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「フライトドクター」「フライトナース」とは?『コード・ブルー』に出てくる仕事

「フライトドクター」「フライトナース」とは?『コード・ブルー』に出てくる仕事

ドクターヘリをテーマにしたテレビドラマ『コード・ブルー–ドクターヘリ緊急救命–』に続き、映画『劇場版コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』も大ヒット!
 
山下智久さんが演じる藍沢耕作や、新垣結衣さんが演じる白石恵に憧れて、「フライトドクター」という仕事に興味をもった人もいるのでは?
 
そこで、ドラマのモデルとなった日本医科大学千葉北総病院・救命救急センター長で、ドラマの1stシーズンから医療監修を務めている松本尚先生に、『コード・ブルー』に出てくる仕事について教えてもらった。
 


 

救命救急センターの仕事は病院によってさまざま

「フライトドクター」「フライトナース」の仕事は病院によってさまざま
 
まず、フライトドクターやフライトナースが勤務する「救命救急センター」とはどんなところなのか、聞いてみた。

「救命救急センターは、現在、日本全国の病院内に280以上ありますが、みんな同じ仕事をしているわけではありません。
 

例えば、病院が少ない地方では、指を切った、鼻血が止まらない、捻挫した、など軽症の急患も受け入れていますが、病院の多い地域では重症の患者を主に扱う救命救急センターもあります。
 
さらに、最初の診察をした後、治療は専門医に任せているところもあれば、治療まで行うところもあります。
 
患者の受け入れ体制は病院によってかなり違いますね。
 

私が勤務する日本医科大学千葉北総病院では、重症患者にターゲットをしぼっています。
 

もちろん、結果的に軽症だった患者もたくさんいますが、重症かもしれない、命にかかわるかもしれない、という疑いのある患者を受け入れて、救急医が診察から治療まですべて行います。
 

『コード・ブルー』に出てくる病院は当院がモデルなので、藍沢をはじめとする救急医は、急患の患者を診察したら、初療(初期治療)、治療(外科、整形外科、集中治療)、病棟の業務まで担当しているんです。
 

さらに、災害時の対応も大切な業務のひとつなので、こちらも普段から訓練しています」(松本先生)

病院の外へ出向いて治療するためのドクターヘリ

「フライトドクター」「フライトナース」とは?『コード・ブルー』に出てくる仕事
救急車で運ばれてきた急患の患者を受け入れるのが救命救急センターの仕事だが、全国280以上の救命救急センターのうち、約50カ所には救急専用ヘリコプター「ドクターヘリ」が配属されている。
 
2001年に開始されたドクターヘリ事業では、救急専用の医療機器などを装備したヘリコプターに救急医と看護師が同乗して、重症患者のいる現場へ直接行って治療する「病院前救急診療」を行っている。
 
このドクターヘリに乗り込むことができるのが、「フライトドクター」と「フライトナース」なのだ。

「ドクターヘリで出動するのは、フライトドクター2人とフライトナース1人。
 
その日の当番が決まっていて、出動要請があればすぐドクターヘリに乗り込みます。
 
ドクターヘリの専門医がいてもいいと思いますが、普段は、病院内で救急医として急患や入院中の患者の対応を行い、要請があったら出動するという勤務です。
 
多い日だと1日に7~8件の要請があり、当センターでは年間1200件くらい出動していますが、1000件を超えるのは全国でも3カ所程度で、地域差がありますね」(松本先生)

フライトドクターになるには専攻医からスタート

救急医の中でも、特にドクターヘリに乗って病院外で救急診療をすることができるのが「フライトドクター」。
 
では、どうすればなれるのだろうか?

「大学の医学部(6年制)を卒業して医師国家試験に合格すると、臨床研修医として2年間で内科や外科など一通りの研修を行います。
 
その後、フライトドクターになりたい人はドクターヘリの基地病院に就職して、まず救急医を目指します。
 
『コード・ブルー』ではフェロー(候補生)と呼んでいましたが、正式には救急専門医制度の専攻医として3年間の研修を受け、試験に合格すると学会から救急医の認定を受けることができます。
 
当院では、この研修の中にフライトドクターのプログラムを組み込んでいて、救命救急センターがフライトドクターを認定しています。
 
フライトドクターに関しては病院独自で認定証を出していて、公的な資格や免許などはありません。
 
専攻医(フェロー)として研修中の段階からドクターヘリに乗り、とにかく場数を踏んで経験を重ね、決められた課題をこなしていくことで一人前のフライトドクターとして成長することができるのです」(松本先生)

コミュニケーション能力がフライトドクターの必須条件

『コード・ブルー』の中には、いろいろなタイプのフライトドクターが登場していたが、どんな人が向いているのだろうか? 」
 
フライトドクターに必要なことは何なのだろうか?

