【医学部、看護・医療系学部、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

医療系や看護系の学部では、推薦入試以外にも、小論文を試験に課す学校が増加傾向にあるという。

特に、私立大学の入試にはほぼ出題。

面接でも小論文の設問と同じ内容の質問があるため、小論の設問がないとしても、小論文対策は必須だ。

スタディサプリで「現代文」と「小論文」を担当する小柴大輔先生に、頻出テーマとおすすめ書籍を聞いた。

教えてくれるのは
小柴大輔先生

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!
Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文の他、小論文や推薦対策講座を担当。

医学部の小論文対策

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※小論文や面接では、医療者に必要な倫理観について問われることが多い

昨今、医学部医学科の入試について文科省が、面接を強化する旨、各学校に通達しているという。

これは、勉強はできるが倫理観が伴わない人物を早い段階で把握するためだ。

医療者になる責任意識が薄く、研究のためなら命や人権はどうなっても構わない。

万が一そういう人物が医者になってしまっては、事件が起きてしまうどころではない。

医療に携わる者として、一番大切なのは「倫理観」だ。

医療者となり得る人物であるかどうかを確認する手段として、面接や小論文があると言っても過言ではない。

小論文・面接対策は、まず、自分がなぜ医学部に進みたいのか、もう一度自分自身に問いかけてみよう。

この問いに、どれだけ自分の言葉で語り伝えることができるのか。

最重要の対策として取り組みたい。

医学部の小論文頻出テーマ

◆「医療者としての資質とは」

前述したように、医療者に必要な資質として重要なのは倫理観であるが、では医療現場における倫理とは何だろうか。

命に向き合うとはどういうことなのか、自分に何ができるのかを改めて考えてみたい。

◆「高齢社会での医療」

高齢化社会が問題とされているが、実際に何が問題となっているのだろう。

例えば、医療費による国家予算の圧迫が問題視されていることについて、医師に何ができるのか考えてみよう。

予防医療やケアなどの可能性を探ってみたい。

◆「遺伝子診断の功罪」

遺伝的病気の発症の可能性や保因者を調べることができる遺伝子診断。

メリットだけではなくデメリットにも視点を移してみよう。

出生前診断では倫理的な選択を迫られる場面もある。医師として何を考えていくべきなのか。

◆「AI、遠隔診療 リモート診療」

新型コロナウイルス感染症の流行で、一気に可能性を広げた遠隔診療。

科学と技術の進歩によるメリットもあるが、直接対面ではない、あるいは人が介さない医療には、どんな危険性が潜んでいるのだろう。

過疎地域の医療についても考察したい。

◆「感染症」「医療行政」「医学薬学研究」

こちらも感染拡大に関連したテーマ。

今回のコロナ禍において、医療関係でどんな問題があったのか。

感じたことを忘れないうちに書き出しておこう。

今後も、感染症は定期的な流行が考えられる。

将来の医療者として何ができるのかを語れるようにしておきたい。

<ADVICE>

小論文や面接では、患者や一般市民を見下すような表現や内容に気をつけましょう。

例えば、自分以外を「一般人」と呼んでしまうのはNG。

患者の個別性を無視して短絡的にまとめてしまう「およそ患者というものは~」というような書き方も、印象が悪くなります。

医者は、人を見下してもよい特別な存在ではないということを、肝に銘じておきましょう。

また、小論文で倫理観を確認するからといって、「きれいごとを言えばよい」ということではありません。

本気で医療に貢献したいと思っているのか、自問自答してみてください。

建前のきれいごとでしか書けない、本音で倫理が語れないのなら、適性がないと思うこと。

命に向き合うという自覚が何よりも重要です。
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医学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※医学部の小論文、面接対策に役立つ本を紹介

『感染症疫学のためのデータ分析入門』
西浦博・著 金芳堂(2021年)

西浦氏は、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻の先生。
医療統計学は今とても注目されている分野だ。
『京大驚きのウィルス学講義』
宮沢孝幸・著 PHP新書(2021年)

宮沢氏は、京都大学ウィルス学再生医療研究所准教授。
「多次元」のウイルス学を提唱している著者が京都大学で行っている、1回生(全学部)向けや医学部2回生向けの授業などの内容を収録。
高校生でも十分理解できるよう、わかりやすい解説となっている。
このほかのおすすめ本は、下記リンクを参照。

【現文講師・小柴大輔直伝】志望理由書&小論文対策!医学系分野編

看護学部・医療系学部の小論文対策

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※どんな医療者、介護者になりたいかよく考えておくことが大切

