「ちはやぶる・・・」在原業平が詠んだ、この和歌を聞いたことはありますか。これは「屏風歌」といって、四季の景物や行事、各地の名所が描かれた屏風の絵に合わせて詠まれました。ただし、平安時代の屏風は残っていないため、どのような絵だったかはわかりません。残された屏風歌から推定するのです。学外活動では、京都の名所へも訪れます。近畿で古典を学ぶ、こんな贅沢なことはありません。平安時代の建築物に囲まれると、歌人たちが眺めた屏風の絵も鮮明に浮かんでくる感覚になります。千年前の文学や建築との出会いを通して、今を生きる私たち自身も日々の移ろいを大切に思えるのです。
「古文に抵抗がある学生も多いです。最初は現代語訳からストーリーを把握して、それから原文を読むアプローチでも悪くないと言っています。親しみをもって楽しく学ぶことが一番です」と語る田島先生のゼミでは、古典の人物像がどう描かれているかを考察する「人物論」が人気。性別を偽った兄妹の宮廷物語である「とりかへばや物語」からは現在のジェンダー論に通ずる考察をめぐらせ、誰もが知っている「源氏物語」では光源氏を取り巻く女性たちに焦点を当てます。そうして学生たちはいつの間にか日本が誇る古典作品に魅入られていきます。
日本学科はアニメなどの現代文化・日本の観光・和食など、日本に興味がある人、大歓迎です。特に古典文学は世界に誇る偉大な遺産。いろいろな古典文学に触れ、海外にもその魅力を発信できる人をめざしてください。
専門:平安和歌文学
幼少期のかるた遊びがきっかけで和歌が好きになった田島先生は、愛猫家の一面も。大阪大学大学院で博士号取得ののち、1994年に着任。2006年に中古文学会賞受賞を、2008年には第九回紫式部学術賞を受賞した。主要著書に『屏風歌の研究 論考篇・資料篇』和泉書院(2007年)がある。