「自分のなかに『核』があれば大丈夫」声優/舞台女優 朴 璐美さんから高校生へ応援メッセージ

声優に、舞台女優に、多彩な才能で数々の話題作に出演している朴 璐美さん。

2022年10月21日公開の映画『ぼくらのよあけ』では、人工知能・二月の黎明号という非常に難しい役を演じたことで話題に!

今回は、舞台・アニメ・吹き替え・ナレーション、プロデュースなど、幅広く活躍する朴 璐美さんにインタビュー。

声優や俳優などの表現者を目指している高校生はもちろん、さまざまな夢に向かって悩んだり迷ったりしている高校生にも応援メッセージをもらったよ。

プロフィール
朴 璐美(ぱく・ろみ)


桐朋学園芸術短期大学演劇科卒業、演劇集団円を経て、2017年11月に新たな活動基盤としてLALを設立。
舞台・アニメ・吹き替え・ナレーション、プロデュースなど、その活躍は多岐にわたる。

アニメ代表作は『鋼の錬金術師』エドワード・エルリック役、『∀ガンダム』ロラン・セアック役、『進撃の巨人』ハンジ・ゾエ役、『NANA』大崎ナナ役、「BLEACH」日番谷冬獅郎役 ほか多数。

https://fan.pia.jp/romi_park/

声優のお仕事って?

「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」

本格SFアニメ映画『ぼくらのよあけ』は、朴さんが演じる無人探査機の人工知能・二月の黎明号が、杉咲 花さんが演じる小学4年生の沢渡悠真に、宇宙へ帰る手伝いをしてほしいと語りかけるところから始まる。

Ⓒ今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

感情のない人工知能が変わっていく様子をどう表現するか、が腕の見せどころ

主人公の声色とのバランスを意識しつつ人工知能らしさを表現

今回演じた「二月の黎明号」は1万2000年という歳月をかけて地球に来た無人惑星探査機の人工知能という未知なる存在で、本当にとんでもなく難しい役どころでした。

最初はナナコ(沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット。二月の黎明号はナナコの身体を使って悠真に語りかけた)のようにラフな感じにしようと思いましたが、悠真の声の音色とのバランスなども考えて演じています。

人工知能らしさがでるよう、パソコンを介して話しているような感じを意識しました。

Ⓒ今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

作品を通して高校生にも「好奇心の大切さ」を感じてほしい

作中では感情をもつはずのない人工知能が、だんだんと孤独を自覚したり、希望をもったりしていきます。

二月の黎明号の孤独感、外界へのあこがれ、知りたい、伝えたいという知的欲求、帰りたいという帰省本能を伝えられるよう、自分のなかでこれらの感情をもって演じました。

作品のメッセージの一つでもあるのですが、知りたいという好奇心に勝てるものは何もないのかなと思っています。

高校生はとても好奇心旺盛な時期なので、その好奇心を大切にしてほしいです。

自分が知りたいと思ったことを知ろうとする。

この作品を観ると、好奇心の大切さが感じられると思います。

声優になるためには「夢を夢と思わないこと」が一番

二月の黎明号のように難しい役どころから人気アニメの重要キャラクターもこなす朴さんは、声優を目指す高校生にとってもあこがれの存在。

「なぜお芝居がしたいのか」をじっくり考えて

 (声優・俳優を目指す高校生に向けて)声優・俳優になりたいなら、夢を夢と思わないことが一番。

役者になりたい、声優になりたい、と思っているかもしれませんけれど、そんなことを思わないほうがいい。

思ってしまうと、進路をどうしよう、演劇や声優の学校に進学するのか、芸能事務所に入らないといけないのか、悩んでしまいがちです。
それよりも、自分はなぜお芝居がしたいのか、なぜお芝居をしているときに楽しいと思うのか、じっくりと考えてみてください。

とにかくお芝居が好きだ、もの作りが好きだ、エンタメが好きだ、という気持ちを大事にして、今は自分のなかに確固たる核を作っていけばいいのではないかと思います。

Ⓒ今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

核をしっかりもてば、はみ出しても大丈夫

世間からはみ出してはいけない、みんなが右を向いているから自分も右を向く。

そういう時代の風潮みたいなものがあるかもしれないけれど、この業界は、はみ出してナンボ。

いっぱいはみ出してください。

自分が何をしたいのか、どんな作品を作りたいのか、自分のなかにしっかりと核をもてばやっていけると思います。

もの作りは楽しいだけではなく、苦しい思いをしたなかでの楽しさなので、真剣に生きられる場所を自分で作っていってほしいですね。

声優や俳優は人と比べられる職業だと思われがちですが、闘うべき相手は自分の内にしかいませんから。

Ⓒ今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

どんな高校生だった?