看護・医療系の小論文は志望理由書の内容を改めて問うものが多い。

これは、医療系ならではの傾向だ。

やはり、医学部と同じように、資質を問いたい大学が多いといえるだろう。

さらに、看護、理学療法士、検査技師、介護士など、なぜ医師ではなくその専門に進もうと考えたのか、自分の考えを答えられるようにしておこう。

面接を課す大学も多いので、面接対策としても有効だ。

どんな医療者、介護者になりたいかをイメージすることは、モチベーションにもつながるはずだ。

一方、看護や介護における給与は、業務内容や専門性に対して低い現実があることも知っておきたい。

この問題に潜む、ジェンダーによる差別や「やりがい搾取」の可能性にも視点を向けてみよう。

看護学部・医療系学部の小論文頻出テーマ

◆「患者に寄りそうとはどういうことか」

実は難しいテーマ。

患者に寄り添いたいという志望理由はよく語られるが、では寄り添うとはどういうことなのか。

常套句で済まさないように、自分自身の考えを文章にできるようにしておこう。

◆「高齢社会での医療や介護」

高齢化社会における医療費による国家予算圧迫の問題を問われることがある。

予防医学やケアについて、医療従事者としての役割は何か。

地域や他医療従事者との連携や協働の議論も始まっている。

◆「遠隔診療 リモート診療」

感染拡大で注目された遠隔やリモートによる診療。

便利であるが、人とのコミュニケーション不足や距離ができることで生まれる弊害にはどんなものが考えられるだろうか。

利用する人の立場に視点を向けてみよう。

痛みの共感は、医療従事者や介護従事者にとって大切な感覚だ。

<ADVICE>

やはり、感染症に関するテーマの出題が考えられるため、この2年で考えたことをまとめておき、関連する書籍を読みまとめる力をつけておくと良いでしょう。

また、高齢化社会における医療やケアに関するテーマも要チェックです。

平均寿命の延伸による社会への影響や浮上する課題にはどんなものがあるのか。

その課題に対して、自分は何ができるのか、日ごろから問題意識をもってニュースや新聞を読んでおきましょう。
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看護学部・医療系学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

『新型コロナウィルス ナースたちの現場レポート』
日本看護協会出版会(2021年)

医療機関で働く看護師たち162人もの証言の収録。
2020年1月の国内発感染から、第3波が来る12月までの約1年間にわたる、医療・ケア現場の様子と日々の暮らしを綴っている。
使命感、恐怖心、差別・偏見に対する怒りや悲しみ、大切な人への思いなど、看護職であり生活者でもある1人の「人」としての姿を垣間見ることができる。
このほかのおすすめ本については、下記リンクも参考に!

【現文講師・小柴大輔直伝】志望理由書&小論文対策!医学系分野編

スポーツ学部の小論文対策

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※なぜ自分はスポーツに関わりたいのかよく考えてみよう

2020年以降、新型コロナの感染拡大の中で、スポーツの在り方やスポーツ大会の考え方、価値観などが改めて問われることが増えた。

なぜ自分はスポーツにかかわりたいと思うのか、スポーツの社会的使命はあるのかなどのほかに、そのようなコロナによって浮かび上がった世論についても考えておきたい。

スポーツ学部の小論文頻出テーマをチェック!

◆「アスリートの使命」

「感動を与えたい」「日本を元気にしたい」などの言葉はよく聞かれるが、果たしてアスリートの使命とは何だろうか。

常套句ではなく、自分の言葉で考えてみよう。

◆「ドーピングの何が問題なのか」

ドーピングによる結果が本来の能力ではないとすれば、パラスポーツにおける義足や車いすはどこまで改造が許されるのか。

性転換をした場合はどう考えるのか。

体に及ぼす問題からスポーツにおける倫理まで、考察を広げたい。

◆「スポーツと社会とのかかわり」「政治や政策とスポーツ」

「スポーツの力」という言葉も、よく聞かれるが、スポーツはどのように社会とかかわっていくのが理想なのか。

政治や権力者による「スポーツウォッシング」についても考えたい。

◆「根性や指導者の勘と経験ではなく科学としてのスポーツ」

指導者が“昭和”の頃の指導要領のままでいることで引き起こす、怪我や熱中症などの事故が後を絶たない。

科学的エビデンスを主体としたスポーツの在り方とは何か。

◆「チームや組織や施設のマネジメント」

強いチームはどうやって作るのか。

目標達成するためのマネジメント、リーダーや監督に求められる資質について考えてみよう。

<ADVICE>

スポーツと社会との関りについて考察しておこう。

ネット検索してネット上の意見を探すのではなく、自分の言葉でスポーツのすばらしさや理念を考え文章にする練習を。

例えば、スポーツは人を感動させる力があると言われているが、それはどういうことなのか、自分の言葉で言い換えて説明する力が必要です。
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スポーツ学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※スポーツ系学部の小論文、面接対策に役立つ本を紹介

『スポーツ解体新書』
玉木正之 著 NHK出版(2003年)

氏は東大教養学部中退。フリーのスポーツライターとして『ナンバー』に連載。
テレビにもコメンテータとしてしばしば登場。
またスポーツジャーナリスト養成塾も主催。
『五体不満足』を書き、スポーツジャーナリストとして活躍中の乙武洋匡氏もここの卒業生。
本書は、日本のスポーツを論じるための基本テキストを目指している。
『勝つスポーツサイエンス』
田中誠一 著 丸善ライブラリー(1992年)

