小論文の書き方完全マニュアル!構成、ルール、注意点とは?模範解答&減点対象ダメ答案例文つき

大学入試で出題される小論文に苦手意識をもっている人は多いのでは?

模試などを受けてもなかなか点数が伸びないと悩んでいる人もいるはずだ。

その大きな理由の一つは、シンプルに小論文の基本的な書き方やルールを知らないことにある。

つまり、基本とルールを理解すれば、苦手意識のあるあなたにも小論文攻略は十分なのだ。

それでは、スタディサプリの現代文・小論文講師を務める小柴大輔先生に基礎から教えてもらおう!

教えてくれるのは
小柴大輔先生

小論文の書き方完全マニュアル!構成、ルール、注意点とは?模範解答&減点対象ダメ答案例文つき

Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導。

感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。

スタディサプリでは、現代文の他、小論文やAO・推薦対策講座を担当。

小論文の基本中の基本を理解しよう

小論文と作文・感想文とはどこが違う?

小論文対策に取り組むに当たって、まず気をつけておきたいのが次の点。

「小論文と作文・感想文の違いを理解しておくことです。

よく言われることではあるのですが、小論文なのに作文・感想文を書いてしまう受験生は多いんです」

どこがどう違うのか、ポイントをざっとまとめてみた。

●小論文と作文の違い
小論文 項目 作文
自分の意見や主張。 伝える
内容
自分の体験やそれを通して感じたこと。
根拠や理由を示し、論理的、客観的に
伝えることが求められる。
求められる
要素
一般論ではなく、自分の気持ち、
感想を伝えることが求められる。
基本的には使用しない
(多少の比喩表現などであればOK)。
文学的な
表現技法
効果的であれば使用してOK。
序論・本論・結論で構成する。 文章の
構成
読みやすさが第一。細かな制限はない。
「だ・である」が基本。 文体 「だ・である」でも「です・ます」でもOK。
どちらかに統一すること。

作文・感想文なら自分の思ったことを思ったように書いてOK。

これに対して、小論文は、設問に対して、根拠を示して自分の意見を論じ、論理的に相手を説得することが求められる文章。

独りよがりな思いだけを書いても誰も説得することはできず、それでは小論文として成立しないのだ。

小論文は序論→本論→結論の3部構成

小論文を書くうえで必ず理解しておきたいのが「構成」だ。

ここを理解していないと、ただダラダラとまとまりのない文章になってしまい、小論文として成立しなくなってしまう。

では、小論文の構成とはどのようなものなのかというと次のとおり。

序論→本論→結論

この3部構成が基本だ。

序論では、設問に対して、自分なりのテーマを設定する(ここで自分の意見を提示してもOK)。

続く本論では、意見の裏付けとなる理由・根拠を記述。

そして、結論で全体を締めくくる(ここで意見を記述する場合もある)。
「中でも重要なのが序論です。

序論では、自分の立場・関心・目の付け所を明らかにするのがポイント。

2~3行の序論形成がしっかりできていると、小論文の方向性が決まりますから、書く側も書き進めやすいし、読む側にとってもわかりやすい文章になります」

なお、意見は「結論」で書くものと思っている人も多いはずだが、「序論」で早々に意見を書いてしまってもまったく問題ない。

本論はそれを裏付ける理由や根拠を中心に展開する。

小柴先生によれば、意外にも「結論」はそこまで重視しなくてもいいのだとか。

「序論で書いた意見の繰り返しになる場合もありますし、時間切れで結論まで書けないケースもありますからね。

結論は省いて、序論→本論という構成にしてしまっても、実は問題ないんです」

小論文で求められる「意見」は持論や思想とは違う

では、小論文で求められる「意見」とはどのようなものなのだろうか。
「意見というと、自分の中にある『揺るぎない持論』を披露しないといけないと思い込んでいる受験生もいますが、そんなことはありません。

