『史記』「四面楚歌(しめんそか)」を スタディサプリ講師がわかりやすく解説&現代語訳!

中国の歴史書『史記』には、現代でもよく使われるような有名な故事成語がたくさん記されている。

そこで今回は、『史記』のなかでも特に有名な「四面楚歌」について、スタディサプリの古文・漢文講師 岡本梨奈先生に解説してもらった。
【今回教えてくれたのは…】
枕草子『中納言参り給ひて(ちゅうなごんまいりたまひて)』を スタディサプリ講師がわかりやすく解説&現代語訳!
岡本梨奈先生
古文・漢文講師
スタディサプリの古文・漢文すべての講座を担当。
自身が受験時代に、それまで苦手だった古文を克服して一番の得点源の科目に変えられたからこそ伝えられる「わかりやすい解説」で、全国から感動・感謝の声が続出。

著書に『岡本梨奈の1冊読むだけで古文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『岡本梨奈の1冊読むだけで漢文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『古文ポラリス[1基礎レベル][2標準レベル]』(以上、KADOKAWA)、『古文単語キャラ図鑑』(新星出版社)などがある。

1分でわかる! 「四面楚歌」ってどんな話?

『史記』「四面楚歌(しめんそか)」を スタディサプリ講師がわかりやすく解説&現代語訳!
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【解説】
『史記』は、中国・前漢の武帝の時代に、司馬遷(しばせん)によって編纂(へんさん)された、中国史上最高傑作といわれる歴史書です。

全130巻の中の『項羽本紀』に収録されている『四面楚歌(しめんそか)』は、「敵や反対勢力に囲まれて孤立していること」を表す言葉として、現代の日本でもよく使われています。

『四面楚歌』とは、沛公(劉邦)が率いる漢軍に、項王(項羽)の軍が追いつめられ、砦(とりで)を造って立てこもったときの話。

兵士が減り、食糧も尽きて、漢軍に何重にも囲まれてしまったある夜、漢軍がみんなで楚の歌を歌っているのを聞いた項王は、自分の故郷である楚の国の兵士まで漢軍に取り込まれてしまったのかと、とても驚きました。

酒を飲みながら漢詩を作って歌い、もうどうにもできないと言って、側近と共にに泣いたのです。

「四面楚歌」の白文&現代語訳を見てみよう。

項王軍壁垓下。
項王の軍は、垓下に砦を造って立てこもった。
兵少食尽。
兵士も少なく、食糧も尽きた。
漢軍及諸侯兵、囲数重。
漢軍〔=沛公の率いる軍〕および諸侯の兵が、これを何重にも囲んだ。
夜聞漢軍四面皆楚歌、項王乃大驚曰、
夜、漢軍が四方で皆、楚の歌を歌っているのを(項王が)聞き、項王はそこでとても驚いて言うには、
「漢皆得楚
「漢は皆すでに楚の地も取り込んだのか。
是何楚人之多也。」
これはなんと楚の国の兵が多いことよ」と。
項王則夜起飲帳中。
項王は、夜起き出して、本陣で飲んだ。
美人、名虞。
女官がいて、名前は虞(といった)。
常幸従。
いつも寵愛(ちょうあい)されて一緒にいた。
駿馬、名騅。
名馬もいて、名前は騅(といった)。
常騎之。
(項王は)常にこれに乗った。
於是項王乃悲歌忼慨、自為詩曰、
そこで項王は悲しく歌い、激しく心をたかぶらせ、自分で詩を作って言うには、
力抜山気蓋世
力は山を引き抜き、気力は天下を覆いつくす。
時不利騅不逝
時勢は有利ではなく、騅も進まない。
騅不逝可奈何
騅が進まないのをどのようにしようか、どうにもできない。
奈若何
虞よ、虞よ、お前をどうしようか、いや、どうにもできない。
歌数闋、美人和之。
歌うこと数回、女官もこの歌に合わせて歌う。
項王泣数行下。
項王は涙を幾筋か流した。
左右皆泣、莫能仰視。
側近は皆泣いて、(項王を)仰ぎ見ることができる者はいなかった 。
/『史記』より

「四面楚歌」のポイントをチェック!

