神対応な保護者になる!子どものムカッと発言への返し技
休日にダラダラしている子ども。よかれと思って何かアドバイスすると、反論されてムカッ!
ついつい言い返してバトルや冷戦状態になってしまうこと、ありませんか?
冷静に対応したいけどなかなかできない、という保護者のために、ガミガミママを克服して現在は親業インストラクターとして活躍する生駒章子先生に、神対応ができるコツをうかがいました。
さらに、実際に神対応ができたという保護者たちのリアルな体験談も聞いてみましたので、参考にしてはいかがでしょうか。
目次
生駒章子先生
臨床心理学者トマス・ゴードンが創始した「親業」(親教育プログラム)のインストラクター。
ファミリーワークス合同会社・代表。
子どもとより良い関係がつくりたいと望む保護者・子育て支援者を対象に、講座、ワークショップを提供。
講演会などと合わせ、年間1000人以上に良い親子関係のつくり方のヒントを伝えている。
自身も大学生の息子と高校生の娘の母。
親業訓練インストラクター/姿勢教育指導士/ELM(アドラー勇気づけリーダー)/こども支援士/埼玉県家庭教育アドバイザー/さいたま市親の学習ファシリテーター/(森田ゆり)気持ちのワークショップファシリテーター
子どもの発言にムカッ!高校生の保護者の3人に2人が経験あり
スタディサプリ編集部が高校生の保護者207人にアンケート調査をしたところ、約3分の2の人が、高校生の子どもの発言や態度でムカッとくることがあると回答しました。
実際にどんな状況だったか聞いてみると、やはり反抗的な言動が多いようです。
<<Q.どんなムカッと発言や行動があった?>>
「すぐに『うるせえなぁ』と言われる」(48歳・女性・新潟県)
「勉強しろと言うと『うるさい!あっちへ行け!』と返ってくる」(47歳・男性・岡山県)
「『あんたはそんなに勉強できたのかよ』と言われた」(45歳・女性・栃木)
「なにかを頼んでも、スマホをいじってなかなか始めない」(44歳・女性・大阪府)
「『ほっといて、私の人生なんだから、いちいち言われたくないし、言われたからやるとか絶対ないし、余計にやらないって思う。だから言ってもムダ。何も響かない』など反抗的な態度」(47歳・女性・神奈川県)
「話の途中で『うざっ!しつこい』と被せてくる」(44歳・女性・神奈川県)
「『だって…』と言い訳がとにかく多い」(47歳・女性・北海道)
「自分のことを棚にあげて『ママもやってないじゃん』と言われた」(38歳・女性・東京都)
みんなはどうしてる?ムカッときたときの神対応【さしすせそ】
子どもの言動にムカッときても、受け止め方や対応次第で、お互いの関係を悪化させることは避けられますよね。
そこで、保護者がうまくいったと感じている神対応をご紹介しましょう。
生駒先生にもアドバイスをいただきました。
【さ】「さみしいなぁ」と正直な気持ちを伝える
「さみしいなぁ、とすねたら、会話しようと頑張ってくれた」(48歳・女性・東京)
スマートフォンばかりいじって話を聞いてくれない子どもにムカッときたとき、「あなたと話ができなくて、さみしいの」と保護者の思いをストレートに言ってみたら、気持ちが伝わったようです。
その他にも、保護者がムカッときたときの神対応で、正直な気持ちを伝えた例があります。
「素直に謝ったら、子どももビックリして素直になってくれた」(52歳・女性・東京都)
「私はこんなにも愛しているのに、とボソボソとつぶやいた」(46歳・女性・埼玉県)
「すべきことを後まわしにする習慣ができると、私のように苦しい将来を過ごすのがわかっているので、かわいそうで悲しいと言った。娘は心配性なので、少し焦って、行動を改善してくれた」(48歳・女性・東京都)
「例えば、『いい加減やめなさい!』と注意したり、『私が話をしているのにスマホばかり見てて失礼でしょ』と説教をして、子どもに無視されたり、『うるさい!』とキレられたことはありませんか?
