「小論文とは?」作文とは何が違うの?構成や評価基準を詳しく解説!

小論文とは与えられたテーマに対して、自分の意見とその理由を論述するもの。

大学などの入試科目の中でも小論文が苦手という人は多いのではないだろうか。

「問題を解く」タイプの他の科目とはそもそも性質が違うので、どう対策すればいいのかよくわからないという人もいるはずだ。

そんな小論文への効果的な対策について、スタディサプリの小論文講師、小柴大輔先生に教えてもらおう。

 
教えてくれるのは
小柴大輔先生

小柴大輔先生
Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文の他、小論文やAO・推薦対策講座を担当。

小論文が苦手なのは、小論文を知らないから!?

小論文が苦手な人が多いのはなぜだろう?

小柴先生によれば、その理由は、「小論文とは何か」を実はよく理解していない人が多いから。

そもそも、小論文とは与えられたテーマに対して、自分の意見とその理由を論述するものであることを理解しておこう。

受験生が誤解しがちなポイントを中心に、小論文という試験科目の基本をしっかりとおさえよう。

まずは、小論文の出題形式について解説する。

代表的なのは、長めの課題文付きのタイプ、シンプルなテーマだけが提示されるタイプ、グラフなどの資料を読み解くタイプなど。

時間と文字量は、60分600字、80分800字などのパターンが一般的だ。
「だいたい100文字あたり10分程度と考えてOKです。

少ないと400字、多いと1000~1200字という場合もありますが、いずれにしても時間との勝負ですね」(小柴先生)

基本中の基本。小論文は作文・感想文とは違う!

基本中の基本。小論文は作文・感想文とは違う!

小論文と作文を比較すると違いがわかりやすくなる

小論文対策に取り組むに当たって、まず気をつけておきたいのが次の点。
「基本中の基本は、作文・感想文と小論文の違いを理解しておくことです。
 
よく言われることではあるのですが、小論文なのに作文・感想文を書いてしまう受験生は多いんです」

どこがどう違うのか、ポイントをざっとまとめてみた。

●小論文と作文の違い

小論文 項目 作文
自分の意見や主張。 伝える
内容
自分の体験やそれを通して感じたこと。
根拠や理由を示し、論理的、客観的に伝えることが求められる。 求められる要素 一般論ではなく、自分の気持ち、感想を伝えることが求められる。
基本的には使用しない
(多少の比喩表現などであればOK)。
文学的な
表現技法
効果的であれば使用してOK。
序論・本論・結論で構成する。 文章の
構成
読みやすさが第一。細かな制限はない。
「だ・である」が基本。 文体 「だ・である」でも「です・ます」でもOK。どちらかに統一すること。

 作文・感想文なら自分の思ったことを思ったように書いてOK。
 
これに対して、小論文は、設問に対して、根拠を示して自分の意見を論じ、論理的に相手を説得することが求められる文章。
 
独りよがりな思いだけを書いても誰も説得することはできず、それでは小論文として成立しないのだ。
 
というわけで、小論文には「意見」とその「理由・根拠」が明解に示されていないといけない。
 
かつ相手を説得するためのわかりやすい「構成」も重要となる。
「まず、何を言いたいのか、意見や主張が明確であることは必須です。
 
ただし、賛成か反対かなど意見の内容そのものが評価されるわけではありません。
 
採点者は自分と同じ意見だから得点を与えるわけではなく、どのような意見であれ、その意見に説得力があるかどうかどうかを見ています。
 
いくら意見としては正しそうに見えても、根拠が薄弱であれば評価はされません。
 
意見・主張に説得力を高めるには具体的な事実やデータ、考えられる反論などを盛り込み、文章に客観性をもたせているかどうかは重要な評価ポイントですね。
 
また、文章全体として意見・主張を効果的に伝えるためには構成が大きなポイントになります。
 
例えば、序論が明確でない文章は、全体のテーマが伝わりづらく、マイナス評価になりますね」
では、この3つの要素について小柴先生にさらに詳しく説明してもらおう。
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小論文で求められる「意見」は持論や思想とは違う

