緊張して眠れないときも大丈夫! 眠くなる方法

試験前や部活の試合前夜など、「早く寝なきゃ!」というときに限って、なかなか寝つけないことってない?

スタディサプリ進路が、全国の高校生206人にアンケート調査を行ったところ、「寝つきは良いほうだと思いますか?」という質問に、「はい」と答えた人は64.6%、「いいえ」と答えた人は35.4%だったが、「眠れないことはありますか?」という質問には63.1%の人が「はい」と答えていた。

普段は寝つきが良くても、3分の2近くの人が何かあると眠れなくなるみたい。

そこで、みんなが眠れないときの自分なりの解決方法としてやっていることに対して、睡眠医療の専門家・遠藤拓郞先生にチェックしてもらい、眠くなる方法について教えてもらった。

【今回教えてくれたのは】
緊張して眠れないときも大丈夫! 眠くなる方法
遠藤拓郞先生
睡眠学会認定医師・日本精神神経学会 精神科専門医
慶應義塾大学 医学部 特任教授
東京慈恵会医科大学卒業 医学博士
スリープクリニックを調布・銀座・青山・札幌で開院し、現在は調布院長を務める。
祖父は小説『楡家の人びと』のモデルとなった青山脳病院で不眠症の治療を始め、父は時差ぼけの研究を行った。
祖父の代から3代で、90年以上、睡眠研究を続ける睡眠医療の専門家。
著書『合格を勝ち取る睡眠法』(PHP新書)、『睡眠はコントロールできる』(メディアファクトリー新書)など多数。
監修を手がけた睡眠のための音楽CD『DREAMS~快眠CD』は、日本ゴールドディスク大賞 インストゥルメンタル アルバム・オブ・ザ・イヤー受賞。
https://www.sleepmedicine-tokyo.com/

みんなが眠れないことがあるのはどんなとき?

アンケート結果では「次の日に何かある」「悩みごとがある」など、「何かを考えてしまって寝付けない」というケースが上位を占めました。



【眠れない時はどんな時?】
次の日に大切なことがあるとき 23人
次の日に楽しみなことがあるとき 20人
考えごとをしたり、悩みごとがあるとき 20人
試験の前夜 14人
昼寝をしすぎたとき 19人
スマホをいじりすぎた後 11人
あまり疲れていないとき 8人
前の日に寝過ぎたとき 8人
失敗してしまったとき 4人
緊張しているとき 4人
疲れすぎたとき 4人
嫌なことがあったとき 3人
ストレスがたまっているとき 2人
※回答130人(複数回答あり)

何も考えない状態を作るには「単調な五感の刺激」が効果的

「人間には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚という5つの感覚があります。

何かを見たり、聞いたり、においを嗅いだり、味わったり、触ったりする行為は、五感を刺激することになり、すべて睡眠の邪魔になります。

眠るときに、部屋を暗くしたり、聞こえてくる音を小さくするのは、五感の刺激を減らして寝つきを良くするために必要なことなのです。
しかし、真っ暗で無音の状態だと、逆に眠れないという人もいます。

その原因は、五感の刺激がなくなることで、自分の記憶の扉を開けてしまうから。五感の刺激が一切ないと、自分の脳からいろいろな記憶を思い出し、不安になったり、楽しくなったりして、それが脳を興奮させて眠れなくしてしまうのです。

よく音楽を聴きながらだと眠れるという人がいます。音楽を聴くと聴覚を刺激してしまうのに、なぜ眠れるのか?

例えば、夏、エアコンや扇風機をかけたまま寝ても、音が気になって眠れない、ということは少ないと思います。

また、臭いにおいのトイレに入ったとき、最初は臭いと思うけど、そのまま3分間くらいトイレにいると、いつの間にか臭みが消えていますよね。
これらは『馴化(じゅんか)』という現象で、同じ五感の刺激がずっと続くと、人間はその刺激を感じなくなります。

単調な刺激は、ずっと続くと消えてしまうので、注意して聞かないとエアコンや扇風機の音が耳に入らなくなったり、臭いトイレのにおいが気にならなくなるのです。

好きな音楽を聴くと、五感が刺激されるため、記憶の扉が開いて脳を興奮させるのを防ぐことができます。

さらに、その音楽が単調だったり、心地良い刺激になると、五感の刺激自体が消えるから、何も考えない真っ白な状態で、いつの間にか眠れるようになるのです」

みんなが眠れないときの解決方法は?

