地元の福島にUターン。「東和季の子工房」という名のオーベルジュの宿・農家レストランを経営している。「暑い夏は、朝もいだトウモロコシをすぐに茹でて冷製スープに。味付けは塩だけ。これがとても喜ばれるんです」。料理人としては下味やソースなどいろいろ手を掛けて工夫したい気持ちもありつつ、あまり手を加えずに素材本来の味わいを活かしたメニューも好きとのこと。「得意なこと、好きなことよりも、自分が続けられそうなことは?どんな大人になりたいか?という視点で将来を考えるのも良いと思いますよ。」