子どもがやっている行動で、保護者に具体的な影響があることなら、子どもを非難しない言い方で、保護者の思いを正直に伝えると、子どもは応えようとしてくれることがあるようです。」
【し】将来の目標から、やる気を引き出す
「子どもの目標について話をふり、そのために勉強があることをつなげた」(53歳・男性・宮城県)
勉強に身が入らない子どもにムカッときたとき、子どもに将来の目標を聞いてみて、会話にのってきたら、じゃあどうすればいいか、進路について話し合い、そのために今は勉強したほうがいい、とやる気を引き出していく方法もあるようです。
その他にも、保護者がムカッときたときの神対応で、うまくやる気を引き出した例があります。
「注意だけではなく、ほめたり、良いところを伸ばすように言うと、言葉にはしないけれど嬉しそうに見えます」(44歳・女性・神奈川県)
「~してくれてありがとう。~してくれると助かるな。という肯定的な言い方で、こちらの要望やこうなってほしいことを伝えると、素直に聞いてくれた」(45歳・女性・岡山県)
「一緒に計画を立てよう、一緒にやってみよう、と声がけをすると、素直に、一緒にやるつもりで来てくれたので、ひとりではどうしたらいいかわからず不安だったのだと思った」(53歳・女性・東京都)
「子どもに話を聞いてほしいと思ったら、まず子どもの話をしっかり聞くことから始めてみてはいかがでしょうか。
子どもの話を聞いて、子どもが考えていることを確認していくことで、子どもは自分のことを認めてもらえたと感じ、保護者の話も聞いてみようという気持ちになるようです。」
【す】素直な思いを冷静になってから伝える
「しばらく時間をおいて、お互いに頭を冷やしてから、LINEで、さっきはこんな言い方をしてしまったけれど本当は……と本音を書いて送った。すると、私も本当は……と素直な気持ちを書いた返信がきた」(47歳・女性・神奈川県)
口論になってムカッときたら、一度自分の考えを整理する時間をつくり、冷静になって素直に気持ちを伝えると、わかりあえるのかもしれません。
その他にも、保護者がムカッときたときの神対応で、冷静な気持ちになってから伝えた例があります。
「言い合いになってしまった後は、子どもが自分から話してくるまで待った。話し始めたら、何もせずに話を聞く態度を見せた」(49歳・女性・北海道)
「一度その場でスルーして、後から、さっきの言動だけど、逆の立場ならどう感じるか?問いかける感じで話してみた。本人もリセットされて落ちついているので、いけないことは受け入れる余裕が出てきた」(49歳・男性・東京都)
「いったん距離をおき、翌日、手紙を書いて、テーブルに置いておいた」(52歳・女性・東京都)
「子どもが反発して口論になってしまったとき、保護者が言い過ぎると、ますます話を聞いてくれなくなる傾向があるようです。
保護者の思いを伝えたければ、急がば回れ。
お互いに落ちついて考えられる状況で、本音を伝えてみると、うまくいくことがあるようです。
人によっては、直接話をするより、LINEやメール、手紙を書くという方法も良いと思います。」
【せ】戦闘モードを回避する
「とにかく黙って、おいしいものをつくる」(50歳・女性・東京都)
ムカッときて、何か言いたくなってしまいそうになったら、戦闘モードを回避するという方法もあります。
例えば、気分転換に料理をして、おいしいごはんを食べさせれば、子どもも笑顔になるでしょう。
その他にも、保護者がムカッときたときの神対応で、戦闘モードを回避した例があります。
「子どもの気持ちが収まるまで、そっとしておく。ありがとうと言いたくなるようなことをコッソリしてみた」(45歳・女性・岡山県)
「平然と『ごはん食べる?』と何気ない態度で切り替えると、かわいらしかった小さな頃のように無邪気に『食べる!』と言ってきました」(47歳・女性・神奈川県)
「話を全く違うことにすり替えた。すると、怒られていることからいったん解放された別の話題で子どもの気が収まった。その後、改めて注意するべきことを伝えると、冷静になって聞いてもらえた」(55歳・女性・千葉県)
「保護者がイライラした状態で注意してしまうくらいなら、黙ったほうが良い場合もあります。
別の部屋へ行く、他のことをするなどして、その場を離れて状況を変えることは、ひとつの手段です。
お互いに笑顔になれる良い時間をつくってから、話をしてみてはいかがでしょうか。」
【そ】「そういえば私も」と自分の体験談で話をふる
「私自身が高校生のときに、もっと勉強すればよかったと、どんなときに思ったのかなど、体験談を話すと聞いてくれました」(39歳・女性・東京)
テレビを見てダラダラしている子どもにムカッときたら、自分の失敗談を話してみると、興味をもって聞いてくれることがあるようです。
その他にも、保護者がムカッときたときの神対応で、自分のことを話した例があります。
「僕の部屋も人のことを言えたような状態じゃないけど、もう少し片づけたほうが良くない?など、親も完璧にはできていないことを認めながら、改善を促した」(45歳・男性・大阪府)
「自分と同じ失敗をくり返しそうなとき、経験談を話したら、意外と素直に聞き入れてくれた」(47歳・女性・香川県)
「ママも、やりたくないとき、やる気の出ないときもあるけど、やり始めたら意外にその気になるから、ちょっとやってみて、と言った」(44歳・女性・大阪府)
「保護者が自分の体験談、特に失敗談を話してみると、子どもが親近感をもってくれると思います。
保護者も自分と同じように失敗して、悩んだり、苦しんだり、そんなふうに感じていたんだな、と共感してもらえると、保護者の話を聞いてくれやすくなるでしょう。」
さらに、保護者がムカッときたときの神対応や、おすすめだと思う返し技をご紹介しましょう。
「あなたの言い分も気持ちもよくわかる。じゃあママの言うこととあなたの言うことを、お互い半分ずつやろうと誘ってみた。本人も、自分の要求を半分は聞いてもらえたので納得」(44歳・女性・大阪府)
「オバちゃんだからしょうがないんだよー、と言うと、納得するのか、相手にしなくなるのか、怒りが収まるようで、子どものイライラが長続きしない」(52歳・女性・埼玉県)
「常に真剣に向き合うことと全てを求めないこと」(49歳・男性・東京都)
「まずは聞いてやるしかないのでは。そのうえで議論」(58歳・男性・東京都)
「全てに向き合わず、軽く流す。すごく達観した気持ちになるというか、無の境地と自分に言い聞かせた」(47歳・女性・神奈川県)
生駒先生おすすめ!ムカッと発言への心構え
ムカッとしたときこそ子離れのチャンス!