「眠れないことがある」と回答した130人のうち、半数に近い61人が「自分なりの解決方法がある」と答え、その大半の53人が「その解決方法は効果がある」と手ごたえを感じている。

そこで、みんなが眠れないときの解決方法に関して、遠藤先生に解説してもらった。







音楽を聴いたりして、ほかのことを考えないようにする

緊張して眠れないときも大丈夫! 眠くなる方法
・「音楽を聴くと、途中で寝落ちする」(高3女子・埼玉)

・「好きな声優の声を聴くと、安心して眠りにつく」(高2女子・埼玉)
「聴覚を心地良く刺激することで、記憶の扉を開けず、次の日に何があるとか考えないようになるから、スムーズに眠ることができるのですね」
・「漫才を観たら、いつの間にか眠れるようになった」(高1女子・埼玉)

・「本を読む」(高3男子・東京)

・「動画を観ながら寝ると、気づいたら眠っている」(高3女子・東京)

・「小難しい大学の講義動画を観ると、すぐに眠くなる」(高3男子・東京)
「視覚も同様に、単調だったり、リラックスできる心地良い刺激になると、何も考えずに眠れます。小難しい動画は、脳が拒絶して思考力をシャットダウンすることで眠れるのでしょう」
・「ふとんを頭までかぶると、わりと早く眠れる」(高3男子・埼玉)
「これも、視覚や聴覚をシャットアウトすることで、五感の刺激をなくしています」
・「羊の数を数えると、無心になって眠れる」(高2男子・東京)
「昔からよくやっている方法ですが、これも記憶の扉を開けないための単純作業のひとつ。

ただし、気をつけなくてはいけないのが、羊を数えている間は眠れないということ。

100匹まで数えたら、一度、目をつむって休んでみてください。5秒くらいリラックスしてみて、まだ眠れなかったら、101匹から続けてチャレンジしましょう。

羊を数えながら眠れることはないので、ある程度まで数えたら、リラックスしてみることが眠りにつくコツです」

自分で意識して頭を真っ白にしたり、リラックスする

・「何も考えないようにすると、いつの間にか寝ている」(高3女子・千葉)

・「意識を遠くに集中すると、だんだん眠れるようになる」(高2男子・千葉)

・「頭を真っ白にして無意識になると、深い眠りにつける」(高3男子・埼玉)
「自分で意識して記憶の扉を開かないようにできれば、真っ白な状態になれます」
・「目をつむって、疲れた一日を振り返ると、一気に疲れた気分になって眠れる」(高2女子・埼玉)

・「妄想をすると、いつの間にか寝ている」(高2女子・東京)

・「眠くなるまで起きて別のことをすると、すぐに寝つける」(高1男子・埼玉)
「自分で意識的に不安な記憶の扉を開かないために、ほかのことを考えたりしているのでしょう」
・「呼吸に意識を集中させる」(高1女子・千葉)
「単調な呼吸のリズムに集中することで、記憶の扉を閉めているのでしょう」
・「抱き枕を抱きしめると、気持ちが落ちついて眠れる」(高1女子・埼玉)

・「呼吸を大きくすると、気持ちが落ちつく」(高1男子・千葉)

・「関節と身体の力を抜いていくと、すぐに眠れる」(高1女子・埼玉)
「リラックスすると、不安をとることができるので、真っ白な状態になれます」
・「目の上に何か乗せると、すぐに落ちつける」(高2男子・神奈川)
「目からの刺激をなくすことができますね。

目を強く押しすぎると、交感神経(活動したり、緊張やストレスを感じるときに働く神経)が優位になってしまいますが、軽く押さえるだけなら副交感神経(リラックスしたときに働く神経)が優位になるのです」
・「息を3秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吐くと、リラックスする」(高1男子・東京)
「深呼吸をすると、副交感神経が優位になり、スムーズに眠りにつけます。

さらに、深呼吸は単調な動きなので、不安な記憶の扉を開かないという効果もあります」
・「涙を流すと、すぐ眠れる」(高1男子・東京)
「これは少し珍しい方法です。

いわゆるショック療法で、大声で叫ぶと怒りが収まるのと同じで、泣くことで不安が解消できるのでしょう。

人によっては、思いっきり怒ると眠れる場合もあるかもしれませんね」

運動したり、身体を温めて体温を上げる

緊張して眠れないときも大丈夫! 眠くなる方法
・「少し疲れるまで運動をすると、疲れて眠れる」(高1女子・東京)

・「ランニングをすると、疲れて眠れる」(高3男子・千葉)

・「軽めに筋トレをして、身体を温めてからふとんに入ると、疲れが一気に出てきて、いつの間にか眠っている」(高1女子・東京)
「人間は、一気に体温が下がると眠くなります。運動などをして、いったん体温を上げると、下がっていくタイミングで眠れるので、無理なく眠りにつけます。

肉体的にも精神的にも、適度に疲れていたほうがよく眠れますよ。ただし、疲れすぎると交感神経が優位になり、なかなか体温が下がらなくなるので、寝る前の運動は、ほどほどに」
・「ストレッチをして白湯を飲むと、身体が温まってリラックスできる」(高3女子・埼玉)
「ストレッチをすると、筋肉が柔らかくなってリラックスできます。

