フリーランスで活動するようになって、テキスタイルの新しい試みとしてつくりはじめたのがハンドバッグです。オリジナルのテキスタイルを使ったブランド「LENOMADE(レノメイド)」では、コーヒー、タマネギ、アボカドなどの天然植物を素材として使用し染色します。この天然染めのテキスタイルを生活のなかで使っていただけるようにハンドバッグを手づくりして合同販売イベントに参加するようになりました。一緒にイベント出展してノウハウも教えてくれているのが、タイから留学していた同級生です。彼女は日本でモノづくりしていて、販売活動では私より先輩。彼女がいるからこそ、私もいろいろなチャレンジができます。
ファッションテキスタイル科での3年間は、学ぶというより自分がなにをつくりたいかを考え続けてました。その時間をもらえて、いいと思ったことは誰にも否定されない恵まれた環境でした。テキスタイルを専攻できる美大と文化服装学院の大きな違いは、ここがファッションスクールだということ。学内には常にファッションの雰囲気が漂い、ショップには布の反物がずらりと並んでいます。大学を卒業してからアメリカに語学留学し、帰国して新たに入学したのが文化服装学院でした。留学生が多くて年齢のギャップもまったく感じず、快適に毎日を過ごせました。個性的な人たちに囲まれたことで、目指す方向性も見えてきました。
卒業制作ではほかにないテキスタイルをつくるべきと思い、オリジナルの布で全3体の服を仕立てました。作品は感情をともなう“表情”がテーマになっており、3体で喜び、悲しみ、怒りを表現しました。突起のある作品は“怒り”。心が尖ったときのトゲトゲから着想されたデザインです。ただし布の風合いはとてもソフトで、色も淡いパステルトーンで、近くで見ると満開の花畑のようです。色のベースは自分の手のひらの色。もともと柔らかい色が好きで。例えば横浜の中華街のような強烈な色は苦手なんです。ふだんから身の回りの色、自然界の色にヒントを得ることが多いですね。卒業制作は私のモノづくりのエッセンスが詰まっています。
フリーランス テキスタイルデザイナー/ファッションテキスタイル科 卒/※文化服装学院公式サイト 卒業生取材『LINKS』より一部転載 https://sumirekai.bunka-fc.ac.jp/interview/links/015/