キミの街にもある?地域や社員に愛される「人を大切にする」会社
会社っていうのは“人"より“利益"が最優先?
数年前から、ブラック企業が社会問題になっているのは高校生もよく知っているはず。
大手企業のリストラも相変わらずニュースなどでよく取り上げられる。
こういった話ばかり耳にしていると、「会社っていうのはやっぱり利益優先。人よりおカネが大事なんだろうな」なんてつい考えてしまいがちだ。しかし、世の中、決してそんな会社ばかりではないのだ。
「利益よりも社員の幸せを第一に考える」
「縁があって雇った社員は本人がイヤだと言わない限り絶対にクビにしない」
「障がいのある人たちと健常者とが協力し合って笑顔で働ける職場を」
このような理想を掲げて、その通りの経営を実現している会社が実は日本にはいくつもある。
そんな「人を大切にする会社」を紹介しているのが、法政大学の坂本光司教授の著作『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)。現在シリーズで5冊刊行されている。
障がい者を積極的に雇用して伸びている、日本理化学工業
例えば、神奈川県川崎市の日本理化学工業。学校などで使うチョークを製造しているこの会社は、知的障がいのある人たちが全社員の7割以上を占めている。
しかも、会社の主要な業務である製造や品質管理の仕事を任せ、売り上げを伸ばしてきた。
なぜそんなことができるのかというと、知的障がいのある人たちが能力を最大限発揮できるよう仕事の工程や割り振り、作業用の道具などを工夫したから。
それぞれの能力や理解力に合わせて作業を細分化し、得意なところを任せる。
数字が読めない人でも計量できるように重りを色分けする、時計が読めない人でも時間が計れるように砂時計を使う。
「できないこと」に注目するのではなく、「どうすればできるか」を考え、“人優先"で知恵を絞るのがこの会社のやり方なのだ。
経営陣と社員が協力して親会社から独立した、日本レーザー
東京都新宿区にある日本レーザーはレーザー・光関連装置を扱う従業員五十数人の商社。
「会社は社員のものであり、お客さまのものである」が理念のこの会社は、今から9年前に「親会社のため」の経営をやめ、「社員のため」の会社にしようと、経営陣と社員が共同で親会社などから株を買い取って独立。
社員全員が主役(=株主)の会社を本当に作り上げた。
目先のもうけよりも地域の顧客を大切にする、中央タクシー
長野県の中央タクシーは「お客さまが先、利益は後」が経営理念。かつて長野オリンピックが開催された時も、通常の2~3倍の料金で貸し切るメディア関係者の利用を断り、「病院に通うお年寄りたちが困る」と通常料金で地元の利用者のために稼働。
そんなお客さま第一のサービスを積み重ねて、地域で最も愛されるタクシー会社になった。
“人を大切にすること"と“利益"は両立できる
『日本でいちばん大切にしたい会社』で取り上げられている会社はほとんどが全国的にはあまり名前を知られていない中小企業。地域貢献に力を入れている地元密着型の会社も多い。
それだけ聞くと「あんまりもうからなさそうだなぁ」と思う高校生もいるかもしれない。
しかし、これらの会社に共通しているのは、「人を大切にする」と同時に、しっかり利益も挙げていること。
経営者の努力と工夫次第でこの2つは十分両立できるのだ。
自分たちが大切にされていることを実感できれば、社員のやる気は高まり、お客さまや地域の人たちも大切にするようになる。そういう会社はお客さまや地域から感謝され、愛される。
そして、感謝され、愛されることが社員にとっては誇りになる。この好循環が結果として利益につながっていくというわけだ。
進学を考えている高校生にとって就職はまだちょっと先の話。
ただ、地元の会社についてよく知るなら、地元で生活している高校時代に情報収集しておくのが実はベター。
学校の先生や地域の人たちにいろいろ話を聞いてみよう。キミの街にも「人を大切にする」会社がきっとあるはずだ。