日本の染織工芸は、古くは奈良時代に本格的な技術が大陸から伝わり、一時衰退したものの、江戸時代に友禅染めなどが登場し、飛躍的に技術が進化。その後も技術革新が続き、さまざまな技法が誕生しました。私が大学で指導しているのは、数ある技法の中のろうけつ染めによる作品製作です。ろうけつ染め作品は、着物の模様だけでなく、最近では染織アート分野でも注目されていますから、伝統工芸・アート作品の両分野に興味がある学生も多く学んでいますね。
授業では、まるで絵画のように緻密な模様を表現できる伝統技法をはじめ、染織の歴史なども伝えています。この大学では、1年次にあらゆる基本となるデッサン・スケッチを重視した学び、加えて素材である布を織る、染めるを体験できる実習など、感性を磨く学びが豊富なのは理想的だと思いますよ。
先生が担当する実習授業では、課題に沿って作品づくりを行う中で、多彩なろうけつ染めの技術を身につけていけます。それと共に「学生の皆さんには、思考が柔軟な時期に色んな分野にアンテナを張って、なんでも取り入れてほしい」との思いから、先生は授業の中で日本画や現代アート、デジタル作品、さらに骨董品を学生に紹介し、デザインセンスや作家としての感性を磨けるようにしているとのこと。
こうした指導により、多くの学生が個性的で洗練された作品を生み出す技術力と共に作家性も身につけていけるのは興味深いところです。
染織を学んだ先には、工芸作家としてはもちろん、着物・テキスタイル分野、アート作家、さらにデザイン力を発揮して多分野のデザイナー・イラストレーターなど、色んな未来が広がります。ぜひココで学んでください!
専門:ろうけつ染め
大阪芸術大学 工芸学科で染織工芸全般を学んだ後、京都市立芸術大学大学院 美術研究科で、ろうけつ染めを専門的に学ぶ。大学院修了後は、テキスタイル業界でデザインなどに携わる傍ら、作品をつくり、個展やグループ展へ出展。日展への入選やさまざまな工芸展で数多くの賞を獲得。現在は自身の工房を持ち、作家活動を続ける。奈良芸術短期大学では、染織コース主任として実習指導を担当。