ロボットを作る仕事って?向いている人や必要なスキルをまとめて解説!
「ロボット」というと、マンガやアニメ、SF映画などに出てくる人型ロボットをまずイメージする人が多いだろう。身近な例では、ペット型のコミュニケーションロボットやロボット掃除機があるし、工場や飲食店、医療・介護の現場、危険な環境など、さまざまなところでロボットが活躍している。
そこで、ロボットを作る仕事について、どんな職業があるのか、ロボット設計技術者とはどんな仕事内容なのか、ロボットを作る仕事に就くにはどうすればいいのかを調べてみた。
さらに実際に、人工知能を搭載したエンタテインメントロボット“aibo”(アイボ)の設計技術者(エンジニア)に、仕事内容や、やりがいについても聞いてみた。
目次
ロボット業界は今、注目の分野!
人間がやっている仕事がどんどんロボットやAIに取って代わられるようになると言われている昨今。
工場だけでなく、一般の家庭でも、ロボットが活躍するようになり、ロボット業界は今、注目を集めている。
ロボットとは?
ロボットとは、「センサー」「知能・制御系」「駆動系」の3つの要素技術を有する、知能化した機械システムと定義されている(NEDOロボット白書2014より)。ロボットには、
・工場や飲食店の生産工程などで使用される産業用ロボット
・危険な環境の中で作業を代行するロボット
・家事や介護などをサポートする日常生活支援ロボット
・医師の手術を支援する医療ロボット
・ペットや子どものようにコミュニケーションできるロボット
など、さまざまな場面で活躍するロボットがある。
ロボットの開発は、大きく分けて「センサー」「知能・制御」「駆動」の3つの専門分野に分けられる。
人間の目や耳のように認識をする「センサー」、その認識した結果について考える頭脳の役割をするのが「知能・制御」、そして実際に動くための手足にあたるのが「駆動」。
それぞれのハードウエアやソフトウエアを設計・開発する技術者がいて、たくさんの人がロボットを作る仕事にかかわっている。
ロボットとAIの違いは?
ロボットは、プログラミングされたことだけを忠実に正確に行うことができる機械。AI(人工知能)は、人工的に作られた人間の脳に似たコンピュータ。
ロボットとAIの大きな違いは、ロボットはプログラミングされた以外の行動はできないように設計されているが、AIは逆にシステムの中の膨大なデータを学習して予測を立てて自ら行動を起こすことができる。
AIそのものは形のない人工知能だが、そのAIを搭載した人型ロボットやペット型ロボットなどが開発されていて、ロボットの役割を広げている。
なぜロボットが注目されているの?
ロボットが注目されている理由は、人間の代わりにさまざまな働きをしてくれるようになったから。少子高齢化や働き方改革が問題になっている社会で、ロボットは人間の代わりに効率良く、スピーディーかつ正確で安全に作業をするだけでなく、生活をサポートしてくれる役割もあり、企業はもちろん、一般の人たちからも、ロボット業界が注目を集めている。
自動車メーカーや食品メーカーの工場では、産業用ロボットが物資の搬送、製造、加工、組み立てなどを効率良く行っている。
飲食店の厨房では、寿司のシャリ玉の製造やチャーハンの調理などをロボットに任せている店舗も増えてきた。
災害地や高所などの危険な現場での作業、医師の手術のサポート、高齢者の移動の補助など、人間の能力だけでは限界があって困難なことをロボットが代行することも。
さらに、本物のペットのように飼育することができたり、自動的に掃除をしてくれたり、日常生活を豊かにしてくれるロボットが、一般家庭でも活躍するようになった。
ロボットを作る仕事とは?
ロボットを作る仕事には、
・市場や現場のさまざまなニーズに応えて、ロボットを設計・開発するエンジニア
・ロボットのコンセプトから考えるクリエイター
・ロボットの、見た目を創造するデザイナー
・ロボットの組み立てやメンテナンスを行うオペレーターや整備士
など、いろいろな職業がある。
ロボット設計技術者(エンジニア)
ロボット設計技術者(エンジニア)は、ロボット開発技術者とも言われ、主にロボットの設計にかかわる仕事だ。ロボットの利用目的に合わせて、動作や機能などを研究・開発して、システム設計、プログラミング、部品選びなどを行い、作業能力の高いロボットの構造を設計する。
センサー、知能・制御、駆動それぞれの専門分野の担当がいて、分業で、ひとつのロボットを作り上げていく。
また、完成したロボットの実証実験を行い、運用後もユーザーの意見などを聞きながら、随時、アップデートに取り組んでいる。
ロボットクリエイター
ロボットクリエイターは、どんなロボットを作るのか、企画の段階から携わり、コンセプトを考えたり、ロボットの開発・設計を行ったり、デザインや製作まで、トータル的な仕事を行っている。ロボットデザイナー
ロボットデザイナーは、主にロボットの見た目をデザインするのが仕事。特に、日常生活支援ロボットや愛玩ロボットの場合、機能性だけでなく、生活を豊かにしてくれる「愛されるロボット」が求められるため、見た目のデザインも大切になってくる。
ロボットオペレーター・整備士
エンジニアやデザイナーが設計したロボットを、実際に製造する機械組み立て工、ロボットを動かすためのプログラムを作成するオペレーター、メンテナンスや修理を行う整備士など、製造業の仕事もある。ロボットを作る仕事をするには?