「要請内容によって出動するフライトドクターが代わることはなく、どんな現場にも行きます。
 
どんな症状なのか、どんな治療が必要なのか、現場に行ってみないとわからないケースも多々。
 
外科でも、整形外科でも、あらゆる治療を臨機応変にできないと患者を救うことはできません。
 

そして、いくら医療知識が豊富で技術が優れていても、コミュニケーション能力がなければいけません。
 
現場には、消防士、警察官など、いろいろな人がいます。
 
ドクターヘリにはパイロットと整備士も乗っています。
 
これらの人たちと上手にコミュニケーションできなければ、自分がやりたい診療はできません。
 

大きな災害や事故があった場合、現場は混沌としていますが、一番重要なのは患者を助けること。
 
その場で医療の視点から全体を見つめることができるのは、医師だけです。
 
例えば、何かに挟まれている患者をレスキュー隊が救出しようとしているとき、隊員は医学的知識がないから患者の容体が判断できず、とにかく1秒でも早く救い出そうと必死に作業をします。
 
しかし、そこで患者を診て、もし命に危険が及んでいたら、『ちょっと待って。
 
先に治療をさせてくれ』と作業を中断させなければいけません。
 
それができず、ただ待っているだけでは、救出したけど心臓が止まっていた、という最悪の結果になることもあるでしょう。
 
その場にいる人たちとコミュニケーションができて、かつ、リーダーシップをとって、必要な診療ができなければ、現場に行く意味がありません」(松本先生)

フライトドクターと同じくらい重要なフライトナースの仕事

フライトドクターと同じくらい重要なフライトナースの仕事
 
フライトドクターと一緒にドクターヘリに乗り込む「フライトナース」。
 
ドクターとナースの関係は普通の病院と同じだが、フライトナースがいないとフライトドクターの仕事ができないくらい、重要な役割を担っているのだ。

「まず、ドクターヘリ機内で、救急隊員から情報をもらって現場の状況を考え、診療の準備をします。
 
現場到着後は、常にフライトドクターがやりたいことを先回りして診療を介助。
 
救急隊員と連携を図ったり、患者を病院へ運んだり、患者の家族への精神的サポートも重要な仕事。
 
場合によっては、患者の状態を確認して、判断して、報告できる、プチ医者的なレベルが要求されます。
 
複数の患者がいるときは、診療の優先順位をつけたり、現場を仕切ることも。
 
とにかく豊富な現場経験が必要なので、当院では、看護師として約4~5年の実務経験を経て、初めてドクターヘリに乗ることができます。
 

フライトドクターと同様に、コミュニケーション能力と現場でのリーダーシップ、冷静な判断力が必須で、さらに患者や家族への気配りができることが大切ですね」(松本先生)

ドクターヘリに出動指示するのはコミュニケーションスペシャリスト

ドクターヘリに出動指示するのはコミュニケーションスペシャリスト
119番通報を受けた指令室、または現場に行って患者を診た救急隊からドクターヘリの出動要請が入ると、病院内に常駐しているドクターヘリ運航会社の「運航管理担当者(コミュニケーションスペシャリスト)」が対応する。
 
どんな仕事をしているのか、朝日航洋株式会社の運航管理担当者・渡邉聖純さんに話を聞いてみた。

「出動要請がきたら、まず発生場所に一番近いランデブーポイント(ドクターヘリが着陸する場所)を探してパイロットに伝えます。
 
とにかく時間との勝負ですが、直接現場に着陸できることは少ないので、学校のグラウンドや公園など、早く安全に降りられる場所を冷静かつ瞬時に判断しなくてはなりません。
 
さらに、災害現場の天候・患者の状況や容体など、消防から得た情報を整理して、フライトドクターやパイロットに引き継ぐ橋渡し役です。
 
当院は北総エリア担当で、千葉県北部と茨城県南部のエリア内を5~15分で到着させます。
 
ただヘリコプターのフライトをサポートするだけでなく、人を助ける仕事にかかわっていられることがうれしいですね」(渡邉さん)

どんなときも冷静に安全運航するドクターヘリのパイロット

どんなときも冷静に安全運航するドクターヘリのパイロット
 
ドクターヘリの「パイロット」になるには、まず事業用操縦士(陸上多発タービン機)の国家資格を取得して、ドクターヘリを運航している会社に就職する。
 
ヘリコプターの免許と合わせて、管制機関との無線通信のために航空特殊無線技士または航空無線通信士の免許も必要。
 
国土交通省が定めるドクターヘリ操縦士の乗務要件は、1000時間の機長時間(うち500時間はヘリコプター)、500時間のドクターヘリ運航と類似した運航環境における飛行時間、50時間の当該型式機(搭乗するドクターヘリと同じ型式)飛行時間が必要。
 

