和菓子の魅力は、シンプルなデザインでありながら四季を忠実に再現できるところです。そして同じものをつくり続ける難しさは、まさに和菓子の奥深さだと現場に出て実感しました。また地域ごとに差があるのも興味深い点で、例えば石川県では東と西の中間あたりに位置していることから両方の文化を引き継いでいたり、絢爛豪華が好きな県民性が色に表れていたりと、その土地ならではの風習も和菓子に反映されています。歴史があり四季の変化を細かく表現することを大切にする和菓子には、シンプルだからこそ無限の表現が可能だと考えています。思いが伝わる菓子、思いを伝えるお手伝いができる菓子を作っていきたいと取り組む毎日。自分が思いを込めて作った菓子で、人と人との心が通い合う喜びを、学生たちにもたくさん経験してほしいですね。
和菓子の実習は、班を一つの工場とみなし行います。作業の流れ、誰が何を担当するか、時間はどのくらいなのかなど、コミュニケーションを取りながらうまく進めていくことが必要です。また菓子の製法など細かく指示するところと、あえて学生に任せるところを分けており、自分で考える力を養えるように意識しながら指導しています。特に創作的な菓子を考える際などは、学生自身がゼロからアイデアを生み出す感覚を経験することができるでしょう。皆が学びの中からさまざまなことを感じ取り、成長していくことができる授業です。
うれしいときも悲しいときも、誰かの人生にそっと寄り添うことができる菓子の世界は本当に素晴らしいものです。多くのことを見聞きし吸収し培われた想像力が、たくさんの人を幸せにする力になると信じています。
専門:和菓子
略歴:東京製菓学校和菓子本科OB。卒業後、千葉県市川市にある菓匠京山で5年間住み込みで修行をする。その後、石川県金沢市の菓匠まつ井に4年半勤める。在学中から学校で教えることに興味があったため、まずは自分自身が現場で経験を積んだ。自分が肌で感じた世界を伝えるべく母校に戻り、未来の和菓子職人の育成に取り組んでいる。