そもそも、課題文に対して賛成・反対の両方の立場から論じさせる設問だってありますから。

自分の考えとは違う意見を書くことだってあるのです」
これは意外に感じる人も多いかもしれない。

要するに、問われているのは、その人の本質的な考え方や思想ではなく、初めて見るテーマについても臨機応変に論理展開できる柔軟な思考力というわけだ。

ちなみに、意見と感想の違いがよくわからないという人も多いかもしれない。

わかりやすく言えば、自分の中の「好き/嫌い」で終わってしまうのが感想、一方、自分の感情とは別に、論理的な根拠とともに主張されるのが意見。

例えば、「とてもおいしいから納豆が大好きだ。だから毎日食べたい」は感想(あるいは自分の感情・感覚だけに基づいた考え)。

これに対して、「納豆には必須アミノ酸がバランス良く含まれており、人々の健康増進に貢献することが科学的にも証明されている。

だから、積極的に摂取すべき食物の一つである」は意見。

なお、後者の「意見」は、実は納豆が嫌いな人が書いている場合だってあるし、それでもまったく問題ないというわけ。

小論文の書き方完全マニュアル!構成、ルール、注意点とは?模範解答&減点対象ダメ答案例文つき
また、一口に「意見」といってもいくつか種類がある。

分類すると次の通り。
①問題発見、問題の指摘

②問題の分析

③問題解決、対策案の提示

④希望や価値、可能性、重要性の指摘
例えば、少子高齢化や地球温暖化などの社会問題について意見を述べる場合、受験生は、つい対策まで書かなければいけないと考えがちだ。

しかし、このような複雑な問題に対して、限られた時間、文字量で説得力があるレベルの対策を提案するのは、受験生にとっては至難の業。

そのような場合は、無理をせず、問題の指摘や分析に止めても十分意見として成立する。

①~④のうちのどれかに該当していれば大丈夫(もちろん複数を組み合わせてもOK)。

理由・根拠がなぜ重要なのか?

次に、「理由・根拠」についても説明しておこう。

根拠として使えるのが統計データだ。

数字で裏付けることにより、意見の説得力はグンと高まる。

ただし、課題文や図表から引用する場合を除けば、数字を覚えておく必要があるので、受験生にとってややハードルは高め。

あくまでできる範囲で盛り込めばOKだ。

小論文の書き方完全マニュアル!構成、ルール、注意点とは?模範解答&減点対象ダメ答案例文つきより意識してほしいのが、文中で自分の意見に対する反論を示して、それを乗り越えること。
「これは小論文を書くうえで非常に重要なポイントなんです。

どんな意見にも反対意見はあります。

文中で反対意見を明示し、比較上自分側の意見の方がより重要である、あるいは
反論側にはこんな大きな問題があるなどを指摘することで、説得力が大きくアップします。

もう一人の自分とディベートするイメージですね」

構成に沿って書く内容を整理する

小論文の書き方完全マニュアル!構成、ルール、注意点とは?模範解答&減点対象ダメ答案例文つき

小論文を書き始める前に大事なことをおさえよう

まず出題の主旨を理解し、自分の意見を決める

小論文を書き始める前に、まず出題の主旨をしっかり理解しよう。

例えば、「環境問題に関して先進国が抱える課題について論じなさい」という出題に対して、「先進国が抱える」という記述を無視して、「自分が個人的に抱えている課題」について論じるといったように、出題の主旨を理解していない解答は、どんなに構成がしっかりしていてもNGだ。

合わせて、出題の条件を踏まえることも大切。
「例えば、『○○の問題に対して、賛成・反対の立場を明確にしたうえで、自分の意見を論じなさい』という出題がよくありますが、このような条件は絶対無視してはいけません」
条件にはほかに、「具体例を挙げて説明しなさい」「問題文を要約したうえで、自分の意見を論じなさい」といったパターンもある。

小論文全体を出題の主旨・条件に沿った内容にまとめることを意識して、構成を考えよう。

序論・本論・結論に何を書くかを考え、設計図を作る

出題の主旨・条件を理解したら、次のステップは意見を決めること。

その際に、明確な理由や根拠が示せるかどうかをしっかり考えることもポイントだ。
「根拠の薄い思いつきのような意見では、いくら個性的だろうと、小論文として成立しません。

小論文で示される意見とは、論理やデータで組み立てていくものなのです」
意見が決まったら、それを軸に構成を考えていく。

序論をどう書くか、本論をどう展開するか、結論をどうまとめるかをイメージし、小論文の設計図を作っていこう。

論点や意見の整理にはメモを活用

なお、意見を決め、構成を考えるときにはメモを取るのがおすすめ。

頭の中で考えているだけだと、最初に考えたことを忘れてしまったり、アイデアが整理しきれずに混乱してしまったりすることもある。

メモを取る時間が無駄に思えるかもしれないが、キーワードを書き出したり、序論・本論・結論それぞれのポイントを簡単に書き出したりするだけでも、頭の整理につながり、文章を書き進めやすくなる。