Point1:指示語「之」

「之」は指示語です。

指示語が出てきたら、何を指しているのか、必ず考えながら読みましょう。

この場合は、文頭の「項王軍」を指して、「項王の軍を何重にも囲んだ」となります。

Point2:「已」の読み

「已」は読みの問題によく出ます。

「漢皆」が主語、「得」が動詞なので、間にある「已」は副詞の読みになります。

副詞で「已」が出てきたときは「すでニ」と読みます。動詞の場合は「やム」と読んだりしますが、漢文では副詞の読み方を問われることが多いので、覚えておきましょう。

Point3:「乎」の役割

「乎」が文末に出てきたら、疑問、反語、詠嘆など、いろいろな役割をします。

ここでは「か」と読み、疑問の役割です。ちなみに、「かな」と読むときは、詠嘆になります。

試験の問題文では、ふりがながふられている場合が多いので、「かな」の場合は読み方で「詠嘆」だと判断できますね。


Point4:返読文字「有」

「有」は返読文字です。

普通は主語が上にくるのですが、「有」のときは主語が下にきます。

そのため、ここでは「美人」が主語になります。

Point5:「於是」の読み

「於是」は、読みや意味をよく問われるので、しっかり覚えておきましょう。

「ここにおいて」と読み、「そこで」と訳します。

Point6:置き字「兮」

文中の漢詩では、置き字「兮」がよく使われています。

「兮」は、句調を整える働きですから、訳す必要はありません。

Point7:「奈若何」=どのようにしようか、どうにもできない

文末の「奈何」は基本「いかんせん」と読み、「どうしようか」という疑問と、「どうしようか、いや、どうしようもない(=どうにもできない)という反語の働きがあり、どちらになるかは文脈で判断をする必要があります。

そして、この「奈」と「何」の間に文字がある場合、それは目的語となります。

「奈A何」=「Aをどうしようか(いや、どうしようもできない)」です。

よって、「奈若何」の「若」は目的語で、「なんぢ」と読み「あなた」の意味です。

ここでの「若」は「虞」を指します。「虞よ、あなたをどうしようか、いや、どうにもできない」ということですね。


●単語の意味
・壁…砦を造って立てこもる
・垓下…地名
・漢軍…沛公(劉邦)の率いる軍
・楚…項王(項羽)の出身地
・帳中…ここでは「本陣」の意味
・美人…女官の位のひとつ
・幸…寵愛する ※ここでは「幸せられ」と受身で読み、「寵愛される」の意味。
・駿馬…名馬
・忼慨…激しく心をたかぶらせる
・時…時勢
・逝…進む
・数闋…数回
・和…合わせて歌う

『四面楚歌』テストによく出る問題を確認!

Q1.
「左右」の意味を答えよ。
A1.
側近(近臣)
左を見ても、右を見ても、いつもいる人、と考えて、側近と覚えましょう。
Q2.
「能」の読み方を、送り仮名も含めて現代仮名遣いで答えよ。
A2.
よく

意味は「できる」です。

「不」がついた「不能」は「あたはず」と読み、「できない」の意味。こちらも入試頻出です。
Q3.
「是何楚人之多也。」を現代語訳せよ。
A3.
これはなんと楚の国の人[=兵]が多いことよ。

この「何~也」は、「なんぞ~や」と読み、「なんと~ではないか」という詠嘆を表します。

ちなみに、文末に「~何也」とあれば、「~(は)なんぞや」と読み、「~はどうしてか」という疑問を表します。


「也」の上に疑問形(ここでは「何」)があり、一緒に使っている場合は、「や」または「か」と読みます。「なり」と読まないように気をつけましょう。
Q4.
「奈若何」をすべて歴史的仮名遣いで書き下し、現代語訳せよ。
A4.
〈書き下し文〉 なんぢをいかんせん(と)
〈現代語訳〉 お前をどうしようか、いや、どうにもできない。

「何」が文末で使われているときは、上を一とおり見て、「奈」「若」「如」などが使われていないか探しましょう。

ここでは「奈~何」で「いかんせん」と読みます。間に入っている「若」は目的語で、人称代名詞になるので、「なんぢ」と読み、意味は「お前」です。

「奈~何」は疑問と反語の両方の意味があるので、文脈から考えて判断します。

この場合、周りをすべて敵に囲まれてしまい、どうしようもできない絶望的な状況なので、「お前をどうしようか、いや、どうにもできない」と反語で訳します。

「四面楚歌」の意味をわかりやすく解説

四面楚歌の意味とは

「四面楚歌」では、項王が敵に四方を何重にも囲まれたときに、その敵がみんなで項王の故郷である楚の国の歌を歌っているのを聞き、楚の国の兵士が多いことに驚きます。

自分の故郷の人々すらも敵になってしまった孤立無援の状態を悲しんだことから、「四面すべてが楚の歌を歌う」ことが「自分の周りがすべて敵。孤立無援の状態であること」という意味の故事成語になりました。


抜山蓋世(ばつざんがいせい)の意味とは
また、漢詩のなかにある「抜山蓋世(ばつざんがいせい)」は、「気力がきわめて充実していること」という意味の故事成語です。



取材・文/やまだ みちこ 監修/岡本 梨奈 イラスト/カワモト トモカ 構成/黒川 安弥


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