動物の行動や社会を、フィールドワークだけでなくDNA分析も用いて解明する研究に取り組んでいます。動物も人間と同様に、同種の他個体と関わりながら暮らしています。そのような動物の社会について、ゴリラやチンパンジーなどヒトに近い霊長類から食肉類、偶蹄類、ウサギまで多様な哺乳類を中心に研究を進めています。動物の糞などからDNAを抽出し分析すれば、個体や性別などを同定したり、行動範囲や血縁関係を推定したり、観察だけでは分からない様々なことが解明できます。例えば、ニホンザルにおいて、必ずしも順位の高いオスが多くの子どもを残しているわけではないことを明らかにしました。動物の社会の研究は、それぞれの種の社会行動の進化について解明できるだけでなく、我々ヒトの社会の特徴を知ることにも通じる興味深い分野です。
実験室や野外での実習が充実しており、野外実習は1~3年次に各4~5コースを用意。井上先生は、伊豆大島の動植物を対象とした基礎的な実習や、動物園や野猿公苑での観察実習などを担当。特に野猿公苑の実習は、檻の中ではなく野外にいるサルの行動を間近で観察できます。各学生が気になる個体や行動から観察テーマを考え、テーマに沿ったデータを収集し、レポートにまとめます。その過程を井上先生が丁寧にサポート。動物行動学の講義でも研究事例を多く紹介しており、講義や実習を通して、自ら考える力を身につけられます。
動物の行動や社会は非常に面白い研究分野です。DNA分析により、隠れた生態を解明できます。研究を通じて、研究成果が得られるのはもちろん、人間力も身につきます。まずは好奇心をもって研究に取り組んでみませんか?
京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科修士課程修了、京都大学博士(理学)取得。岐阜大学応用生物科学部教務補佐員、京都大学大学院理学研究科研究員、同大学大学院理学研究科助教を経て、2015年より東邦大学理学部生物学科講師、2020年より現職。2014年日本霊長類学会高島賞受賞。著書に『野生動物の行動観察法:実践 日本の哺乳類学』(共著、東京大学出版会、2013年)がある。