原稿用紙の使い方&小論文のルールを頭に入れておこう

適切な段落分けを意識しよう

小論文をわかりやすく展開するには、適切な段落分けがポイントになる。

段落分けをどのようにしていいのかわからないという人も多いかもしれないが、それほど難しくはない。

典型的には、まず〈課題文要約〉〈序論〉〈本論〉〈結論〉で分ける。

また、本論は長いので、内容のまとまりで段落分けすることを意識しよう。

倒置法や比喩などの文学的表現は使わない

小論文は小説や随筆などの文学ではなく、説明文。

そのため、文学作品やエッセイなどで頻繁に用いられる倒置法や比喩、体言止めなどの技法は使わないのが基本的なルールだ。

促音、拗音、句読点、かっこなどは1マス使う

原稿用紙の基本的なルールとして、「っ」などの促音、「ゃ」、「ょ」などの拗音、「、」などの句読点、かぎかっこなどは1マスを使って書かなければならない。

ただし、例外は、句読点や閉じかっこが原稿用紙のいちばん上のマスに来てしまう場合。

句読点や閉じかっこはいちばん上のマスにもってくることができないため、この場合に限り、前の行の最後のマスに記入してもOKとされている。

小論文として適切な日本語を使う

文章はすべて「だ」「である」で統一

小論文の文章は「だ」「である」調で記述するのがルール。

丁寧な印象を与えようと「です」「ます」調で書いてしまう人もいるが、小論文のルールからは外れている。

カタカナ語の使い方に注意

日常的な文章や会話では、「リスペクト」「インパクト」などのカタカナ語がよく使われるが、日本語で置き換えられる表現がある場合、小論文では、これらのカタカナ語の連発は避けよう。

もちろん、「ビジネス」「マーケティング」「コンプライアンス」などのように日本語として定着している表現ならOKだが、意味をよくわかったうえで使っていることを示すため、文章全体のどこかで、別の日本語表現で言い換えるとかっこいい。

略語は基本的に使用NG

小論文では略語は使わないのがルール。

「スマホ」「コンビニ」「就活」など日常語として定着している言葉は、ついそのまま書いてしまいがちだが、「スマートフォン」「コンビニエンスストア」「就職活動」と書くのが正しい。

また、「WHO」「UN」など公的機関名も「世界保健機関」「国際連合」と正式な日本語名で書くのが原則。

ただし、問題文に略語で記載されている場合は、略語で表現しても大丈夫。

その場合は、文中で表記を統一するように注意しよう。

口語体(話し言葉)は使わない

「だから~」「(接続語としての)あと~」「~なのに」「いろんな」といった口語体(話し言葉)は小論文にはそぐわないので使わないようにしよう。

これらの表現はすべて、「したがって~」「また~」「~だが」「様々な」といった文語体に置き換えられる。

擬態語や擬音語を使わない

「ギリギリ」「コツコツ」「イライラ」「テキパキ」などの擬態語や擬音語は小論文では使わないのがルール。

それぞれ「直前まで(限界まで)」「堅実に」「苛立つ」「迅速に」などの表現に置き換えることが可能だ。

重複表現に注意しよう

「違和感を感じる」「すべてを一任する」などの重複表現はつい無意識に使ってしまいがちなので注意が必要(「違和感を覚える」「一任する」が正しい)。

日常会話で使う表現としても間違っているので、普段から気をつけよう。

同じ言葉の多用に注意しよう

あるテーマについて論じる文章中では、意識していないとつい同じ言葉やほぼ同じ意味の言葉(近接同語)を多用してしまいがち。

しかし、一文のなかに同じ言葉が何度も出てくると、文章が不必要に長くなるうえ、単調な印象を与える。

なるべく、言葉が重ならないように工夫して文章をまとめよう。

小論文の上手な書き方・やってはいけない書き方を例文でチェック

小論文の書き方完全マニュアル!構成、ルール、注意点とは?模範解答&減点対象ダメ答案例文つき

小論文の答案サンプル集を参考に小論文の書き方をマスターしよう

  

反論を乗り越える「根拠」や「具体例」はこう書く!