ドクターヘリで使用している機体ごとの社内試験に合格すると、ドクターヘリの機長昇格訓練を経て、パイロットになれる。
 

パイロットの仕事について、朝日航洋株式会社の機長・上田明彦さんに聞いてみた。

「ドクターヘリの操縦は、消防からの出動要請に対して約3~4分で基地病院を離陸し、着陸まで10~15分という短時間勝負。
 
一刻も早く出動しようと焦ると手順を忘れてしまいますが、安全運航が一番の使命ですので、操作手順をしっかり守って、フライトドクターとナースからの運航に関するリクエストを的確に把握し、冷静に最善策を考えます。
 
患者を乗せているときは自分の背後で生死の攻防がくり広げられてドキドキすることもありますが、どんなときも平常心を保ち、安全第一の操縦をしています。
 
人の命を助ける仕事をサポートできることが大きなやりがいですね」(上田さん)

ドクターヘリの運航をサポートする整備士の役割は大きい

ドクターヘリの運航をサポートする整備士の役割は大きい
 
ドクターヘリのパイロットの横には必ず「整備士」が同乗している。
 
整備士は、いつでも出動できるように、フライト前とフライト後、一日の業務の終わりにも、必ず機体をチェックするのが仕事。
 
だがそれだけでなく、パイロットが操縦に専念できるよう消防からの無線通信に対応したり、後ろに乗っているフライトドクターやナースからの要請にパイロットに代わって受け答えをしてパイロットに伝えたりしている。
 
さらに、到着後真っ先に降り、ドクターヘリのドアの開け閉めをして救急車の誘導をすることも。
 
スムーズな運航に必要不可欠なサポーターなのだ。
 

「おもしろい」と思って仕事をするとクオリティーが高くなる

「フライトドクター」「フライトナース」とは?『コード・ブルー』に出てくる仕事
患者をいち早く搬送するのではなく、患者をいち早く診療するためのシステムがドクターヘリ。
 
医師が患者のもとへ出向く「攻めの医療」の魅力は「現場へ行けるおもしろさ」だと言う松本先生。

「病院とは違った環境で、物がなかったり、狭かったり、患者の状態がよくわからなかったり、厳しい条件の中でより良い医療を提供できたときの達成感は大きいですね。
 
『コード・ブルー』1stシーズンの第1話で藍沢が『おもしろかった』と言っているのですが、いろいろな患者を診られるおもしろさは、フライトドクター、そして医師の仕事の醍醐味。
 
おもしろいと言うと人の不幸を楽しんでいるように誤解されがちですが、僕たちがおもしろいと思って仕事をすれば医療のクオリティーが高くなり、結果的に患者さんに良い医療を提供できるのです。
 

例えば買い物をしたとき、店員が不機嫌な顔をしていたら気分良く買い物できませんよね。
 
ニコニコ応対してくれたら、同じ1万円を払っても1万2000円分くらいの価値に感じられるかも。
 
医師もサービス業だから、楽しく仕事ができるかどうかが大事。
 
どんな職業でも同じだと思うんです」(松本先生)

候補生(フェロー)からフライトドクターへ成長していく姿はもちろん、リアルな医療現場も見どころのひとつとなっている『コード・ブルー』。
 
それもそのはず、松本先生が実際に体験したことをもとに医療シーンが再現されているから、ドラマに出てくる話はリアリティーがあるのだ。
 
ドクターヘリにかかわる仕事はいろいろあるが、どれも「いち早く診療できることによる救命」「ドクターが来てくれる安心感」を患者に提供し、それをサポートすることがやりがいとなっている。
 

もう一度、『コード・ブルー』を観てみて、自分はどんな仕事がしたいのか、誰になりたいか考えてみよう。
 

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「フライトドクター」「フライトナース」とは?『コード・ブルー』に出てくる仕事
松本 尚先生
日本医科大学救急医学 教授
日本医科大学千葉北総病院 副院長 救命救急センター長
『コード・ブルー』医療監修
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「フライトドクター」「フライトナース」とは?『コード・ブルー』に出てくる仕事
『劇場版コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』
2018年7月27日(金)全国東宝系にてロードショー
Ⓒ2018「劇場版コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-」製作委員会
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やまだ みちこ フリーライター

やまだ みちこ

ロックンロールを聴きながら走るライター。東京・大阪・名古屋ウィメンズ・横浜とマラソン大会をひた走り、非公式ながらサブ4達成! JKの娘からイマドキの高校生の情報収集をするものの、変人すぎて参考になりません。

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