まず一つ目は「乳がん」治療を進めていく中で、患者さんの負担となる副作用が生じる症例があります。しびれや痛み、感覚異常、歩行困難などの末梢神経障害という副作用を軽減するために薬剤を調査したり、神経保護作用のある薬剤に注目しています。二つ目は、抗がん剤の投与を続けていると、効かなくなってくる場合があります。抗がん剤をブロックしたりはじき出してしまう因子“Nrf2”について調べ、より正確で速やかに治療方針を決定するための補完情報を提供できるよう取り組んでいます。ほかにもアニマルテラピーも視野に入れるなど、色々な角度からがん患者さんが前向きになれる治療法を検証しています。
リアリティをもって医療現場の様子を伝えていくために、週1回武蔵野赤十字病院薬剤部へ出向しているという下枝先生。豊富な症例経験を学生に伝えることが臨床教育につながり、学生たちは最新のがん薬物治療に常にふれることができます。また「臨床薬剤学教室」では、薬剤師として患者さんとどう関わるべきなのかを投げかけ、議論することも。医療現場では医師や薬剤師がディスカッションする機会も多いため、議論の場を設けて考える力をつけ、センスを磨くことを大切にしているそうです。薬剤師の国家試験に向けての対策も行われます。
医療現場では唯一、科学的根拠に基づいて医師にアドバイスをできるのが薬剤師です。薬剤師になるためには、高校の理系科目が基礎となるので、将来患者さんを救うための勉強が既に始まっていると意識してみましょう。
1989年に長野赤十字病院薬剤部に勤務し、2007年には博士(薬学)学位を取得。2008年、新潟薬科大学薬学部の講師となり、2009年に東京薬科大学薬学部 准教授に。2016年、教授となり現在に至る。日本医療薬学会がん指導薬剤師や日本医療薬学会がん専門薬剤師、日本医療薬学会指導薬剤師などの資格を保有。長野出身のため、学生時代からスキーをたしなむほか、アウトドア派でキャンプや焚き火が大好き。