「被災県から復興県へ」。東北3県の高校生が復興策を提言
「被災者のなかには『もう仮設住宅から出られなくてもいい』とあきらめてしまう人もいます。そんな人たちを励まし、意識改革につなげられるような意見交換の場を作りたい」
この言葉からは、被災地の現実に立ち向かおうとする、高校生の真剣な思いが伝わってくる。
東日本大震災で被災した高校生たちが経験した「思い」を、「人のために役に立つ力」に変えていってほしいという願いをこめ、2011年から「ビヨンドトゥモロー東北未来リーダーズサミット」というイベントが始まった。(2013年の開催内容はこの記事をチェック)
4回目となる今年は、岩手・宮城・福島の3県から54人の高校生と、大学生・専門学校生23人の総勢77人が東京に集まった。
高校生は8チームに分かれて「東北の未来への提言」をテーマにディスカッションを重ね、最終日には復興大臣政務官をはじめ各界のリーダーたちの前で、3分間のプレゼンテーションを行った。
冒頭の提言は、そのうちの一つ。ほかにも…
「東北6県それぞれの魅力を都会の人や外国の人に体験してもらえる旅行プランを立て、多くの人に旅行客として被災地を訪れてほしい」
「がれき処分などについて話し合うイベントを各地で開催する『ちりつもプロジェクト』で、世間の注目を集めたい」
「若い世代が作る東北を目指し、自由に意見交換する『#はずめったー』をSNSで始めたい」
などなど、さまざまな提言がなされた。
参加した高校生の一人、福島県の高校2年生・菅野朱音(すがの・あかね)さんは「被災した人があまりに多すぎて、行政の人たちに頼っていてはとても復興が進まない状況です。私たち一人ひとりが何か行動を起こさなければ変わらないと思い、参加しました」と言う。
今回、ディスカッションを通して「被災地の復興、という最終的な目標は共有できても、細かい部分はみんな意見が違う。それをどう一つの結論にまとめればいいか」という難しさを感じたそう。社会人の提言アドバイザーや大学生のチームリーダーのアドバイスを受けて、プレゼンまでこぎつけた。
「復興のために、あれもやりたい、これもやりたいと言っているだけでは思いが伝わらないことを学びました。何かを発信するときは言いたいことを一つに絞ることが大事なんですね」と振り返った。
2011年のサミットに参加し、その後も継続してこのイベントに参加してきた気仙沼市出身の大学2年生・穀田龍二(こくた・りゅうじ)さんは、今回も大学生チームの一員として「被災地の人口流出問題への対策」についての提言を発表した。
「毎日の生活のなかで復興について真剣に語り合うチャンスなんて、被災地にいてもほとんどないんです。でもここにくれば『なんとかしたい』と思っている仲間に会えます」と言う。
「震災で電気やガスなどのライフラインが長いこと止まった過酷な生活を経験し、『何とか地元を復興させたい』と思いました。将来の夢は漁師。せっかく世界有数の漁場が目の前に広がる港町に生まれたので、ビジネスセンスのある漁業者となって、地元の発展に貢献したい。その夢を支えてくれるのがこの場であり、アドバイザーやメンターからの具体的なアドバイスをもらって励みにしています」
このサミットに参加した一人ひとりが、ここで得た知恵やネットワークを生かし、5年後、10年後、復興に貢献する実力をつけて活躍してくれることを願ってやまない。