【現文講師・小柴大輔直伝】志望理由書&小論文対策!外国語編

小論文や、総合型選抜・学校推薦型選抜の対策には読書がいいというけれど、実際どんな本を読んだらいいんだろう?

そんな人のために、スタディサプリで「現代文」と「小論文」を担当する小柴大輔先生が読書案内をしてくれるコーナーがスタート!

今回は、外国語分野の本を紹介してもらったよ。

外国語(言語学・国際関係論含む)に関心をもつ人もぜひ参考にしてね。




 
小柴大輔先生 プロフィール

Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)や司法試験受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。

感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。

スタディサプリでは、現代文のほか、小論文や総合型選抜・学校推薦型選抜対策講座を担当。

『英語の語源』石井米雄(いしい よねお)著/角川ソフィア文庫/2018年

石井さんは1929年東京生まれ。

東京外国語大学在学中に外務省の採用試験に合格。

大学を中退後、外務省入省。在タイ大使館勤務などをしています。

ユネスコのトップまで務めた松浦晃一郎(まつうら・こういちろう)さんも、東大法学部在学中に外務国家試験に通り、中退して外務省に入っています。

松浦さんの本としては『ユネスコ事務局長奮闘記』(講談社2004年)や『世界遺産─ユネスコ事務局長は訴える─』(講談社2008年)があります。

二人とも〝超優秀〟なわけですが、世界の外務省職員・外交官の傾向は、大学院修士課程あるいは博士課程を修了し、専門の学位をもっていることになりつつあります。

さて、石井さんは、学者に転身し、京都大学東南アジア研究センター教授、上智大教授、神田外語大学長などを歴任しています。

本書はすっかり日本でもなじみになった英語113単語とその関連語のラテン語やギリシャ語の語源をわかりやすく紹介した本です。

言葉の系譜は実に興味深い。

私はつられて5万語収録の研究社の『英語語源辞典』を購入しました。

ちょっと例を紹介します。

トレーニングと列車のトレインの語源は同じでラテン語のtrahereで「引っ張る」という意味です。

スポーツのトレーニングも学習のトレーニングも、良き指導者と気高い理念が引っ張りますよね。

教育educationの語源はラテン語のeducareで引き出すという意味です。

上から目線で教えてあげる、教えてやるのではなく、生徒・学生の何かを引き出すものが教育なのですね。

スタディの語源はラテン語のstudiumで、熱心な努力・研究・専心・愛着という意味があります。

『パスタでたどるイタリア史』池上俊一(いけがみ しゅんいち)著/岩波ジュニア新書/2011年

次は外国語を十分に理解するためには、その国の歴史にも通じている必要があるでしょ、というわけで、『パスタでたどるイタリア史』(2011年)『お菓子でたどるフランス史』(2013年)『森と山と川でたどるドイツ史』(2015年)『王様でたどるイギリス史』(2017年)『情熱でたどるスペイン史』(2019年)を紹介します。

すべて岩波ジュニア新書(中高生向け)で池上俊一(いけがみ・しゅんいち)さんが書いています。

いずれも魅力的なタイトルで、食欲も刺激されます。

池上さんは1976年生まれ。

西洋中世史を専門とする東京大学総合文化研究科の教授です。

ちなみに各国語の特徴をとらえた表現に「フランス語は恋人と語り合うことば、英語は演説で聴衆に語ることば、ドイツ語は馬方のことば(馬に命令することば)、スペイン語は神と語ることば」というものがあります。

ちょっとドイツ語だけバカにされている感じですが。

ところでスイス・メイドの時計は有名ですが、スイス語というものがないのは知っていますか。

ベルギー・ワッフルやベルギー・チョコレート(ゴディバなど、コシバではない)はありますがベルギー語というものがないのを知っていますか。カナダ語もありません。

スイスの公用語は、ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンス語(ラテン語由来のことば)の四つです。

