偏差値の求め方。正しい計算方法は?自分でもできる?専門家に聞きました!
自分の学力レベルを知るための指標である偏差値。高校生にとっては非常に身近な指標ではあるが、偏差値をどう計算するのかについてはよく知らない人も多いはず。
そこで今回は「数学のお兄さん」横山明日希さんに正しい偏差値の計算方法を教えてもらおう!
目次
横山明日希さん

株式会社math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。
早稲田大学大学院数学応用数理専攻修了。
幼児から大人まで幅広く数学・算数の楽しさを伝える「数学のお兄さん」。
『笑う数学』(KADOKAWA)、『理数センスを鍛える・算数王パズル』(小学館)、『文系もハマる数学』(青春出版社)等。
偏差値の計算方法は複雑で難しい ?

※偏差値の求め方に関する疑問を解決しよう
まず結論から言ってしまうと、偏差値は「(自分の得点-平均点)÷標準偏差×10+50」という公式で求められる。そう聞いて、「なるほど、なるほど」と思った数学が得意な高校生ももちろんいるだろうが、「標準偏差?何それ?」となってしまう高校生も少なくないはずだ。
このように数学がしっかり理解できていない人にとっては、偏差値の計算方法は複雑で難しく思えてしまう。
というわけで、今回は「何それ?」と思ってしまった高校生にもわかりやすいよう、横山明日希さんに上の式を細かく段階分けして解説してもらった。
ここで出てくる話は高校数学で学ぶものですが、実はここで紹介する計算自体は中学までの数学で十分理解できるものなんです。
ですから、『まだ統計学はよくわからない』『そもそも数学は苦手』という人も、ぜひ一度偏差値の計算にチャレンジしてみましょう!」(横山さん)
偏差値を計算する方法は?
1. 平均点を求める
これは簡単。全員の得点の合計÷人数
という公式で求められる。
例を挙げてみよう。
<国語のテスト>
A | B | C | D | E |
55 | 60 | 70 | 60 | 65 |
<数学のテスト>
A | B | C | D | E |
25 | 95 | 40 | 90 | 60 |
上の2つのテストは点数のバラツキ方にかなり違いがあるが、5人の平均点はどちらも62点となる。
平均の計算は(55+60+70+60+65)÷5=62、(25+95+40+90+60)÷5=62
2. 平均点との差を求める
次に自分の得点から上で求めた平均点を引く。例えば、国語のBさんの場合は、
60-62=-2
数学のBさんの場合は
95-62=33
となる。
このバラツキを計算するためには、それぞれの平均点からの差を合計する必要がありますが、そのときマイナスの値とプラスの値が混在したまま単純に足してしまうと、マイナスとプラスが打ち消し合ってしまいます。
それではバラツキがわからないよ!ということで、次の『2乗した値を求める』というプロセスが必要になるんです」(横山さん)
3. 2乗した値を求める
国語のBさんの場合は、(-2)2=4
数学のBさんの場合は
332=1089
となる。
このように2乗するとマイナスの値もすべてプラスにできる。
これでマイナス問題はクリアできたわけだが、2乗する理由は実はもう1つある。
それだったら極端な数値にしたほうがバラツキがはっきりわかっていいよね!と捉えてもよいかと思います」(横山さん)
4. 分散を求める
分散とはデータのバラツキ度合いを示す値のこと。分散を求める計算式は
全員の平方数の合計÷人数
ちなみに上記の国語のテストの分散は
(49+4+64+4+9)÷5=26
数学のテストの分散は
(1369+1089+484+784+4)÷5=746
となる。
なるほど、こうすると数学のテストのほうがだいぶバラツキが大きいことがよくわかる!
人数で割らないと、100人受験したテストと10人受験したテストでは当然100人のほうがバラツキは大きくなってしまいます。
1人あたりの値に直せば母集団の規模の違いは問題ではなくなりますから」(横山さん)
5. 標準偏差を求める
標準偏差とは分散の平方根のこと。つまり
√分散の値
で計算できる。
というわけで国語のテストの標準偏差は
√26=5.10
数学のテストの標準偏差は
√746=27.31
となる。
ここで、「わかりやすくするためにいったん2乗したのに、なぜここでまたルートにするの?」と疑問に思う人もいるかも。
5.10と27.31のほうが比べやすい感じがするはずだ。
これが手に入れば、偏差値を導き出すまであと一歩です!」(横山さん)
6. 平均との差に10をかけて標準偏差で割る