【問題サンプルA:テーマ型小論文】
問い:給与の仕組みについて、年功制に代わり能力給(成果主義)を導入することについて、あなたの意見を自由に論じなさい。

 

★☆★☆点数が稼げる!模範答案サンプル★☆★☆

私は①国際化が進み、国内的には少子化・人口減が進む現代社会という視点から、多彩な人材をワールドワイドに集めるためにも、②年功制から能力給への移行は重要だと考える。

以下詳しく論じる。

③年功制は、新卒一括採用・終身制・定年制などとセットで「日本的経営」と呼ばれてきた。なるほど集団や組織を重視する「日本人のメンタリティ」に適しているともいわれる。

④しかし、年功制は戦後日本の人口増加という状況で生まれたものだ。

100年200年続いた「不動の伝統」ではなく、ある歴史的・社会的な条件下で形成されたものだ。

すなわち、「国内の人口増加=労働力人口増・消費人口増」の中で生まれ定着したものだ。したがって、歴史的社会的状況が変化すれば(国際化・少子化・人口減少)、給与の仕組みや働き方も変化することは必然である。

商品やサービスを売る消費市場は海外に広がっている。

そうした視野の拡大のためにも、人材・労働力の市場を得るためにも「日本的経営」で国内人材を囲い込むのではなく、国際社会から多彩な人材を獲得することが重要であろう。

統計によれば、⑤日本のGDPの総額は世界第3位であるが、人口で割った「一人当たりGDP」も働く人の数で割った「労働生産性」でも先進国(OECD)中、平均以下の下位グループである。

この点でも国内人口増とは相性のよかった「日本的経営」には限界がきている。ゆえに能力給への移行がこれからの日本には必要であろう。
【解説】

① 大切なのはやっぱり序論。最初に明確に視点を提示することで小論文全体の切り口が絞られ、読みやすい構成になる。これだけで加点対象。

② 序論でこの小論文の結論(=自分の意見)を書いている。この構成は非常に読みやすい。

③ 自分とは異なる意見(反論)にも触れている。ここでのポイントは自分の意見とは違う立場だとわかるように書くこと。「一般的には~と言われているが」「~という面では評価されているが」といった書き方をすると立場の違いは明確になる。なお、反論はあくまで脇役なのでボリュームが増えすぎないように注意。

④ ここから反論を乗り越えて、自分の意見の強調(再反論)に入っている。再反論は大事なところなので分厚く。続く文章では言い換えや根拠の説明、具体例を重ねて意見に説得力が加えられている。

⑤ このように統計を出すと説得力アップ。加点要素になる。OECDの統計など、使えるデータはしっかり頭に入れておきたい。なお、ハッキリ覚えていない場合は無理して使わなくてもOK。

序論になっていない序論は大きな減点対象!

×××減点もやむなし!ダメ答案サンプル×××

①給与の仕組みについて、年功制に代わり能力給(成果主義)を導入することについて、私の意見を述べる。

②そもそも給与の仕組みなど、人間が働く動機としては二次的で重要ではない。

むしろ、自らの適性にあった仕事かどうかが重要であると私は思う。

そのために学校教育を通じて自己の適性を知ること③が重要であるとは私は思う。

能力給(成果主義)は④日本人の性格に合っていないため導入しても長く続かないだろう。

④能力給の長所もあるので、それを十分に踏まえる必要がある。

 

【解説】

① この序論は、設問の内容を繰り返しているだけで自分なりの視点や切り口がまったく示されていない。序論としての役割を果たしていない「あってもなくてもいい文章」になってしまっている。これは減点対象。とりあえず導入っぽいことを何か書けばいいというものではないのだ。

② 設問は給与の仕組みについて尋ねているのに、この内容はまったく設問に答えていない。これは大きな減点対象。0点でも文句は言えない。

③ 「~が重要であると私は思う」という表現は直前にも使っている。同じ表現の繰り返しは避けたい。日本語にはさまざまな表現があるのだから言い換えよう。

④ 理由や根拠がない横暴な断定になっている。この場合なら、「日本人の性格」とはどのようなもので、なぜ合わないのか、言葉を尽くすべき。ここをしっかり書かないと意見に説得力が生まれない。

⑤ この締めは、何が言いたいのか不明。能力給の問題点を重視して書くのか、可能性を重視して書くのか、序論で明記していないから、自分でも最後に来て混乱してしまっている(実はよくあるケース)。

また、この一文が自分の意見なのか他者の意見なのかもよくわからない。これも小論文における表現としては大きなマイナス材料。

そのうえ「長所である」ことの根拠も示されていない。

図表分析は「点」ではなく「線」を読み取ろう!


