音楽であれ、映画であれ、舞台であれ、優れた作品は、誰かの人生にくっついてるものなんです。ただの“音”や“映像”が誰かの人生とリンクして、記憶にとどまったり、生きる希望になったりする。考えてみればすごく不思議なことだけど、それこそがエンターテインメントが存在する意味、エンタメの力なのだと思います。
コロナ禍は、エンタメ業界に巨大な影響と影を落としています。でも、僕が一番伝えたいのは、そんななかでも多くのクリエイターたちが自ら行動し、新たな表現の出口を模索する機運が生まれていること。3人の女優の心意気で実現した『truth ~姦しき弔いの果て~』、コンテンポラリーダンサー生島翔さんが出演・プロデュースした『Trinity』。僕が演出させていただいた2本の自主制作映画は、いずれもコロナによって封じ込められた人々が決意を持って立ち上がった作品です。彼らの姿勢は、アフターコロナへの芽吹きを感じさせるものでした。
スマホさえあればひとりで映画がつくれる時代。“ とりあえず1本監督しちゃう?”ぐらいのカジュアルさでどんどんチャレンジしてほしいです。そうした中で、東放学園のような学校に来る理由があるとすれば、それは“そこに仲間がいる”ということに尽きると思います。僕にとって東放学園は、漠然としか映像業界を知らないまま、ぽっと入った学校。しかし、そこで打ち込んだ仲間との共同作業は、その後の人生を決定づける革命的な体験となりました。映像、音、光、演技。バンドを組むみたいに才能を結集すれば、世界に届かせる作品作りも可能なはず。おじさんがぐうの音も出ないような、パンチと破壊力のある作品をここから生み出してください。
(株)オフィスクレッシェンド 勤務/映画制作科/1979年卒/2019年には嵐のライブフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』でメガホンを取る。「カメラ125台という史上最大級の撮影体制でのぞみました。メンバーだけでなく、自分にも大きな節目となりましたね」。記念すべき50作目の映画『truth ~姦しき弔いの果て~』はインディーズ作品。ローマの映画祭では最優秀作品賞を受賞した。「自主映画ならではの自由な空気の中で、非常に面白くやれた作品です」。