高校時代、「もの作りの楽しさ」を感じたことが出発点

高校3年間はひたすら演劇にのめりこむ

高校では演劇部に所属していましたが、将来、女優や声優になりたいとかまったく考えていませんでした。

高校時代は、役を演じるよりも、照明の色を作ったり、みんなで演出を考えたり、「お芝居を作る」ということがとてもおもしろかったんですね。

もの作りの楽しさを感じたことが最初の出発点。

高校3年間は、ひたすら演劇にのめり込んでいました。

誰かに評価してもらいたいわけでも、演劇を仕事にしたいと考えていたわけでもなく、純粋に好きだからお芝居をやっていた。

そういう何かに没頭する時間をもてたということは、私にとってとても有意義だったと思っています」

大学附属高校でも「外に出たい」気持ちで外部進学を選択

私が通っていた高校は女子大学の附属高校で、内部進学する子が多かったんです。

高校3年生の秋、友達がみんな内部進学を決めていることを知って、進路について何も考えていなかった私はがく然としました。

でも、外へ出たい、女子校の次は共学の大学へ行きたいという気持ちが強くて、演劇科のある短期大学に進学。

国語1科目と実技だけで受験できたからというのが大きかったです(笑)。

進学後には、演劇ではなく恋愛にのめり込んでいました(笑)。

演劇も恋愛もそうですけど、私はなんでもかんでもマルチにできるタイプではないので、好奇心をもって一つひとつのことに真剣にのめり込んでいった経験が、今につながっているのではないかと思います。

朴 璐美さんから高校生へメッセージ

最後に、進路に悩む高校生のみんなへメッセージをもらったよ!

自分の心が動く場所へ行って、自分を突きつめることが一番の近道

大学や専門学校にはさまざまな学部・学科があり、今の高校生は選択肢が多くて選ぶのが大変だと思います。

将来どんなことをやりたいのか、どんな目標に向かっているのか、自分のなかに核を作ってください。

誰かに敷いてもらったレールとか、この学校に行っておけばいいでしょと安易に考えて進んだ道は、決して自分の宝にはなりません。

たとえ反対されようと、どんなにほかの人とは違った道だろうと、自分の心がちゃんと動く場所へ行って、自分というものを突きつめて打ち出していくことが、夢をかなえる一番の近道なのではないでしょうか。

高校生時代=失敗してもいい特権をもっている時期、思いっきり失敗を

受験や進路で結果を出さなければいけないとプレッシャーを感じている子も多いと思いますが、自分のなかに確固たる核をもって頑張れば、結果は後からついてきます。

みなさんは失敗をし続けてもいい特権をもっている時期なのだから、思いっきり失敗してほしいですね。

自分で痛い思いをして、これはやっちゃいけなかったなと学習しながら、目指す道を進んでいってほしいと思います。

映画情報『ぼくらのよあけ』



10⽉21⽇(⾦)全国公開

原作:今井哲也「ぼくらのよあけ」(講談社「⽉刊アフタヌーン」刊)
監督:⿊川智之

キャスト:杉咲 花、悠木 碧、藤原夏海、岡本信彦、水瀬いのり、戸松 遥、花澤香菜、細谷佳正、津田健次郎、横澤夏子、朴 璐美

「⽉刊アフタヌーン」(講談社刊)にて連載され⽇本で最も⻑い歴史を誇るSF賞である星雲賞候補にもなった、今井哲也の傑作SFジュブナイル漫画「ぼくらのよあけ」の劇場アニメ化。2022年10⽉21⽇に全国公開となった。
 
公式サイト
https://bokuranoyoake.com/