そのうえで白湯を飲むことで、いったん身体が温まり、体温が下がっていくタイミングで眠くなります」
・「お腹を温めると、ウトウトしてくる」(高1男子・東京)
「お腹を温めると、体温が上がるだけでなく、腸の動きが良くなるので、副交感神経が優位になり、リラックスできます」
・「ココアを飲む」(高2男子・神奈川)
「これも身体を温めてリラックスさせる良い方法ですね」
・「ホットアイマスクをすると、リラックスできる」(高3女子・埼玉)
「ホットアイマスクは、視覚の刺激をなくすだけでなく、目の奥を温めることができます。

目の奥には脳の温度センサーがあり、そこを温めると、脳が体温を下げようとするのです。

目の奥を温めることは、眠りやすくするために効果的な方法です」  

専門医おすすめ。眠りやすくなる習慣は「早起き早寝」

緊張して眠れないときも大丈夫! 眠くなる方法
「夜なかなか寝つけないという人に多いのが、休日になると昼まで寝てしまうケース。

人間の頭の中には体内時計があり、その体内時計は1日が25時間に設定されています。体内時計が寝る時間と起きる時間を決めているため、何もしないと、誰でも1日1時間ずつ遅寝遅起きになってしまうのです。

でも、ほとんどの人は体内時計が1日24時間で動いています。それはなぜなのか?

人間は、朝日を見ることによって、1日25時間の体内時計を24時間に修正することができるのです。ところが、休日に朝遅くまで寝ていて朝日を見ないと、1日が25時間になってしまいます。遅寝遅起きで1日体内時計を遅らせると、それを元に戻すには2日かかります。

例えば、土曜日と日曜日の2日間とも朝日を見ないと、月曜日の朝に起きづらいだけでなく、体内時計を修正するのに木曜日までかかってしまうのです。 

だから、休日でも必ず朝日を見ることが大事。早いほうがもちろん良いのですが、遅くとも朝9時前に起きて、朝日を見ましょう。それより遅い時間になればなるほど、体内時計は修正しにくくなります。

午後の睡眠は、前夜の寝不足を補うのではなく、その日の夜の睡眠の前借りになってしまうので、昼寝をするなら5~15分程度。例えば、午後から夕方にかけて2時間くらい寝てしまうと、夜、寝つくのが2時間遅れてしまいますよ。

よく『早寝早起き』と言いますが、実は間違い。休日に昼すぎまで寝ていたら、早く眠れるわけがありません。

正確に言うと『早起き早寝』。早起きをした結果として、早く眠れるのです。

朝起きるのが遅かったり、昼寝をしすぎたり、テレビを観ながらうたた寝してしまったら、なかなか寝つけないのは当然。まずは、朝早く起きて、昼寝を5~15分程度にして、その日の夜に早く眠る努力をするのが正しいリセット方法です。

また、スマートフォンを使いすぎると、脳を活性化させてしまうのと、スマートフォンのライトで睡眠ホルモンの一種・メラトニンが抑制される可能性もあるので、夜寝る前にスマートフォンをいじるのは控えましょう」

自分なりの眠くなる方法をみつけよう

緊張して眠れないときも大丈夫! 眠くなる方法
「みんながしている眠れないときの解決方法は、

①何も考えないようにして、記憶の扉を開けない。

②いったん体温を上げて、下がっていくタイミングで眠る。

③身体も心もリラックスさせる。


などがあり、どれも間違ってはいませんが、どの方法が効果的かは人それぞれ。

いろいろ試してみて、自分に合った方法をみつけてください」
好きな音楽が元気な曲ばかり、という人は、遠藤先生が監修した睡眠のための音楽CD『DREAMS~快眠CD』を聴いてみよう。

眠くなる方法だけでなく、質の高い睡眠で勉強の効率を上げたい人へのおすすめは、『合格を勝ち取る睡眠法』(PHP新書) ※Kindle版のみ発売中


深刻な不眠に悩んでいるという人は『睡眠はコントロールできる』(メディアファクトリー新書)を参考にしてみよう。※Kindle版のみ発売中







「睡眠」について理解を深めよう

眠れないときの解決法をたくさん紹介したけれど、自分に合ったものは見つかっただろうか。

この記事を参考に日ごろの行動を見直し、眠りやすくなる習慣を身に付けてほしい。

私たちの体や頭、心にも大きく関係している睡眠。

睡眠についてもっと知りたい!と興味がわいた人は、この機会に詳しく知ってみよう。

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睡眠について深く知るには「睡眠学」を体系的に学ぶ必要がある。

「睡眠学」は主に3つの領域の学問から構成されている。

まずは治療に直結する「睡眠医学」、さらに社会経済問題からみた「睡眠社会学」、また睡眠の役割やメカニズムを研究する「睡眠科学」だ。

※出典:日本睡眠学会

興味のある人はそれぞれどんな学問なのか見てみよう!

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取材・文/やまだみちこ  構成/黒川安弥(本誌)
※2020年4月取材時の情報になります。
※2020年4月スタディサプリ進路調べ