ロボットを作る仕事をするには、いずれの職種でも、機械メーカー、家電メーカー、自動車メーカーなどに就職することが一般的。大学や専門学校などで、ロボット工学、プログラミング、CG、デザインなどの基礎知識を身につけておくことが望ましい。
ロボット設計技術者(エンジニア)になるには?
ロボット設計技術者になるには、特に資格は必要ないが、大学や専門学校などで、機械工学や電気・電子工学、制御工学など、ロボット工学の基礎となる知識を身につけておきたい。さらに情報処理やプログラミングの基本的なスキルを身につけておくと、仕事に生かすことができる。
ロボットクリエイターになるには?
ロボットクリエイターになるには、特に資格は必要ないが、大学や専門学校などで、電気・電子工学、機械工学など、ロボット工学に関する幅広い知識を身につけておきたい。実際にロボットを製作する場合もあるので、特に電気回路の設計・製図について学び、プログラミングやCADの基本操作も習得しよう。
ロボットデザイナーになるには?
ロボットデザイナーになるには、特に資格は必要ないが、大学や専門学校などで、CGデザインの基本について学んでおこう。機械工学や制御工学など、ロボット工学の基礎となる知識を身につけておくと、見た目だけでなく機能性も兼ね備えたデザインの提案ができる。
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ロボットを作るにはどんな知識や技術が必要?
ロボットを作るには、ロボット工学の基礎となる知識をはじめ、数学、物理、英語についても学んでおきたい。
ロボット設計技術者(エンジニア)を目指すなら、プログラミングの知識と技術も求められる。
機械工学、電気・電子工学
機械工学は、生産機械や自動車、医療機器といった機械について、設計から材料の加工、実際の使用方法まで、幅広く学ぶ。ロボットのボディや手足となるアームの構造設計や組み立て、軽くて丈夫な素材の開発などを担うのが機械工学の役割。
電気工学は、新しい電子材料の開発や電気の利用技術の研究を行う。
電子工学は、生活家電や通信機器、自動車、医療機器まで、あらゆる電子機器のしくみを理解する。
電気・電子工学を学ぶことで、ロボットの脳となるコンピュータ(電子回路)の設計をすることができる。
プログラミング、情報工学
情報工学は、コンピュータ自体やソフトウエアの基礎から、高度な情報処理技術について学んでいく。ロボットの脳にインストールするプログラムの開発につながるのが情報工学で、実際にコンピュータを動かしながらプログラミング技術を身につける。
数学、物理、語学
数学(特に微分・積分)や物理は、機械工学、電気・電子工学などにつながっているので、高校の授業でしっかり勉強しておきたい。ロボット業界は、海外の大学との共同研究、海外メーカーとの提携、共同開発、技術交流がさかんに行われているので、英語をはじめ、中国語や韓国語などの語学力を身につけておくと、海外へと活躍の場が広がる。
ロボットを作る仕事に向いている人は?
ロボットを作る仕事は、「こんな作業を代行してほしい」「こんなことをしてくれたらいいな」というニーズを形にして作り上げていく。そのため、何よりも「ものづくり」が好きで、想像力があり、論理的に考えることができて、相手のニーズを引き出せるコミュニケーション力のある人が向いていると言える。
ものづくりが好きな人
ロボットを作る仕事は、現場からのニーズに応えて一から作り上げていくものと、既存の製品を改良したり、コンセプトやデザインを引きついで新たな製品を開発したりするものがある。いずれも、ロボットという形あるものを作り出していく作業なので、ものづくりが好きであるということは大事な要素になる。
技術の進化に適応して想像できる人
ロボット業界は、どんどん技術が進化しているので、常に最先端の技術を勉強しながら、改良を進めていかなければならない。ロボットをどう活用していくのかをイメージして、今までに存在していなかった新しい技術を開発できるような発想力も求められている。
論理的な思考に優れている人
ロボットを適切に動かすためには、プログラミングや製造において小さなミスも許されない。物事を体系的に整理し、筋道を立てて論理的に考えることが大切。
コミュニケーション能力のある人
ロボットの開発は、さまざまな領域のエンジニアたちとチームを組んで、連携をとりながら研究や設計などを行うことが多いので、コミュニケーション能力があると仕事を進めやすい。ロボット設計技術者(エンジニア)にインタビュー!
ソニーグループで、人工知能を搭載したエンタテインメントロボット“aibo”の設計・開発を行っているエンジニアの北村謙典さんに話を聞いてきた。
ロボット設計技術者(エンジニア)になろうと思ったきっかけは?
