枕草子『中納言参り給ひて』をスタサプ講師がわかりやすく解説&現代語訳!

枕草子『中納言参り給ひて(ちゅうなごんまゐりたまひて)』をスタディサプリ講師がわかりやすく解説&現代語訳!

『枕草子』といえば、冒頭の『春はあけぼの』が有名だけど、約300の章段があるので、古文の勉強でおさえておきたい単語や文法がたくさんつまっている。

そこで今回は、『枕草子』の中から『中納言参り給ひて』について、スタディサプリの古文・漢文講師 岡本梨奈先生に解説してもらった。
【今回教えてくれたのは…】
枕草子『中納言参り給ひて(ちゅうなごんまいりたまひて)』を スタディサプリ講師がわかりやすく解説&現代語訳!
岡本梨奈先生
古文・漢文講師
スタディサプリの古文・漢文すべての講座を担当。

自身が受験時代に、それまで苦手だった古文を克服して一番の得点源の科目に変えられたからこそ伝えられる「わかりやすい解説」で、全国から感動・感謝の声が続出。

著書に『岡本梨奈の1冊読むだけで古文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『岡本梨奈の1冊読むだけで漢文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『古文ポラリス[1基礎レベル][2標準レベル]』(以上、KADOKAWA)、『古文単語キャラ図鑑』(新星出版社)などがある。

『枕草子』とは?

『枕草子』とは、平安時代中期に清少納言が執筆した随筆(=現代でいうエッセイ)。

清少納言は、中宮(=皇后)である定子(藤原道隆の娘)に仕えていた女房(=宮中などに仕える女官)です。

『枕草子』は「をかしの文学」といわれています。ちなみに「あはれの文学」といわれているのは『源氏物語』です。

(注)「をかし」=明るい趣、「あはれ」=しみじみとした趣

『枕草子』は、約300段から成り、次の3種類に分類されます。
●「類聚(るいじゅう)段」:「うつくしきもの」「ねたきもの」などの「ものづくし」や「川は」などのテーマに沿って書いたもの
●「日記段」:宮廷生活を回想した日記的なもの
●「随想(ずいそう)段」:自然描写や人間批評など、エッセイ的なもの
大学入試では「日記段」から出題されやすい傾向があります。

「日記段」は、宮廷生活で清少納言が言ったことが周りからほめられた、といった自慢話のようなものが多いので、覚えておくと、意味を解釈しやすいと思います。

『枕草子』の作者・清少納言とは?

枕草子『中納言参り給ひて』をスタサプ講師がわかりやすく解説&現代語訳!

※枕草子『中納言参り給ひて』の藤原氏と清少納言の関係図


清少納言は、中宮定子に仕えた女房で、エリート歌人家系に生まれました。

父は、後撰(ごせん)和歌集の撰者「梨壺(なしつぼ)の五人」の一人である、清原元輔(きよはらの もとすけ)。

曾祖父の清原深養父(きよはらの ふかやぶ)も歌人で、曾祖父、父、清少納言本人の歌も、百人一首に選ばれています。


1分でわかる! 枕草子『中納言参り給ひて』ってどんな話?

枕草子『中納言参り給ひて(ちゅうなごんまいりたまひて)』を スタディサプリ講師がわかりやすく解説&現代語訳!
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【解説】

『枕草子』の日記段、宮廷生活でのエピソード。

中納言(藤原隆家)が、姉の中宮定子に贈る扇の材料にする素晴らしい骨を手に入れた、と自慢しに来た。

とにかくめずらしい骨だというので、「それはくらげの骨じゃないの」と清少納言が機転を利かせて言うと、「そのセリフもらった」と中納言が笑った。

聞き苦しいだろうけど、周りの女房たちが書けというので、仕方なく書いた、という清少納言の自慢話。

枕草子『中納言参り給ひて』の登場人物は?

●中納言(藤原隆家)
●中宮定子
●清少納言
●周りの女房たち

『枕草子』の「日記段」では、主語が書かれていないことが多くあります。
★「宮廷生活」の話では、主語を把握するために敬語に注目!★

・最高敬語や二重尊敬→主語は「中宮定子」か「一条天皇(中宮定子の夫)」が多いです。

・尊敬語1つ→主語は中宮定子の兄弟など、中宮定子と一条天皇以外の偉い人が多いです。

・『中納言参り給ひて』に登場する「中納言」は中宮定子の弟です。よって、尊敬語1つの箇所の主語が「中納言」と考えられます。

・尊敬語なし→主語は作者である「清少納言」か、清少納言の同僚の女房が多いです。

枕草子『中納言参り給ひて』の原文&現代語訳を読んでみよう。

は下記にPoint記載
中納言参り給ひて、御扇奉らせ給ふに、

中納言[=藤原隆家]が参上なさって、(中宮定子様に)扇を差し上げなさるときに、
「隆家こそいみじき骨は得て侍れ。それを、張らせて参らせむとするに、おぼろけの紙はえ張るまじければ、求め侍るなり。」と申し給ふ。

「隆家[=自分のこと]は素晴らしい(扇の)骨を手に入れております。それに、(紙を)張らせて(中宮様に)差し上げようと思うのですが、ありふれた紙は張ることができませんので、(それ相応の紙を)探しています。」と申し上げなさる。
「いかやうにかある。」と問ひ聞こえさせ給へば、

(中宮様が)「(その骨は)どのような物か。」とお尋ね申し上げなさると、
「すべていみじう侍り。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々が申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、言高くのたまへば、

