強い磁力とラジオ波を用いて、人体組織の様々な断層画像を得ることのできるMRI。放射線被ばくのない安全性の高さや非侵襲性(生体に触れず、傷つけない)、検査で判ることの多様性に着目し、研究の主軸としています。テーマの一つ「非造影MRIによる生体内の流れの可視化」では、複雑に絡み合う血管から静脈のみを描画することで血管内の血栓を検出する技術を開発し、臨床応用に成功しました。これはエコノミークラス症候群など、狭い場所に長時間同じ姿勢でいることにより足の静脈に生じた血栓が、肺の動脈に詰まることで生命に危機をおよぼす症状の早期発見・治療にもつながります。最近では脳脊髄液の流れを画像化し、脊椎・脊髄に生じた疾患の診断に応用する研究や、リンパ液の流れを可視化しリンパ浮腫の診断に応用する研究にも取り組んでいます。
担当授業「MR画像検査学」では、MRIの原理やMR装置の構造などの基礎知識から最新の撮像技術までを解説します。その特色は“数式を使わない教育”と教授。「大切なのは原理的なものを概念として理解すること。数学的な計算はコンピュータなどでも補うことができます」。教材には多くの図や画像を用いて、高校で理数系の授業を履修していなくても対応できるよう視覚的にわかりやすく指導。また学生に対しては、それらの学びや実験・実習が“何のために行われているのか”という本来の目的について、常に考えることを伝えているといいます。
診療放射線技師の業務範囲が広がり、これまで医師が行っていた一部の医療行為を行えるようになりました。学びの範囲も広がりますが、授業や実験、研究活動を私たちが最大限に支えます。一緒に頑張りましょう。
専門分野/MR画像検査学、MRIの安全性
略歴/大阪大学大学院 医学系研究科博士後期課程を修了後、市中病院の医療技術部に所属し臨床と研究に携わりながら、大阪大学大学院 医学系研究科の招聘教員、岡山理科大学 理学部生物化学科および工学部生体医工学科の非常勤講師として学生教育に従事した。2017年、川崎医療福祉大学 医療技術学部診療放射線技術学科の開設を機に基幹教員として入職。現在に至る。博士(保健学)。