私の専門である「生物統計学」は、医学、公衆衛生学、健康科学分野における課題をデータに基づいて解決するための学問。例えば、がんに対して治療が有効かどうかを複数の側面から評価するための方法を研究しています。がん治療で生存率は重要な指標ではありますが、患者さんの体への負担や睡眠への影響、投薬にかかるコストが現実的かなど、患者さんの「生活の質」から見た治療の評価というものも重要で、この研究によってより良い治療や薬の開発に貢献したいという想いがあります。最近ではウェアラブルデバイスの普及により、人々の運動量や心拍数、睡眠時間などの生体データが集めやすくなりました。学生のみなさんにも、こうしたデータを活用して、治療だけでなく健康増進や疾病予防などの分野に広く貢献していってもらえるように期待しています。
統計学の基礎から生物統計学の応用まで様々な講義を担当している坂巻先生。1年次には、学生が生物統計学やデータサイエンスに興味を持てる入り口となるような講義を意識して行っているそう。「統計学は数学的な理論を踏まえて理解することが重要ですが、応用とかけ離れた学習内容ではデータサイエンスに活きてこない可能性があります。一方で、生物統計学は応用の理解をすることが重要ですが、数学的な理論をおろそかにすると正しく活用ができない可能性が高まります。理論と応用の両面を意識した講義が重要だと考えています」
データから「目には見えない正解」を思考していくことは、世の中の多くの場面で役立ちます。適切な統計的思考に基づき課題を設定し、データを収集・分析・応用して、解決策として提案する方法を一緒に学びましょう。
専門分野:生物統計学、統計学、データサイエンス
経歴:東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻専門職学位課程修了。公衆衛生学修士(専門職)。
東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程修了。 博士(保健学)。
横浜市立大学医学部臨床統計学助教、東京大学大学院医学系研究科生物統計情報学講座特任講師、横浜市立大学データサイエンス推進センター 特任准教授を経て、2023年より現職。