世界の子どもを助ける仕事がしたい!ユニセフで働くには?国際協力に関わる仕事に就く方法
「将来は世界の平和のために働きたい」「貧しい国の子どもたちを助ける仕事がしたい」といった夢をもっている高校生は決して少なくないはず。国際協力に関わる仕事に就くには、ユニセフや国連などの職員、JICA海外協力隊、NGO・NPO職員、社会的企業の社員、国際協力師などが考えられる。
それぞれ、どのような職業なのか、どうしたらなれるのか詳しく解説しよう。
目次
国際協力とは
※まずは国際協力とはどんなことか理解しよう
国際協力に関わる仕事を目指すなら、まずは国際協力とはどういったことを指すのか、きちんと理解しておこう。国際協力とは、開発途上国やその国民に対して、国連やその関連機関、NGOなどの組織、先進国政府などが取り組んでいる支援のこと。
具体的には、交通や電力などのインフラ整備、感染症対策などの公衆衛生、医療の拡充、産業の支援、起業を志す個人への融資、女性や子どもの人権保護などがある。
貧しい子どもを支援する仕事は国際協力の重要な役割の一つ
世界中には、社会環境のために十分な食事を得られなかったり、十分な医療や教育を受けられなかったりして、日々苦しんでいる子どもがたくさんいる。そのように貧困に苦しむ子どもたちに向けて、水や食糧が行きわたるようにしたり、適切な教育や医療が受けられるようにしたり、子どもたちを児童労働や早すぎる結婚・出産から守ったりすることも国際協力の重要な役割の一つなのだ。
国連と主要な国際機関とはどのような関係?
国際協力に関係する組織として国連や国際機関などがあるが、どのような組織なのだろうか。国連には、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、事務局の6つの機関がある。
国連事務局は国連の日常業務を行う機関、国際司法裁判所は、領土紛争など国家間で解決できない問題を扱う裁判所だ。
このほかに国連ファミリーと呼ばれる専門機関がある。
例えば、国連児童基金(UNICEF/ユニセフ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連世界食糧計画(WFP)などの補助機関がその代表例。
これらは、恵まれない子どもたちや難民の救済、途上国の開発、食糧問題への対応などそれぞれの専門分野に関する調査・研究・対策などに取り組む機関だ。
国連と密接な関係をもっているが、独立した専門機関には、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)などがあり、それぞれ世界の労働問題や医療問題、通貨の安定、途上国への融資、農業開発支援などに取り組んでいる。
世界の貧しい子どもを助ける仕事とは
世界の貧しい子どもを助ける仕事には、前述のように、・JICA海外協力隊
・NGO・NPO職員
・社会的企業の社員
・国際協力師
それぞれどのような仕事なのか、どのようにすればなれるのかを詳しく解説していこう。
国連職員(国際公務員)
国連職員とは、国連事務局や、ユニセフなどの国連ファミリーの専門機関で働く職員のこと。国際公務員とも呼ばれる。
仕事の内容は所属する機関や与えられた役割によってさまざま。
経済、金融、公衆衛生、医療、教育、児童福祉、農業、交通、土木、建築など多様な専門家がそれぞれの機関で活躍している。
働く場所も幅広い。
国連本部があるニューヨークや地域事務所があるジュネーブ、ウィーン、ナイロビなどで働くケースもあれば、日本国内にある各機関の事務所で働くケースも。
もちろん支援対象である途上国の現場で勤務することもある。
JICA海外協力隊
JICA(ジャイカ)は、日本政府の途上国に対するODA(政府開発援助)を実施する日本の公的機関。管轄は外務省。
JICA海外協力隊とは、JICAが募集し、支援先に派遣するスタッフのこと。
活動内容は農業、交通、水資源、教育、医療、公衆衛生など多岐にわたり、それぞれの分野で一定の専門性をもつ人材が活躍している。
1つの案件につき、活動期間は原則2年間で、日本国籍をもつ20~69歳がチャレンジできる。
採用に当たっては、分野ごとに技術試験などが行われる。
語学力は英語で日常会話ができる程度でもOKだ。
NGO・NPO職員
NGO(Non-Governmental Organizations/非政府組織)とは、世界各地で起きている貧困や紛争、環境破壊、災害、感染症などの問題に取り組む民間の組織のこと。活動の内容は組織によってさまざまだが、子どもの貧困問題や子どもの人権保護に取り組んでいる組織もある。