氏は1935年生、東京教育大(筑波大)卒、日大三島高校陸上部監督、東海大体育学部教授。
真の科学的トレーニングは、フィジカル・トレーニングとメンタル・トレーニングを統合し、西洋の科学と東洋の科学を巧みに使い分けたところに成立する、という理念を掲げる。
『コーチ論』
織田淳太郎 著 光文社新書(2003年)

氏は1957年生、スポーツライターとして活躍。
目次「“頑張らない”ことが潜在能力を引き出す」「間違いだらけのコーチング」「日本人が捨てた究極の“走り方”」「メンタルトレーニングの真贋」「誰も教えてくれないバッティング常識の嘘」「やる気を引き出すコーチング」
『スポーツイベントの経済学─メガイベントとホームチームが都市を変える─』
原田宗彦 著 平凡社新書(2002年)

氏は1954年生、京都教育大体育学科卒、筑波大大学院体育研究科修了、ペンシルバニア州立大でPh.D、大体大教授、Jリーグ経営諮問委員会委員。
本書は早大スポーツ科学部のテキストのひとつで、スポーツマネジメントを扱う数少ない良書。
『スポーツを仕事にする!』
生島淳 著 ちくまプリマー新書(2010年)

氏は1967年生、早大社会科学部卒、博報堂勤務、スポーツライターとして独立、TVでもよく見かける。
スポーツを「ささえる」のプロが多く活躍する時代の、急増する大学のスポーツ関連学科や急成長する職業の「今」をレポートする。
『スポーツ教養入門』
高峰修ほか 著 岩波ジュニア新書(2010年)

氏は1968年生、横国大大学院教育学研究科修了、明大政経学部准教授。
高いパフォーマンスを生み出すメンタルマネジメントの方法やケガとの向き合い方、スポーツ選手の進路、体罰やセクハラ、ドーピング問題、望ましい指導者像、スポーツマンシップの本当の意味など、スポーツ選手が知っておくべき基礎知識を解説している。
『夢を跳ぶ─パラリンピック・アスリートの挑戦─』
佐藤真海 著 岩波ジュニア新書(2008年)

氏は1982年生、早大商学部卒、応援部チアリーディング在籍中に骨肉腫発症。
19歳のときに骨肉腫を発症し右足膝下を失った著者が、陸上競技・走り幅跳び日本代表に選ばれるまでの道のりを語る。
『スポーツ科学の教科書─強くなる・うまくなる近道─』
谷本道哉・石井直方 著 岩波ジュニア新書(2011年)

谷本氏は1972年生、阪大工学部卒、東大大学院総合文化研究科修了。
専門は運動生理学、バイオメカニクス。
石井氏は、1955年生、東大理学部、同大学院理学研究科修了。専門は筋生理学、身体運動科学。
本書は、筆者の略歴からも明らかなように、医学・生理学・生化学の視点から高校生向けに書かれた本。
文字通りスポーツのサイエンスで、従来の通俗説(スポーツ選手はコーラを飲んではいけない)を覆すメッセージ多数。
『スポーツを仕事にするという選択─スポーツ業界に転職・就職する方法』
池上達也 著 秀和システム(2018年)

氏は1978年生、青学経済学部卒、人材派遣会社を経て、スポーツ業界への就職を支援する「スポーツ・ゲート」設立。
スポーツビジネスの広範な種類とそこへのアプローチ法を紹介している。
「スポーツが好き」というだけでは十分ではないという指摘が光る。
『ライフスキル・フィットネス─自立のためのスポーツ教育』
吉田良治 著 岩波ジュニア新書(2013年)

氏は1963年生、京都産業大アメフト部コーチをはじめアメリカの大学のスポーツ教育を学ぶ。
リーダーシップや協調性を育み、地域活動や卒業後の進路を視野に入れた教育を実践するアメリカのスポーツ教育のシステムを紹介。
<ADVICE>

医療系、スポーツ系に限らず、どの学部にも言えることですが、小論文のテーマは考えさせられる多くの良い課題がありますが、中には「高校生には難しすぎるのでは」というものもあります。

小論文は、60点できていれば合格、80点なら1位かもしれないという世界。

「人生の最高傑作」と力まず、「仮説の提示」と肩の力を抜いたほうがうまくいきますよ。

社会とのかかわり、社会がもつ問題に意識を向けて

【医学、看護・医療、スポーツ学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※目指す道が社会とどのように関わるのか思いを巡らせてみよう

感染症の蔓延、医療崩壊、パンデミックのなかのスポーツの在り方…

新型コロナの感染拡大に伴い、これまでとは違う側面からも、医療とスポーツへの注目が高まったここ数年。

今後は、関連するテーマについて問う設問が考えられるだろう。

自分が進みたいと考えている道が、どのように社会とかかわっていくべきなのかの視点をもって、忘れないうちに書き留めておくことが大切だ。

取材・文/櫻庭由紀子 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌)


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