続いては苦手な人も多い図表分析の模範答案とダメ答案。

こちらはポイントとなる部分を抜き出した答案サンプルを紹介しよう。

【問題サンプルB:図表分析】
問い:図表1・2から読み取れることを記し、あなたの考えを論述しなさい。


小論文完全マニュアル④ 合格レベルの模範答案&減点やむなしのダメ答案サンプル集

★☆★☆点数が稼げる!模範答案サンプル★☆★☆

①年少人口比も生産年齢人口比も下降傾向である。

一方、老人人口比は上昇傾向で、②90年代後半以降、年少人口比を上回っている。

いわゆる③少子高齢化を示している。

図表2によれば、④社会保障費はほぼ一貫して増加傾向であり、人口に占める高齢者比率が高まるにつれて、上昇していると言える。

また、図表1の将来予測から、今後も社会保障費が増加していくと推測される。

したがって、⑤働く世代の税負担などが増すことが考えられる。
【解説】

① グラフなどの数字は、「点」でとらえるのではなく「線」でとらえるのがポイント。この文章は「下降傾向」という「線」を説明しているのでグッド。

② 流れの中の転換点、難しい言い方をすると「線の中の特異点」を指摘できている。「線」が読み取れたら次のステップはこれ。どの点を境に傾向が変化しているのかなどを説明できると分析に厚みが生まれる。

③ 図表にも設問にも「少子高齢化」という言葉は出てきていない。図表が示していることを自分の知識と関連付けて表現できている。これも図表分析では大事なポイント。

④ このように複数の図表が示された場合、その関連性が問われていることがほとんど。図1と図2を関連付けた分析はグッド。

⑤ 単に数字が示されただけのグラフから、その意味することを概念化し、まとまった言葉を与えている。この場合は将来どんな問題が起こりうるかと言うことをしっかり記述できている。ここまでできれば図表分析問題の回答としてはハイレベル。

 

図表分析でありがちなミスはこれだ!

×××減点もやむなし!ダメ答案サンプル×××

図表1によれば、2015年の年少人口比率はおよそ13%とわかる。

図表2によれば、2015年の社会保障費はおよそ120兆円だとわかる。
【解説】

見たままを書いただけ。数字の棒読みで分析になっていない。

しかも、数字の推移がグラフで示されているのに、「点」の指摘しかしていない。これでは得点は期待できない。

 

×××減点もやむなし!ダメ答案サンプル×××

図表1によれば、老人人口は増加傾向である。

 

【解説】

こちらは一見「線」を読み取れているように思えるが、実は図表を読み間違えている。

図表1は「人口構成比」、つまり割合を示しているだけ。高齢者人口そのものが増えていることを示しているわけではない。

実際には日本の総人口はすでに減少が始まっている。

割合と実数を取り違えて解釈してしまうのも実はよくあるミス。

要約は「対立構造」をしっかり抜き出そう

続いては、小論文につきものの要約問題の模範答案&ダメ答案も見ておこう。

【問題サンプルC:課題文の要約】
問い:以下の文章を読み、200字以内で要約しなさい。

 

【課題文】

心と体が二つの異なる実体とみなす心身二元論には、長い伝統がある。

古代ギリシャのプラトンの哲学や近代のデカルトの哲学が代表である。

もっと素朴な感覚からも、たとえば、生きて活動していた人間が死んでしまうと体だけ残して活動を停止するところから、魂・心と身体が別物で分離可能なものと見えることも、心身二元論をもっともらしいものとしてきた。

こうした心身二元論は、ちょうどアニメにあるような乗り込み型のロボットのようなものとして、人間というものを捉えている。

乗り込む人間が魂や心に相当する部分で、一方それに操られるロボットが身体に相当する。

『マジンガーZ』でも『ガンダム』でも『マクロス』でも『エヴァンゲリオン』でも、お望みのロボットアニメを思い浮かべていただきたい。

この意味でも、ロボット的心身二元論モデルは、私たちになじみ深い。

これまで実に多くのロボットアニメが作られ、またこれらを違和感なく見てこられたのも、心身二元的な自分自身と乗り込み型ロボットとの間にアナロジー=類比を見ているからだろう。