※標準偏差について理解しよう
例えば、国語のBさんの場合は(60-62)×10÷5.10=-3.92
数学のBさんの場合は、
(95-62)×10÷27.31=12.08
となる。
ここで標準偏差で割ることの意味はなんなのだろう。
標準偏差が小さければ、5点、10点の差が大きな意味をもちますが、標準偏差が小さい場合は、同じ5点、10点の差でもそれほど大した差ではなかったりしますから」(横山さん)
これはつまり、標準偏差が小さい国語ではちょっとした点数の違いがより大きな意味をもち、標準偏差が大きい数学では、点数の差が持つ意味が総体的に小さくなっているということを意味している。
もう一つ、「なぜここで平均との差に10をかけるの?」と思った人もいるはず。
よりわかりやすくするため、テストの得点も0点~100点の範囲のことが多いですし、しいて言うなら『世界観をそろえる』ためのプロセスと考えてください」(横山さん)
7. 偏差値を求める
6. までできれば、もう偏差値の計算は終わったようなもの。あとは6. の数字に50を足すだけだ。
50を足す理由は、すでに説明したとおり、いつものテストと世界観をそろえるため。
国語のBさんの偏差値は
-3.92+50=46.08
数学のBさんの偏差値は
12.08+50=62.08
となる。
どうだろう、偏差値の計算方法とその仕組みがこれで理解できたのではないだろうか。
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学校や塾、あるいはメディアなどで簡単な偏差値が計算できる方法として、「50+(自分の得点-平均点)÷2」という標準偏差を使わない公式がかなり広く出回っている。
しかし、この計算方法はそもそも正しくないと横山さん。
「この公式を使うと、平均点との差が小さい場合に限り、たまたま正しい偏差値に近い値が出るというだけの話なんです。
平均点との差が大きい場合には誤差が大きくなりますから、実際に使うことはおすすめしません」(横山さん)
偏差値の計算方法がわかるとこんなメリットがある!

※偏差値の仕組みを知れば統計学に興味がわくかも
さて、ここまで説明してきて何なのだが、偏差値を高校生が自分で計算する機会は実際にはほとんどない。全員の得点の情報が必要なので、大規模なテストでは計算するための材料がそろわないからだ。
そもそも、偏差値を知る意味が大きい全国模試などでは、自分で計算しなくても教えてもらえる。
だから、ここで紹介した計算式を使うとすれば、友だち同士で点数を教え合って、試しに仲間内の偏差値を出してみるという場合くらいかもしれない。
それでも、偏差値の仕組みを知ることには大きな意味があると横山さん。
ただ、数値の意味を正しく理解していないと、比較しても意味のない偏差値同士を比較したり、偏差値の数値やその変化がもつ意味を過大評価・過小評価したりしがちです。
身近な数値だからこそ、何のためにどうやって計算した数値なのかを知っておくことが大切なのです」(横山さん)
偏差値が示すのはあくまでその母集団の中での位置づけに過ぎないからだ。
また、同じ「偏差値10アップ」を目指すにしても、偏差値40からの10アップと、偏差値60からの10アップでは、難易度はかなり違う。
この意味合いを正しく理解できていれば、受験勉強の計画などに反映させることも可能。
そして、数学の力を伸ばしたい高校生にとっては、身近で学びやすいテーマでもある。
統計学の基本を学ぶためにも、偏差値の計算は有効なのだ。
取材・文/伊藤敬太郎 監修/横山明日希 構成/寺崎彩乃(本誌)
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