(中納言は)「総じてたいそう素晴らしいのです。『今までまったく見たことのない骨の様子だ』と人々が申す。本当にこれほどの(骨)は見たことがない。」と声高々におっしゃるので、
「さては、扇のにはあらで、くらげのななり。」と聞こゆれば

(私[=清少納言]が)「それでは、扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)であるようだ。」と申し上げると、
「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑ひ給ふ。

(中納言は)「これは隆家[=自分]が言ったことにしてしまおう。」とおっしゃって、笑いなさる。 
かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、「一つな落としそ。」と言へば、いかがはせむ。

このような(自慢めいた)ことは、聞き苦しいことの中に入れてしまうべきであるが、(周りの女房たちが)「一つ(の話)も書き漏らしてくれるな。」と(私に)言うので、どうしようもない(ので書き記しておきます)。
/『枕草子』より

枕草子『中納言参り給ひて』のポイントをチェック!

Point1:奉らせ給ふの品詞分解のしかた

「奉らせ給ふ」は「差し上げなさる」と訳しますが、2通りの品詞分解が考えられます。

1つめは「奉ら」「せ」「給ふ」。「奉る」は、謙譲語の本動詞で「差し上げる」という意味。

その後を尊敬語の助動詞「せ」と尊敬語の補助動詞「給ふ」に分けると、意味は通じるのですが、中納言に対して二重尊敬を使うことになります。

しかし、作者にとって二重尊敬を使いたいのは中宮定子です。

そこで、この場合は「奉る」よりも敬意が強い謙譲語の本動詞「奉らす」を使い、「奉らせ」「給ふ」の2つに品詞分解します。

「奉らせ」は中宮定子に対する謙譲語、中納言に対しては「給ふ」という尊敬語を1つだけ使っていると解釈します。


Point2:おぼろけ=ふつう、平凡、並ひと通り

「おぼろけ」は形容動詞「おぼろけなり」の語幹です。

「おぼろけなり」は重要単語で、「ふつう、平凡、並ひと通り」という意味でよく使われています。

一方で、「おぼろけならず」もよく出てきます。

ふつうじゃない、ということは「格別だ」という意味で、本来は「おぼろけならず」の形で使われていますが、「おぼろけなり」だけで「格別だ」という意味で使う例もあるので要注意。

「おぼろけ」は、「ふつうだ」と「格別だ」の逆の意味を持っている変わった単語なので、どちらの意味で使われているか考えるようにしましょう。

今回は、「え張るまじければ」(張ることができない)と言っているので、「ありふれた、ふつうの紙」と訳します。


Point3:さらにまだ見ぬ=まったく見たことがない

「さらに」は、「付け加えて」という意味ではありません。

その後にある「ぬ」と一緒に使っているのがポイント。

「ぬ」の後に「骨」があるので、「ぬ+体言」は打ち消し。

「さらに+打ち消し」で全否定となるため、「全然・まったく・けっして(~ない)」と訳します。


Point4:扇のにはあらで、くらげのななり=扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)であるようだ

「にはあらで」の「で」は、「あら」という未然形に付いているので打ち消し。

「ではなくて」と訳します。

「くらげのな」の「な」を「名前」と解釈すると「くらげの名前」となって意味がわかりませんよね。

ここでの「な」は断定、「なり」は伝聞推定で、「であるらしい、であるようだ」となります。

誰も見たことがないめずらしい骨だ、と中納言が言うので、それならば、それはくらげの骨ではないか、と清少納言が機転を利かせて言った。

くらげには骨がないので、誰も見たことがないというしゃれですね。


Point5:聞こゆれば=申し上げると

「聞こゆれ」は大事な敬語です。

終止形は「聞こゆ」。

敬語の本動詞「聞こゆ」は、「申し上げる」という意味の謙譲語です。


Point6:かたはらいたし=見苦しい、気の毒だ、恥ずかしい

「かたはらいたし」は重要単語です。

「傍ら痛し」と漢字にするとわかりやすいでしょう。

「傍らにいるのが痛い」つまり「そばにいたくない」と覚えておきます。

そばにいたくない人はどんな人か?「みっともない、見苦しい」人は見ていたくない。

さらに、そういう人を見ると「気の毒だな」と思います。

また、自分の立場だったら「恥ずかしい」ので、この3つの意味があると覚えておきましょう。

ここでは、自慢めいた話なので「聞き苦しい」と訳します。


Point7:一つな落としそ=一つも落とすな

「な~そ」は、「~するな」という禁止の意味になる重要な文法です。

清少納言としては、こういう話は、見苦しいような、聞き苦しいような話で、わざわざ書き残すようなものではないのだけれど、周りの女房たちが「一つも書き漏らさず、ちゃんと書いてよ」と言うので、書かざるをえないんですよね、と言い訳をしているのです。


枕草子の日記段の読み方

『枕草子』の日記段では、うまいことを言ったり、上手な和歌が詠めたり、機転の利くことを言っていて、そこに尊敬語が使われていなければ、ほとんど作者である清少納言のセリフです。

それを周りの人がほめる、でもたいしたことじゃないんだけど……、といったパターンの自慢話が多いのが特徴です。

それを知っていると、主語がなくても、誰のセリフか想像しやすく、おもしろく読めると思います。

取材・文/やまだ みちこ 監修/岡本 梨奈 イラスト/カワモト トモカ 構成/黒川 安弥

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