小論文で求められる「意見」は持論や思想とは違う

小論文での意見とはどのようなものだろうか

 まずは「意見」について。
「意見というと、自分の中にある『揺るぎない持論』を披露しないといけないと思い込んでいる受験生もいますが、そんなことはありません。
 
そもそも、課題文に対して賛成・反対の両方の立場から論じさせる設問だってありますから。
 
自分の考えとは違う意見を書くことだってあるのです」
これは意外に感じる人も多いかもしれない。

要するに、問われているのは、その人の本質的な考え方や思想ではなく、初めて見るテーマについても臨機応変に論理展開できる柔軟な思考力というわけだ。

ちなみに、意見と感想の違いがよくわからないという人も多いかもしれない。

わかりやすく言えば、自分の中の「好き/嫌い」で終わってしまうのが感想、一方、自分の感情とは別に、論理的な根拠とともに主張されるのが意見。

例えば、「とてもおいしいから納豆が大好きだ。だから毎日食べたい」は感想(あるいは自分の感情・感覚だけに基づいた考え)。

これに対して、「納豆には必須アミノ酸がバランス良く含まれており、人々の健康増進に貢献することが科学的にも証明されている。

だから、積極的に摂取すべき食物の一つである」は意見。

なお、後者の「意見」は、実は納豆が嫌いな人が書いている場合だってあるし、それでもまったく問題ないというわけ。

意見と感想の違い
また、一口に「意見」といってもいくつか種類がある。
 
分類すると次の通り。
①問題発見、問題の指摘

②問題の分析

③問題解決、対策案の提示

④希望や価値、可能性、重要性の指摘
 例えば、少子高齢化や地球温暖化などの社会問題について意見を述べる場合、受験生は、つい対策まで書かなければいけないと考えがちだ。
 
しかし、このような複雑な問題に対して、限られた時間、文字量で説得力があるレベルの対策を提案するのは、受験生にとっては至難の業。
 
そのような場合は、無理をせず、問題の指摘や分析に止めても十分意見として成立する。
 
①~④のうちのどれかに該当していれば大丈夫(もちろん複数を組み合わせてもOK)。 

反論を乗り越えることで説得力が大幅にアップ

 次に、「理由・根拠」について。
 
根拠として使えるのが統計データ。
 
数字で裏付けることにより、意見の説得力はグンと高まる。
 
ただし、課題文や図表から引用する場合を除けば、数字を覚えておく必要があるので、受験生にとってややハードルは高め。
 
あくまでできる範囲で盛り込めばOKだ。

反論を乗り越えることで説得力が大幅にアップ

より意識してほしいのが、文中で自分の意見に対する反論を示して、それを乗り越えること。
「これは小論文を書くうえで非常に重要なポイントなんです。
 
どんな意見にも反対意見はあります。
 
文中で反対意見を明示し、比較上自分側の意見の方がより重要である、あるいは
反論側にはこんな大きな問題があるなどを指摘することで、説得力が大きくアップします。
 
もう一人の自分とディベートするイメージですね」

小論文は「序論」がカギ。「結論」は軽視してもOK

小論文は「序論」がカギ。「結論」は軽視してもOK
そして、「序論→本論→結論」と文章が論理的に「構成」されていることも読み手を説得するためには欠かせない要素だ。
「中でも重要なのが序論です。
 
序論では、自分の立場・関心・目の付け所を明らかにするのがポイント。
 
2~3行の序論形成がしっかりできていると、小論文の方向性が決まりますから、書く側も書き進めやすいし、読む側にとってもわかりやすい文章になります」
なお、意見は「結論」で書くものと思っている人も多いはずだが、「序論」で早々に意見を書いてしまってもまったく問題ない。
 
本論はそれを裏付ける理由や根拠を中心に展開する。
 
小柴先生によれば、意外にも「結論」はそこまで重視しなくてもいいのだとか。
「序論で書いた意見の繰り返しになる場合もありますし、時間切れで結論まで書けないケースもありますからね。
 
結論は省いて、序論→本論という構成にしてしまっても、実は問題ないんです」
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高得点は難しい科目。60~65点で合格ライン

