高校までの復習もできる大学の「学習支援センター」

大学の授業は、当然ながら高校卒業レベルの基礎学力があることを前提に行われる。しかし、大学進学率の上昇、AO・推薦入試枠の拡大、入試科目数の削減の影響なども受け、多様な学生が入学するようになった。専攻する学科で必要とする科目を履修しないまま入学する学生も増加。大学の授業についていけずに中退してしまうケースも発生しているという。

 

そこで、10年ほど前から大学で設置が進められてきたのが学習支援センター。チューター(補佐的な指導員)が、基礎学力に不安がある学生に対して学習のサポートをする施設で、必要に応じて高校レベル、ときには中学レベルにまでさかのぼって指導をすることもある。現在では全国の4割程度の大学が設けているといわれている。

 

2001年度に他大学に先駆けて立ち上げられた神奈川工科大学の「基礎教育支援センター」は、元高校の先生がチューターを務め、数学・物理・化学・英語などの補習を支援している。年間の利用者数はのべ3000~5000人台で、1年生の利用が多数を占めるという。

 

「利用している学生に関してはその後のGPA(成績評価値の平均)が安定する傾向がありますね。また、退学率に関してもセンター立ち上げ当時と比べて低下しています」(同大学教育開発センター/中込寛さん)

 

高校時代に履修していない科目などは「勉強の仕方がわかっていない」学生も多いという。逆にいえば、その段階からしっかりやり直せば十分追いつくことは可能なのだ。ただし、ここに来て新たな問題も浮上している。

 

「あくまで学生が自分の意志で利用する施設なので、本当に来てほしい学生が自分からは来ないという問題があります。この点に関しては来年度以降、授業科目との連携などを通して改善を図るつもりです」(中込さん)

 

大学によっては上級生がチューターを務めるところもあり、センターが学内の友達や仲間を増やす場となっているケースも。キャンパス内での「居場所」としての機能も注目されるようになっている。

 

もちろん高校時代にしっかり勉強しておくことに越したことはないが、勉強についていけなくなったときには学習支援センターが頼りになることも頭の片隅に入れておこう。