ベルギーにはオランダ語文化圏とフランス語文化圏があります。カナダの公用語は英語とフランス語です。

とくにケベック州とオンタリオ州はフランス語圏で独立運動さえあるほどです。

習得した外国語のスキルをいかせる仕事はたくさんありますが、最も直接的に結びつく仕事が翻訳や通訳でしょう。

次は、それらの仕事にかかわる本を紹介します。

『翻訳家の仕事』岩波書店編集部・岩波新書/2006年

なんと37人もの有名翻訳家たちのエッセイを集めたものです。

翻訳の醍醐味・魅力・楽しさ・難しさをあますところなく網羅している感じです。

『全身翻訳家』鴻巣友季子(こうのす ゆきこ)著/ちくま文庫/2011年

鴻巣さんは1963年生まれ。成城大卒、お茶の水女子大学大学院修了。

著名な翻訳家・エッセイストです。翻訳エピソードから日常のなにげないエピソードまで、翻訳家の視点を知る一冊です。

タイトルにすごみがあります。

『翻訳夜話』村上春樹(むらかみ はるき)、柴田元幸(しばた・もとゆき)著/文春新書/2000年

ご存じ、今ノーベル文学賞に一番近い男、村上春樹さんが大学生・翻訳学校の生徒の前で翻訳の格別の楽しさを語っています。

特に自分を表現しようとりきむと行き詰ってしまう。

そこで、カキフライが好きならカキフライを表現する工夫でちゃんと自分を表現できる、そのくらいの距離感が大事、という「カキフライ理論」を語っています。

おもしろい。

あらためて村上さんは、1949年生まれ。早稲田大学文学部卒。柴田元幸さんは、1954年生まれ。

東京大学卒、東京大学文学部教授でありつつ、多くの訳業で知られる人です。

『翻訳教育』野崎歓(のざき かん)著/河出書房新社/2014年

野崎さんは、1959年生まれ。東京大学仏文科卒、同大学院修了、現在、東大大学院人文社会科学系研究科教授。

「オリジナルならぬもの」として翻訳はおとしめられたり、バカにされたりすることがあります。

しかし、本書では翻訳がいかに知的歓びにみちて、なお日本語を豊かにするものであるかが語られます。

野崎さんは誕生したお子様の成長を描いた『赤ちゃん教育』(青土社)という書物で講談社エッセイ賞を受賞しています。

表現力のある人なら、子どもの日常をこんなふうに語れるのかと、こちらもバツグンに楽しい本です。

スタディサプリの【ベーシックレベル現代文】の教材に採用しています。

『通訳者の仕事』近藤正臣(こんどう まさおみ)著/岩波ジュニア新書/2009年

近藤さんは1942年生まれ。国際基督教大学(ICU)社会科学科卒、同大学院修了。

これまで大東文化大教授、日本翻訳通訳学会顧問などを務めた方です。

通訳者としての自らの実体験を交えつつ、翻訳の実態と理論、どのように頭を使っているのか、わかりやすく解説しています。

この分野に関心のある高校生向けに書かれた本。 

『通訳になりたい!─ゼロからめざせる10の道』松下佳世(まつした かよ)著/岩波ジュニア新書/2016年

松下さんは、上智大学文学部新聞学科卒、コロンビア大学と立教大学の大学院を修了しています。

朝日新聞社の記者、ニューヨークタイムズ特派員などを務め、現在はプロの通訳者の育成にたずさわっています。

本書では、エンターテインメント通訳・スポーツ通訳・放送通訳・会議通訳・ビジネス通訳・医療通訳・司法通訳などで活躍する10名の方たちの紹介をしています。

次に外国語学を支えるものとして、言語そのものの研究分野、言語学の良書を紹介します。

現代日本を代表する言語学者の一人が鈴木孝夫(すずき・たかお)さんです。

NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも登場しました。どうして日本語では「お兄ちゃん・お姉ちゃん」という表現や呼び方はあっても「弟ちゃん・妹ちゃん」という表現や呼び方はしないのかという質問への回答をしています。

