国際機関や政府組織、NGO…国際協力に携わる組織にはどんな種類があるの?

「将来は世界の平和のために働きたい」「貧しい国の子どもたちを助ける仕事がしたい」といった国際協力への夢をもっている高校生は決して少なくないだろう。

その場合、進路として真っ先に頭に浮かぶのは、「国連」や「外務省」という人が多いのでは?また、国際貢献・国際協力に興味があるなら、「JICA(ジャイカ)」「青年海外協力隊」といった名称を見聞きしたことがある人も多いはず。

そのほかでは、例えば「国境なき医師団」のような「NGO」が気になっているという人もいるかもしれない。

これらの組織は、「国際貢献」「国際協力」「世界平和」といった目的は共通していても、それぞれ位置づけや規模、役割が大きく異なる。

国際貢献できる仕事国境なき医師団って?

※「国際貢献」「国際協力」「世界平和」といった目的は共通していても、それぞれ位置づけや規模、役割が大きく異なる!?

 

また、組織ごとに仕事の種類もいろいろだし、仕事に就くためのステップや難易度にも違いがある。

そこで、まずは「国際貢献できる組織・仕事」についてざっと基本的な整理をしておこう。

 

児童福祉、労働、金融など多彩な分野の国際機関がある

国連(国際連合)には、国連事務局や国際司法裁判所などの主要機関のほか、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連世界食糧計画(WFP)などの機関がある。


「国際貢献」する仕事とは?

※恵まれない子どもたちや難民の救済、途上国の開発、食糧問題など仕事は多岐にわたる

 

これらは、恵まれない子どもたちや難民の救済、途上国の開発、食糧問題への対応などそれぞれの専門分野に関する調査・研究・対策などに取り組んでいる。

このほか、国連と密接な関係をもっているが、独立した専門機関には、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行などがあり、それぞれ世界の労働問題や医療問題、文化の発展、通貨の安定、途上国への融資、農業開発支援などに取り組んでいる。

 

国際機関で働くには大学院修士以上の学位が求められることが多い

「国際貢献」する仕事とは?

※国際機関で働くには大学院修士以上の学位が求められることが多い⁉

 

では、これらの国連機関や国際機関で働くにはどんな能力が求められるのだろうか? 熱いハートや目的意識、語学力は当然のこととして、一つ重要なポイントになるのが学位。

もちろん各機関やポジション、採用方法によって違いはあるものの、自分が携わりたい専門分野について大学院修士以上の学位が求められるのが一般的なのだ。

なぜかというと、国連機関や国際機関の専門職員は即戦力採用だから。

例えば、貧しい国の衛生状態の改善に取り組むのであれば、すでに医学や公衆衛生に関する高度な専門性をもっている人材が求められるというわけだ(ちなみにどの機関にも秘書や運転手などの一般職はあるが、こちらは現地採用が中心)。

そうなると、大学の学部・学科選びの段階で、自分が国際貢献・国際協力できる分野のなかでも何の専門家を目指すのかをしっかり決めておくことが大切。

国際開発、国際協力系の学部・学科ももちろん有力な選択肢の一つだが、医学、保健学、福祉学、政治学、経済学、農学、環境学、理工学、建築学、会計学などの分野もニーズは高い。

なお、海外の大学院に進学して国際機関を目指す人も実際には多いが、国内の大学院からでも挑戦は十分可能だ。

 

採用は欠員が生じた際に行われるが、実はステップは多様

さて、肝心の採用方法だが、日本の会社のような新卒を対象とした定期採用はない。

ではどうしたらいいかというと、一つは、欠員が出たときの募集を随時チェックして応募する方法がある。

このほか、若手を対象に国連事務局が実施するヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)、日本の外務省が若手の日本人を対象に実施するジュニア・プロフェッサー・オフィサー(JPO)派遣制度などのプログラムを利用する方法も。

国際協力の仕事に就くためにはどうすればいいの?

※定期採用はあまりないので定期的にチェック!


ただし、国際機関の職員になるステップは実は多様で、内部のスタッフに人脈を作ったり、インターンシップで現場に入って能力をアピールしたりした結果、募集がないのに声がかかって採用された例もある。

 

裏を返せば、決まったコースを歩めば必ずなれるものではないということ。

そのため、金融機関やコンサルティング会社、医療機関など、自分の専門性が生かせる企業・機関で経験を重ねながらチャンスをうかがう人も多い。

 

外務省には幹部候補の総合職と特定の地域に強い専門職がある

外務省の仕事は、諸外国との外交交渉や情報収集、国際会議のサポートなどさまざまだが、国際協力も重要な役割の一つ。

日本が国として途上国を支援するODA(政府開発援助)について、政策や方針を決めているのは外務省だ。

外務省職員には総合職、専門職、一般職がある。

外務省のお仕事とは?