さて、ここまでで、小論文の基本的なポイントはおわかりいただけただろうか。
 
では、最後に、気になる採点のポイントについても触れておこう。
「小論文は100点満点で60~65点を取れば十分合格レベル。
 
高得点が難しい科目で、80点取る受験生はごく稀です。
 
だから、着実に点数を重ねることが大切なんです」
評価は、通常、「理解力」「構成力」「発想力」「表現力」といった項目別にされる。
 
例えば、序論がしっかり書けていれば、それだけで「構成力」の点数が稼げる。
 
得点が計算できるところでソツなく加点を得ることが重要だ。
 
なお、どんなに立派な意見でも、設問条件を満たしていないと大幅減点は免れないので要注意。
 
例えば、「Aという問題について、賛成の立場から論じなさい」という設問条件に対して、「いや、自分は反対なので、その立場から論じたい」というのはNG。
「繰り返しになりますが、問われているのは、自分の持論や思想ではなく、あくまで設問条件に応える柔軟な思考力なのです」
また、誤字・脱字や表現の誤用などは一つ一つが減点対象になる。
 
例えば、本来は否定的な表現で使う「美辞麗句」という言葉を肯定的な意味で使う、あるいは、「汚名挽回」など間違った表現を使うといったミスで減点を重ねるのは避けたいところ。
 
自信がなければ無理して難しい表現を使わないほうが無難だ。
 
最後に、小論文の主な評価基準をまとめておこう。
 
一通りチェックして小論文対策の参考にしてほしい。

●小論文の主な評価基準 

表記・表現に関する評価基準

文字量

・規定の文字量を満たしているか。

規定の8割以上を満たしていれば問題なし。
8割より多少少ない程度なら問題なし。

大幅に少ない(5割程度など)場合は大幅減点の可能性あり。

文体

・「だ・である」に統一されているか。

「です・ます」が混在していると小幅減点。

表現

・「話し言葉」「略字」「漢字間違い」「誤字・脱字」「ら抜き言葉」などがないか。

それぞれ小幅減点の対象となる。

文字の
丁寧さ

・読みやすいきれいな文字で書かれているか。

判読が難しいほど極端に汚い字などは大幅減点の可能性あり。

主語

述語

・文章の主語・述語が明確か。

主語・述語が不明確な文が多いと、トータルな表現力の評価で大幅減点の可能性あり。

文の長さ

・一文が長すぎないか。

読みにくさや主語・述語関係の不明確さにつながる場合、大幅減点の可能性あり。

原稿用紙の
使い方

・段落の冒頭で一マス空けるなど、基本ルールが守られているか。

小幅減点の可能性あり。

指定外の記述

・指定されていないのに本文スペースにタイトルや名前を記入していないか。

小幅減点の可能性あり。

全体に関する評価基準

答案の
趣旨

・設問の趣旨にきちんと応えているか。

例えば、「課題文に対して反論しなさい」という出題に対して、答案が反論になっていない場合などは大幅減点。

意見

・全体を通して一貫した自分の意見・主張を展開できているか。

何が言いたいのかわからない場合、一般論なのか自分の意見なのかが不明瞭な場合、論文としての妥当性を欠く暴論などは大幅減点。

構成

・序論・本論・結論が明確に段落分けされているか。

各段落の役割が不明瞭な場合、序論が明確でない場合などは大幅減点。

論理性

客観性

・意見・主張に対する根拠や理由が示されているか。

意見・主張だけで裏付けとなる客観的事実や統計データ、または考えられる反論などが盛り込まれていない場合は大幅減点。

基礎教養

・受験する学部の学問に関する基礎教養があるか。

その学部を志望するなら当然知っているべき基礎知識、あるいは社会常識と言えるレベルの知識がないことが読み取れてしまうと減点対象。

  

ポイントを押さえて無駄な減点を防ごう!

「小論文とは?」作文とは何が違うの?構成や評価基準を詳しく解説!
小論文のポイントや採点時の主な評価基準はここまで解説したとおり。
 
今まで
「結論が序論の繰り返しになってしまいがちで、どう書いていいのかいつも困っていた」
「難しい表現を使ったほうが得点が稼げると思って無理に使っていた」
「独自の見解を書こうとしすぎて途中で迷走することがよくあった」
といった悩みを抱えていた人にとっては、目からウロコの指摘もあったのでは?
 
ポイントがわかれば、「取れるところで確実に点を取る」「無駄な減点を極力防ぐ」といった対策も立てやすい。
 
あとは、時間配分などを意識しながらとにかく書くトレーニングを重ねよう!


取材・文/伊藤敬太郎 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌)
入試ではどのように出題される?学校ごとの詳細を確認しよう
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