鈴木さんは1926年生まれ。慶應義塾大学の医学部と文学部を卒業。慶大文学部教授。

具体的な本としては

・『教養としての言語学』/岩波新書/1996年
・『日本語と外国語』/岩波新書/1990年
・『なぜ日本人は英語ができないか』/岩波新書/1999年

文明開化以来、今も変わらず欧米の文明や文化や歴史の理解のために英語を使おうとするからダメなんだ。

日本について海外に発信するための英語にするべきだという趣旨です。

本書は、慶大文学部の小論文入試の課題文として登場もしています。

日本代表として、もう一人挙げるなら田中克彦(たなか・かつひこ)さんです。

田中さんは東京外国語大モンゴル学科卒、一橋大学大院社会学研究科修了。一橋大教授を務めた方です。

著書としては『ことばのエコロジー』ちくま学芸文庫1999年 約30本におよぶエッセイと論文集・読みやすく、もりだくさんの内容です。

・『言語学とは何か』/岩波新書/1993年 ※この本で模試を作ったことがあります。
・『名前と人間』/岩波新書/1996年
・『エスペラント─異端の言語─』/岩波新書/2007年
※ポーランドの青年ザメンホフによって作られた人工の「世界共通語」エスペラント語。

この「希望」を意味するエスペラントは誕生以来130年を迎えるが、なにゆえ世界共通語たりえずにいるのか。

『差別語からはいる言語学入門』ちくま学芸文庫2012年 生きた人間が作る生きた言語に注目する社会言語学の面目躍如。

こうした切り口から言語や人間に対する考察が可能であるとは驚きです。

外国に目を転じれば、言語学をそもそも創始したといわれるのが、スイス生まれのフェルディナンド・ソシュール(1857~1913)です。
彼の学問業績をわかりやすく解説しているのが、こちらです。

​・『言葉と無意識』丸山圭三郎(まるやま・けいざぶろう)
・講談社現代新書1987年 ※センター試験の現代文でも出題された本

現代の世界で最も著名な言語学者、生ける伝説と言ってもよいノーム・チョムスキーを紹介した本を挙げます。 

『チョムスキーと言語脳科学』酒井邦嘉(さかい くによし)著/インターナショナル新書/2019年

酒井さんは、言語学の世界を変えた革命児であるノーム・チョムスキーの授業をMITで受講して感銘を受けたと語っています。

本書は、チョムスキーの学説を紹介しつつ、自然科学・サイエンスとしての言語学がどういうものかを解説しています。

酒井さん自身、最先端の脳科学者として、脳の「文法中枢」の実在を検証する実験など極めて興味深い試みをしています。

最後に国際支援・国際協力関連した本を紹介します。

『ODA(政府開発援助) 日本に何ができるか』渡辺利夫(わたなべ としお)・三浦有史(みうら ゆうし)著/中公新書/2003年

渡辺さんは1939年生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了、拓殖大国際開発学部教授。三浦さんは1964年生まれ。

早稲田大学社会科学部卒、JETRO(日本貿易振興会)を経て、日本総合研究所環太平洋研究センター主任研究員。

先進国政府による発展途上国支援である、ODAの現状と課題を解説した本です。

日本のODAの課題については、慶大・総合政策学部の小論文の問題にもなっています。

『日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか』草野厚(くさの・あつし)・朝日新書2007年

草野さんは1947年生まれ。

上智大大学院外国語学研究科および東大大学院社会学研究科修了。慶大教授。ODAの仕組み、現状について詳しくわかる一冊です。 

『国際協力ってなんだろう─現場に生きる開発経済学─』高橋和志・山形辰史編 著/岩波ジュニア新書/2010年

高橋さんは1973年生まれ。政策研究大学院大学修了、青年海外協力隊参加、日本貿易振興機構研究員。

山形さんは1963年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科修了、日本貿易振興機構研究員。

本書は、開発途上国への先進国支援、協力の現状と課題をコンパクトにまとめたもの。

扱われてるテーマは以下のとおりで、1テーマ5、6ページの読みきり。

「貧困・ジェンダー・障害・保健・感染症・教育・紛争・汚職・法制度改革支援・環境・排出権取引・資源循環・マイクロファイナンス・技術・知的財産権・情報技術革命・農業技術革新・貿易自由化・国際価値連鎖・産業蓄積・国際労働移動」

気になる本はありましたか?

まだ、行きたい進路が決まっていない人も読んでみると意外と発見が多くて興味の幅が広がるかも!
 

※2020年5月時点の取材内容になります。

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