だが、このような心身二元論的モデル、乗り込み型ロボットモデルは、身体というものを、なにかしら「外部」的なものとして捉えていることが分かる。

つまり、自分という人間の核は心・魂・精神と呼ばれるところにあり、身体はそれから区別された周辺的なものと見なされている。

しかしながら、よく考えてみれば、身体が「自分」というものから「外」にあるという感覚、身体がよそよそしく感じられる時というのは、骨折などして体の自由が効かない場合や緊張のあまり体がぎくしゃくしている場合など、むしろ特殊な場合である。つまり、通常の日常活動しているとき、私たちは身体の「外部性」など感じたりはしない。

あるいは、身体というものの存在をとりわけて意識したりはしないのだ。ことさらに身体を意識しているようでは、日常の行動はうまくいかない。例えば、体重を前方に傾けながら右足を一歩前に出し、そのとき左足は軽く地面をけってそのまま前方に送る、などと意識していては、走ることも歩くこともろくにできはしない。

むしろ、身体がほんとうに身体として機能しているときには、身体はその「外部性」を消失している。

心と身体との一体感こそ私たちにとって常態なのである。そしてこの心身の一元的な感覚を幸福な一体感と私は呼びたい。

だが、先にも触れたように、通常の日常生活が行われているとき、身体はその「外部性」「存在感」を消失しているために、人々はこの幸福な一体感に気付かない。

ところが、柱の角に足の指をしたたかぶつけたとき、自分が身体なのだと、ありありと感じる。

骨折治療用のギプスをはずされ、リハビリテーションで苦痛のうめき声をたてながら、自分の身体性を取り戻す。歯科医の椅子で呻吟(しんぎん)しているとき、これ以上に、自分が他ならない身体であり、自分の外に身体はなく、身体の外に自分はないということを切実に感じることはない。私たちが苦痛を被(こうむ)ったとき以上には心身の幸福な一体感を感じられないとは、いかにも皮肉だ。

(小柴 大輔 『心と体の哲学』)
★☆★☆点数が稼げる!模範答案サンプル★☆★☆

プラトンやデカルトの哲学を代表に、①心身二元論 には長い伝統がある。

②また一般的にも心体は別とされがちだ。

ここではアニメの乗り込み型ロボットのように身体は心に対して「外部」とみなされる。

②だが、 身体を外部と感じるのは体がうまく機能しない特殊な場合である。

②むしろ 身体が真に機能するとき心身は一体である。

②ただし、 この状態が常態であるために、苦痛を感じた時にしか心身の幸福な一体感を感じられないことは、皮肉だ。
【解説】

① 文章の主役は「心身一元論」だが、敵役(=乗り越えるべき反論)である「心身二元論」について触れている。要約ではこの対立構造を抜き出すことがポイント。

② 要約の文章はとにかく短文で切って、適切な接続詞でつないでいくこと。こうすると簡明で論理的な文章になる。

ダラダラと一文が長い要約は減点される!

×××減点もやむなし!ダメ答案サンプル×××

プラトンやデカルトの哲学を代表に、心身二元論には長い伝統があり、一般的にも心体は別とされがちで、アニメの乗り込み型ロボットのように身体は心に対して「外部」とみなされ、身体を外部と感じるのは体がうまく機能しない特殊な場合で、身体が真に機能するとき心身は一体であり、この状態が常態で、苦痛を感じた時にしか心身の幸福な一体感を感じられないことは、皮肉だ。
【解説】

これは要約問題でありがちなミス。「要約=まとめ」だから一文で書くものと勘違いして、約200字を句点なしで書き切ってしまっている。取り上げている重要語句は模範答案と同じでも、非常に読みにくく減点される答案。
×××減点もやむなし!ダメ答案サンプル×××

 

身体が真に機能するとき①心身は一体である。この状態が常態で、通常の日常生活が行われているとき、身体はその「外部性」「存在感」を消失している。
これを幸福な一体感というが人々はこれに気付かない。

ところが、②柱の角に足をぶつけたときや骨折治療用のリハビリテーションで苦痛のうめき声をたてるとき歯科で呻吟(しんぎん)しているとき、身体の外に自分はないということを切実に感じる。

【解説】

① 課題文の主役である「心身一元論」にはもちろん言及すべきだが、この要約では敵役の「心身二元論」が抜けている。

② 具体例を書きすぎ。要約では具体例はカットするのがセオリー。

さて、参考になっただろうか。

他人が書いた文章を読んでみると客観的にポイントが見えてきたりするもの。これも効果的な小論文対策なのだ!

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