疫学とは人の集団で発生する病気の要因や分布などを調査し、罹患の法則を探し出す学問です。1854年のコレラの大流行を、死者数を地図上で建物ごとに記載する「見える化」で、汲み上げポンプの水が原因と推測して終息させたことが始まりと言われています。人獣共通感染症や国境・地域を超えた動物感染症の場合、その制御は困難を極めます。近年は人・動物・環境の健康は一つであるというOne Healthの概念のもと、異分野が連携して問題を解決。例えば当研究室では、精神保健の専門家と協力して、新型コロナウイルス感染症に関する伴侶動物病院の対応状況を「見える化」し、ストレスに弱い傾向がある職種について周知を行いました。他にも家畜衛生や公衆衛生分野の多くの課題を通して、国内外で感染症に立ち向かう疫学人材を育成しています。
酪農学園大学は、ヨーロッパ獣医学教育機関協会(EAEVE)認証の最終審査を受審予定。国際獣疫事務局(WOAH)の公用語(英・仏・スペイン語)のいずれかを用いて業務ができるよう、1~2年次は実践的な英語教育を行い、4年次の獣医疫学は英語での講義が基本となる。実習では、実際の感染症アウトブレイクや本学動物病院の腫瘍症例のデータを参考に、感染症の制圧プランや治療方針の立て方について検討を実施。社会の諸問題に対応するため、国・地方自治体や臨床獣医師などと共同で課題に取り組み、調査・研究を行うゼミ所属学生も多い。
疫学は理論的に難しい部分もあり、語学や広い視野、柔軟な発想、コミュニケーション能力などが求められます。しかしそれらを高いレベルで身につけることができれば、世界に通用する疫学者になれる可能性もあります!
専門:獣医疫学
埼玉県庁で家畜防疫に従事後、JICA青年海外協力隊員としてネパール王国で2年間を過ごす。イギリス留学とケニヤの国際家畜研究所での勤務を経て2010年に帰国し、酪農学園大学で国内では初めて独立疫学ユニットを立ち上げた。2014年より国際獣疫事務局食の安全コラボレーティングセンター・コンソーシアムの酪農学園大学センター長として活動するほか、日本の畜産や野生動物、伴侶動物病院の課題解決などに貢献。