世界で最も貧しいホセ・ムヒカ前大統領のメッセージ【映画で学ぶ!世界の今】
様々な社会課題に関連する映画を配給するユナイテッドピープルが映画で学べる世界のトレンドや知っておくべき現実について紹介するコラムです。
第7回 世界で最も貧しいホセ・ムヒカ前大統領のメッセージ
「世界で一番貧しい大統領」として知られるウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が4月に初来日し、「私たちは幸せに生きているだろうか?」と問いかけました。
ムヒカさんは大統領時代にほとんどの給料を寄付し、大統領公邸にも住まずに質素な暮らしを続けていました。2012年「国連持続可能な開発会議」でのスピーチは、「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」として世界中で注目され、日本では何冊も彼の本が出版されるに至りました(※)。
ムヒカさんが来日して届けたメッセージをご覧ください。
私たちは多くの矛盾をはらむ時代に生きています。これまで矛盾を抱えた時代は人類にはなかったのではないでしょうか。現在私たちは多くの富を抱え、そして科学技術は発展し、進歩した時代に生きています。こういった時代になって、私たちがしなければならない非常に大切な問いは、私たちは幸せに生きているのか?という問いです。
もちろんひとつの側面では非常に素晴らしい変化がありました。例えば150年前に比べれば、私たちの寿命は40年長くなっています。でもその一方で、私たちは軍事費に毎分200万ドル使っています。そうしたなかで、人類の半分の富を80人から100人の豊かな人が持っている時代です。私たちは、みんなが暮らせるだけのリソースは持っています。
こういった富の不均衡、大きな格差を産む現状を作ってしまった。こういう世界的、社会的なルールが支配する世界に住んでいるのです。私は、若い人にはこういった愚かな間違いを繰り返さないで欲しいと思います。
私たちにとって人生、命ほど大切なものはありません。全ての人の命が大切です。世界について考える時も、人生について考える時も、貿易について考える時も、仕事について考える時にも、どうやったら幸せになるかと考えなければなりません。
このようにムヒカさんが来日時に語った言葉は日本中を駆け巡り、多くの人々に感動を与えました。
「死ぬことを忘れた人々」が住むギリシャの離島
幸せに生きる人々として思い出すのは、幸せ過ぎて死ぬことを忘れた人々が住むといわれるギリシャの離島、イカリア島です。この島は、長寿研究者たちによって長寿人口が多い「ブルーゾーン」として指定される世界的に注目されている場所です(※)。
※ ナショナルジオグラフィック日本版サイト「インタビュー:健康な長寿の秘訣 」(2012年12月28日)
ドキュメンタリー映画『ハッピー・リトル・アイランド ―長寿で豊かなギリシャの島で―』は、そんなイカリア島で豊かに暮らす老人たちと、都会から移住した若者たちについての映画です。
イカリア島に暮らす老人の一人はこう言います。
「大富豪だって1人前の料理しか食べられない」
日本的に言えば「足るを知る」ということでしょう。以前のコラムで今、世界的に幸福度を高めることが注目されていることを書きました。何のために私たちは生き、働くのか? ムヒカさんやイカリア島の幸せに老いる達人たちから学べることは多いように思います。
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