子どもの言動にムカッとしたとき、わかっていても何か言いたくなってしまいますよね。
でも、実は、ムカッとしたときこそ、保護者も成長できて、子離れができる絶好の機会なのだと、生駒先生は言います。
「子どもに反抗されたとき、そろそろ子離れをする時期なのだと思えると、保護者の気持ちも楽になると思います。
保護者が何かを言って口答えされたとき、まずは、価値観の問題ではないかと考えてみましょう。
例えば、保護者は勉強してほしいと思うけれど、子どもは自分の成績が悪いことに何も問題を抱えていないとします。
保護者が言うようなことをしなくても、子どもはそこまで困っていないのであれば、これは価値観の違いだと考えられます。
もし、子どもが困っていないことに対して、保護者がグチグチ言い続けると、子どもは反発するし、お互いの関係を壊してしまうことになるかもしれません。
価値観が違うと感じたら、一度、黙ってみるのも、ひとつの方法です。
お互いに良い関係でいられる時間をつくってから、子どもに伝わるように、保護者の思いを話してみてはいかがでしょう。
保護者の話をしたら、必ず子どもの話もじっくり聞いてあげることが大切だと思います。
高校生は、自分のアイデンティティーを獲得するために、親離れをしようと頑張る時期だと言われています。
保護者も子離れをして、対等な立場になることが、お互いに良い関係を築くための近道になるのではないでしょうか。」
子離れしたい、子離れしなくちゃ、と思っていても、なかなか難しいと感じる人もいるかもしれません。
そこで、保護者が子離れをするために心がけていることや工夫していることを聞いてみました。
「なるべく口出しせず、自分で行動させる。話をしてきたときは一緒に悩んで考える。話を聞くことで、少し落ちついているように思います」(46歳・女性・和歌山県)
「自主性に重きをおき、親の考えを押しつけない」(51歳・男性・栃木県)
「距離をとった話し方、少しずつ丁寧な話し方で接してみる。最初からいきなり丁寧に話してみたら気持ち悪がられたので」(49歳・男性・福岡県)
「子どもができることは本人に任せる。ちゃんとできたら、しっかりとほめる。ほめることは本当に大切」(48歳・女性・岐阜県)
「寄り添い見守って、子どもを信じてあげることだと思っている」(60歳・女性・神奈川県)
「たとえ子どもであっても、自分と同じ考えをするわけではないと思い、子どもの考えを尊重するようにしている」(53歳・女性・埼玉県)
「ある程度は放置し、たまに様子をうかがい、困っていたらそばにいるよ、助けるよ、という合図を出し続ける。困ったときにのみ、頼ってくるようになった」(53歳・女性・東京都)
お互いにわかりあえる関係性をつくっていく
お互いにわかりあえる良い関係性をつくっていくことで、子どもに反抗されてムカッとくることが減ってくると考えられます。
そのためには、保護者の価値観を伝えることも必要だと生駒先生は言います。
「子どもに自分の話をしない保護者は少なくないと思います。
保護者の仕事のこと、何が好きで、いつもどんなことを感じているのか、今まで何をしてきたか、保護者がどんな人間なのかを子どもに伝えることは、良い関係性をつくるためのひとつの方法だと言われています。
例えば、テレビ番組やアイドルなど些細なことでも、『私は〇〇が好きだけど、あなたはどう思う?』と話しかけてみてはいかがでしょう。
勉強の話だったら、『お母さんは夜より朝のほうが集中できたわ』『え~、私は朝ムリ』などと、さりげなく勉強時間の話ができるかもしれません。
保護者のことをわかってもらえたら、価値観の違いも伝わり、お互いにわかりあえる関係性をつくっていけるのではないでしょうか。」
よくしゃべる子、あまりしゃべらない子、その子によって対応のしかた、コミュニケーションのしかたも違うかもしれません。
今回紹介したものなかで、参考にできそうなものはないか、ぜひ自分たちに合ったコミュニケーションの方法を探ってみてください。
子どものためを思って言ったつもりが、反抗されると、誰でもムカッときちゃいますよね。
とことんバトルして、お互いに言いたいことを言うとスッキリする人もいるかもしれませんが、険悪なムードになって、いつまでも冷戦状態になるのは避けたいもの。
友達みたいな関係だったり、あえて干渉しあわない関係だったり、お互いにとって一番心地良い関係を見つけられるよう、ときには悟りを開いた神の心で、いろいろ試してみましょう!
取材・文/やまだみちこ 監修/生駒章子 イラスト/小迎裕美子 デザイン/桜田もも 構成/寺崎彩乃(本誌)
※記事内のデータ及びコメントは、2021年3月、高校生の保護者207名へのアンケート調査によるものです
子どものやる気アップ!保護者のための「共感型コミュニケーション」のススメ