【リーダー育成-第2回】「仲間との出会いが財産」。早稲田大学「大隈塾」で得たもの
前回は日本の大学に「リーダーを育てよう」という動きが広がりつつあることと、その背景を紹介した。連載2回めとなる今回からは、今日本の大学で行われている注目のリーダー育成プログラムを紹介しよう。
まず最初は、リーダー育成の先駆けである早稲田大学の「大隈塾」。2002年、卒業生でジャーナリストの田原総一朗さんが中心となって「21世紀日本の構想」という授業がスタートした。目的は「政治・経済に限らず、あらゆる分野でのリーダーを育てること」だという。
2008年早稲田大学商学部を卒業した小田絢美さん(27歳)は、政・財界のリーダーの話を聞けることや、田原総一朗さんにあこがれ、即志願。財界、政界のリーダーの話を聞き、ディスカッションする授業は毎回とても刺激的だった。「昨日まで世の中のことを何も知らない高校生だった自分が、一気に政治・経済の仕組みについて理解を深めていきました」と当時を振り返る。
小田さんが一番驚き刺激を受けたのが、18歳、19歳の同級生の多くが、社会へのさまざまな問題意識をもち、日本をよくしたいと本気で考え、自分の考えをもち、意見を言い合っていたこと。「しだいに私自身も、どう生きていくのか、自分の存在意義は何なのかと考えるようになりました」と言う。
この授業を受講した学生を対象に、「大隈塾演習:intelligenceの技法」というゼミ形式の授業も開講されており、さらに学びを深めるチャンスもある。小田さんは迷わずこのゼミに入った。ここでもジャーナリストや新聞記者など、多彩な講師陣の講義を受け、社会の様々な事象についてディスカッションした。
「大隈塾で出会った仲間こそ一番の財産です」と言う小田さん。卒業後も、ゼミの仲間との親交は続き、2011年からは大隈塾の卒業生が中心となって定期的に勉強会を開催しており、日本をリードする経営者を講師として招いたり、それぞれの友人でユニークな活動をしている人を呼んでディスカッションを行ったりしている。2012年には、この活動を社団法人化し、ますます活発に交流の輪を広げている。
「今でも同期とは月1回のペースで会っています。大隈塾の仲間は特別な存在。会うと前向きな気持ちになり、切磋琢磨できる仲間がいることのありがたさを実感します」。
小田さんは現在、人材業界で営業職として働いている。クライアントは主に会社の経営者。
「経営者マインドを理解したい、経営者の役に立ちたいと考え、この仕事を選びました。経営者に興味があるのは、やはり大隈塾で学んだ影響でしょうね。企業のリーダーとして活躍する人の決断力や行動力を尊敬しますし、新しい価値を創造していこうとするエネルギーがあふれる現場にかかわれることがやりがいです」と言う。