これも公務員! ドラマ・映画制作を支える県庁職員

みんなは公務員に「5時になったらすぐ帰れる」「与えられた仕事を淡々とこなせばいい」といったイメージをもっていないだろうか。

 

佐賀県庁に勤める近野顕次さんは、そんな一般的なイメージとはちょっと違う公務員だ。

 

■県庁の中にある映画・ドラマの撮影サポート部隊

 

近野さんは北海道出身。東京の大学に進学し、そのまま東京で広告関係の会社に就職した。6年間勤めた後、子どもが生まれたことをきっかけに、妻の実家に近い佐賀県へ引っ越すと同時に転職。「父親が公務員だったのでなじみがあった」(近野さん)と、ちょうどUIターン経験者採用の募集をしていた佐賀県庁に入庁した。メディアにかかわる仕事の経験を買われて、フィルムコミッション担当の仕事に就き、現在3年目だ。

 

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フィルムコミッションとは、映画やドラマ等の撮影場所を紹介し、撮影を助ける組織。全国各地の地方公共団体(都道府県・市町村)などに設置されている。なぜ地方公共団体などにこのような機関があるかというと、映画やドラマなどが地元で撮影されることが、地域活性化につながると期待されているからだ。

 

佐賀県の場合も、県内の名所や名産が登場する映画やドラマを通じて、県外の人には佐賀を知ってもらい、県内の人には佐賀の良さを再認識してもらうのが大きなねらい。また、大きな撮影が入れば、100人単位の撮影スタッフが1~2週間滞在するため、宿泊や飲食など地元への経済効果も期待できる。

 

「佐賀県は知名度が低く、都道府県魅力度ランキングではいつも下のほう。ぼくも転職するまでは佐賀のことを良く知りませんでした。でも、実際に佐賀県に行ってみると町も人もとても魅力的なので、それをぜひみんなに知ってほしいと思っています」(近野さん、以下同)

 

近野さんら佐賀県フィルムコミッションの仕事は、主に3つある。映画・ドラマの制作会社に営業をして、佐賀県での撮影を誘致すること。撮影が決まったら、制作スタッフの要望に合うロケ地や建物を探すなど、撮影をサポートすること。そして、公開に合わせて、その映画・ドラマを撮影地とともにPRすることだ。

 

最近では、現在公開中(1/18~)の映画「黒執事」が一部、佐賀県でも撮影。佐賀フィルムコミッションがロケ地との交渉やエキストラの手配などに協力した。

 

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■高校時代に培った行動力が活きている

 

仕事の場は佐賀県だけにとどまらない。近野さんは昨年タイに出かけ、映画会社を回って映画誘致を営業。ちょうど海外留学中のシーンの撮影場所を探していた映画があり、佐賀県での撮影が決定した。タイ国民に佐賀県を知ってもらう絶好のチャンスと期待されている。

 

「数年前、韓国で大ヒットしたドラマ『アイリス』をきっかけに、舞台となった秋田に韓国人観光客が押し寄せたという事例があります。最近、日本を訪れるタイ人観光客が増えていることを感じていたので、どの自治体よりも先にタイに営業に行かせてほしい、と上司に提案しました」

 

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タイにまで飛んでいく近野さんの行動力は、高校時代に磨かれたという。

 

「ぼくは興味をもったことはすぐ行動に移すほう。高校時代、テレビでヒッチハイクの旅をする番組や、サイコロで行き先を決めて旅をする番組を見て、自分も同じようにヒッチハイクで北海道1周したり、サイコロの旅をしていました。そのころに身についた能動的に動くという感覚は、今の仕事にも生きているのではないでしょうか」

 
 

■「地元を良くしよう」という志のある人が多数

 

撮影隊が佐賀県に入ると、フィルムコミッションの担当スタッフも撮影隊と同じ宿に宿泊し、寝食を共にする。深夜や休日にも及ぶ撮影現場で、近野さんらスタッフも不規則な生活を強いられる。しかし、「確かにハードですが、辛さは感じない」と近野さん。

 

「撮影が順調に進むようサポートすることが第一ですが、ぼくらとしては映画・ドラマになるべく佐賀名産の食べ物や有名な景色を入れたい。撮影隊と良好な人間関係が築けていると、『○○を入れてもらいたい』というこちらの要望も通りやすくなるもの。ぼくの頑張り次第で佐賀がPRできると思えば、やりがいを感じます」

 

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どうやら公務員の仕事の魅力は「安定」だけではないようだ。昨年、佐賀県庁職員によるAKB48「恋するフォーチュンクッキー」のダンス動画が話題になった。これも佐賀県のPRのひとつ。

 

「事前のイメージと違って、公務員は与えられた仕事をこなすだけでなく、自分のまちを良くしようと志をもって働いている人がたくさんいました。ぼくも“佐賀県の良さ”を売り込む営業マンとして佐賀を盛り上げていきたいと思います」

 
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