※外務省職員には総合職、専門職、一般職がある

 

このうち一般職は会計や庶務などを行う仕事なので、国際協力に直接かかわることが目的なら、目指すは総合職か専門職ということになる。

総合職は「キャリア」と呼ばれ、将来は大使などになることが期待される幹部候補。

専門職は特定の地域の言語、社会、文化、歴史に精通したスペシャリストで、フランス語、ロシア語、中国語、アラビア語、タイ語などの英語以外の言語を駆使して活躍する人も多数。

なるためのステップにも違いがあり、総合職は国家公務員総合職試験に合格後、外務省を訪問して内定を得られれば採用となる。

一方、専門職は、外務省が独自に実施する外務省専門職員採用試験に合格する必要がある。

こちらの試験は法律や経済学などの知識に加え、15言語から1つを選択する外国語試験も課される。

★外務省のお仕事をもっと見たい人はこちら

世界各地でさまざまな分野の開発プロジェクトに取り組むJICA

次にJICA(独立法人 日本国際協力機構)と青年海外協力隊についてみていこう。

JICAは、教育、保健医療、環境、、農業、平和構築などのさまざまな分野の国際協力に取り組む、外務省所管の日本の組織。

世界中で日本のODAを活用した多数の開発プロジェクトを幅広く実施している。

JICAの仕事は非常に幅広く、さまざまな開発プロジェクトをマネジメントするJICA職員のほか、各プロジェクトの現場で活躍する技術協力プロジェクト専門家、企画調査員などがある。

JICAの正職員は新卒採用を行っているが、高度な専門性が必要とされる技術協力プロジェクト専門家などは、それぞれの分野で経験を重ねた人が就く仕事だ。

青年海外協力隊はJICAが実施する有償ボランティアのことで、JICAのさまざまな海外プロジェクトの現場に参加する。

高度な専門性は求められないが、給与は現地での生活費や交通費、各種手当程度で、派遣期間も1~2年と決められており、年齢制限もある。

ほかの国際協力系の仕事と比べると参加するハードルが低いので、まずは青年海外協力隊で国際協力の現場での経験値を高めて、より専門性の高い仕事へとステップアップを目指す人も多い。

 

平和、教育、医療、人権、環境などNGOの活動も幅広い

最後に紹介するのがNGO(非政府組織)。

国連や各国政府からは独立して、平和構築、教育、医療、人権、環境などさまざまな国際的問題に取り組む組織で、みんなも名前を聞いたことがある「国境なき医師団」「国際赤十字」などが代表例。

これらのように世界各国に支部をもつ大規模な組織もあれば、小規模な組織もある。

ちなみに「NGO」とよく混同されるのが「NPO(民間非営利組織)」。

どちらも社会のために活動する組織という点は同じだ。

では、何が違うのかというと、定義しているポイントが違うと考えるとわかりやすい。

特定の国の政府に属さずに世界的な課題に取り組む組織がNGOで、民間企業と違って自分たちの利益を追求せずに社会貢献に取り組む組織がNPO(まったく利益を得ないという意味ではない)。

※NPOとNGOの違いって?

 

そのため、NGOでありNPOであるという組織も当然ある。

国際貢献・国際協力や世界平和に関心があるなら、より注目したいキーワードはNGOのほうだ。

NGOは分野も活動内容も規模も多種多様なので、仕事の内容も非常に幅広い。

国際機関のように大学院レベルの専門性と高い語学力が求められ、世界をまたにかけて開発プロジェクトなどに取り組む職種もあれば、国内でボランティア募集や募金集めなどに携わる事務職もあり、ボランティアとして現場の活動に参加する道もある。

職員の採用は欠員が生じたときに募集するのが一般的。

ボランティアは随時募集していることが多いので、興味がある分野のNGOに大学時代からボランティアとして参加する人もたくさんいる。

まずは大学などで専門能力と語学力をしっかり磨くことが重要!

ここまで紹介してきた組織や仕事のなかでも国際機関や外務省は非常に競争率も高く、狭き門であるのはたしかだ。

JICAの正職員も人気が高い職種。

しかし、だからといって早々にあきらめてしまうのはもったいない。

※青年海外協力隊やボランティアからスタートするのも1つの手

 

世界で起きている問題に関心があり、「困っている人たちを助けたい」と考えているなら、NGOで働く方法もあるし、青年海外協力隊やボランティアからスタートして経験値を高めていくことも可能。

また、JICAなどと連携して国際協力にかかわる事業に取り組んでいる民間企業に就職することもできる。

「やりたい!」という強い気持ちさえあれば、実は選択肢はいろいろあるのだ。

目標に近付くためには、やはり大学などで自分が関心のある分野の専門知識や技術、さらに語学力などをしっかり磨いておくことが大切。

道のりはハードだが、その分やりがいも大きい仕事。

※やりがいが大きい国際協力の仕事、あなたは興味がある?

 

興味がある高校生は、世界がどんな課題を抱えているのか、各組織がどのようにその課題解決に取り組んでいるのかを調べて、長期プランで力を磨いていこう!

 

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