しかし、大学入試で失敗して獣医学部をあきらめ、大阪大学の基礎工学部に入学。
基礎工学部は入学後に専門のコースを選択する学部だったので、2年次から生物系の専攻を選択しようと考えていたのです。
ところが、大学の授業でプログラミングを初めて学んでみたら、すごくおもしろくて!
その興味の延長で知能システム学を専攻して、人の表情や行動を撮影した画像を認識させて家電を制御する、スマートホームの研究を行い、大学院まで進学。
ソニーグループは、ハード面でもソフト面でも、いろいろな新しい取り組みをしている会社なので、大学院で次世代のプログラミングを学んだことが生かせると考えて、入社しました」(北村さん)
ロボット設計技術者(エンジニア)の仕事内容は?
aiboには22個の関節があるので、その関節を動かして、例えば歩くときは足の動かし方をどうすればいいか、犬らしい動きになるようなプログラミングをするのが中心です。
大学と大学院で、画像認識、音声認識、ロボット制御、プログラミングなどを学んだことが、ロボット設計の仕事に生かせていると思います。
プログラミングをするときは、ひとりでパソコンに向かっていますが、aiboの開発にはたくさんの技術者がかかわっているので、会議も多くあります。
aiboのカメラで見た画像を認識する、認識した結果を使って考える、考えたことに従って動く、それぞれのソフトウエアを設計するエンジニアがいます。
さらに電気回路の技術者、骨格や駆動の部分のメカ担当、CGデザイナー、企画担当など、開発チームのメンバーで話し合って決めていくことも多いですね。
aiboは2018年に発売されましたが、半年に1回程度のペースでアップデートを行っています。
世に生み出して終わり、ではなく、アップデートで『成長』させているのです。
最近のアップデート例としては、マットやラグにつまずきやすかったのでスムーズに乗り越えられるようにしたり、カツカツと音を立てて歩いていたのを静かに歩けるようにしたり。
毎回、新製品を出すような想いでアップデートすることで、aiboを成長させ続けているのです」
(北村さん)
ロボット設計技術者(エンジニア)の仕事のやりがいは?
イベントに登壇して、aiboが人につかまり立ちをして甘えてくる機能をつけたことを発表したときは、会場から歓声が上がり、すごく感動してもらえてうれしかったですね。
アップデートしたことに対して、オーナーから『北村さん、ありがとう』と泣いてよろこんでもらえたこともありました。
オーナーにとって、家族のようにかけがえのない存在を作り出すことができているのは、コミュニケーションロボットならではのやりがいだと思います。
ロボットを動かそうとすると、個体によって重心のバランスが違っていたり、床との摩擦があったり、物理的な制約が多く、試行錯誤の毎日ですが、そういった部分を意識しながら制御を考えていくところがおもしろいですね。
ペットなのでかわいらしくしたいけれど、かわいい動きって答えは一つでないから、他のエンジニアやデザイナーと議論をしながら開発して、うまくアップデートできたときは達成感があります」
(北村さん)
ロボット設計技術者(エンジニア)になるために何を学べばいい?
まずは、今、目の前にある製品や使っているサービスの裏側がどんなふうに動いているのか、ということに興味をもってみていると、アドバンテージになりますよ。
数学や物理は、ロボット設計の基礎になるので、高校の授業はしっかり理解して積み重ねていくといいでしょう。
私の場合、犬が歩いているのを見ると、ついつい動きをチェックしてしまいます。
歩くときと走るときの足の動かし方の違い、歩いているときに顔はどっちを向いているか、飼い主をどうやって見上げるのか。
人型ロボットを作りたいなら、人間の動きを客観的に観察するといいかもしれません。
それだけでなく、ロボットの開発は、いろいろなチームで総合的に作り出していく仕事なので、コミュニケーション能力があると役立ちます。
自分はどんなロボットを作りたいのか、ロボットで何を実現したいのか、やりたいことがちゃんとあることが大事だと思います」
(北村さん)
ロボット設計技術者(エンジニア)を目指す高校生へのメッセージ
テレビやマンガで活躍する夢の世界の存在だったロボットを、自分の手で現実に作り出していけるのはとてもおもしろいし、やりがいのある仕事です。
これから5年後、10年後、ロボットが一般家庭にもどんどん普及するようになれば、ロボット開発者の道も広がっていくと思います。
人間とロボットがもっともっとコミュニケーションがとれるようになって、お互いの絆をもっと深められるようになればいいなと考えています」
(北村さん)
ロボットを作る仕事には、さまざまな職種がある。
開発できるロボットも、産業用ロボットから生活支援ロボット、コミュニケーションロボットまで、いろいろな種類がある。
自分はどんなロボットを作りたいのか、どんな形でロボットを作る仕事に携わりたいのか、やりたいことを考えて、大学や専門学校を選ぼう。
\ここもcheck/
機械・電気・化学に関する仕事・資格を調べる
取材協力/ソニーグループ株式会社、文/やまだ みちこ、撮影/沼尻淳子、構成/高木龍一