NPO(Non-Profit Organization/非営利組織)とは、利益を得ることを目的とせず、社会貢献のために活動する組織のこと。
日本では、所轄の省庁に認証された団体がNPO法人を名乗ることができる。
NGOと同様、活動内容はさまざまで、国内外の子どもの貧困問題などに取り組む団体もある。
NGOとNPOは定義上の違いはあるが、同じような活動をしているケースもあり、NGOを名乗りつつNPO法人の認証を受けている団体もある。
NGO・NPO職員は、日本国内で支援の計画や資金集めに取り組んだり、現場で支援や調査に取り組んだり、寄付金を集めるための広報活動に取り組んだりするのが仕事だ。
正規職員のほかボランティアで活動しているスタッフも多い。
社会的企業の社員
社会的企業(ソーシャルエンタープライズ)とは、環境問題や地域再生などの社会的課題の解決につながるソーシャルビジネスに取り組む企業のこと。NGOやNPOが利益を目的としていないのに対して、社会的企業は社会問題を解決し、同時に利益も生み出すことを目的としていることが特徴。
国内の問題に取り組む社会的企業のほか、世界的な貧困や教育の問題に取り組んでいる社会的企業もある。
社会的企業はあくまで民間企業なので、職種も多様。
直接支援に取り組む仕事もあれば、営業、経理、広報などの仕事もある。
「途上国の貧しい子どもを助けたい」という目的で社会的企業で働くなら、その会社の事業内容や活動拠点、募集職種などをよく調べることが大切だ。
国際協力師
国際協力師とは、国境なき医師団で日本理事を務めた山本敏晴氏がNPO法人宇宙船地球号を創設して提唱した新しい概念。無償のボランティアとしてではなく、給料を得ながら、自分の専門性を活かして国際協力の舞台で活躍するプロフェッショナルのことを指す。
だから、すでに説明した国際機関の職員や、給料を得て働いているNGO職員なども国際協力師に該当する。
日本とアフリカを往復して国際協力活動に取り組んでいる原貫太氏は、どこの組織にも属さないで個人で活動していることから、「フリーランス国際協力師」と名乗っている。
ボランティアでは、「大学生の間の一定期間だけ」といったように、活動期間は限定的になってしまうが、プロフェッショナルとしての知識・スキルをもつ国際協力師であれば、継続的に国際協力に関わることができる。
世界の貧しい子どもを助ける仕事に就くには
※世界の貧しい子どもを助ける仕事に就くのに求められることとは?
世界の貧しい子どもを助ける仕事に就くために共通して求められるのは、現地の生活や文化を理解し、コミュニケーションする力、「貧しい子どもを助けたい」という強い目的意識、主体的に考え、協働して行動する力だ。現地の生活や文化を理解し、コミュニケーションする力
言語能力に関しては、日常会話ができる程度でOKという職種もあれば、高いレベルの外国語能力が求められるケースもある。ただ、現地で働くなら、日本とは異なる生活習慣や文化を理解し、適応できる異文化コミュニケーション能力は不可欠。
もちろん、初めて海外で働くときは誰しも戸惑うものなので、海外留学や海外ボランティアなどの経験を通して、学生時代に異文化を理解する経験を重ねておくことが大切になる。
「貧しい子どもを助けたい」という強い目的意識
途上国の現場で直接貧しい子どもを支援する場合、インフラなどが未整備で生活環境が苛酷なことも多く、日本国内では考えられないような突発的な難題に遭遇することも頻繁だ。NGOなどに所属して働く場合、決して多くの収入が得られるわけでもない。
それでも与えられたミッションをやり通すためには、「貧しい子どもを助けたい」という強い目的意識が必要不可欠。
貧しい子どもを助ける仕事に興味を持ったら、自分の目的意識が本物かどうか何度も問い直そう。
主体的に考え、協働して行動する力
限られた人数で日々難題が発生する状況に対応しながらミッションを遂行するには、何が課題なのか、どうすれば解決できるのかを自分で主体的に考え、それを行動に移せる力が大切になる。とはいえ、現場の仕事はチームプレーなので、一人で突っ走ることはNG。
議論を通して最適解を探り、チームで協働して行動することが求められる。
ユニセフで働くには?
ユニセフで働くには学位や専門的なスキルが求められる
ユニセフなどの国際機関で働くには、即戦力が求められることが多いため、大学院修士以上の学位がほぼ必須となっている。採用は空席広告による募集が中心だが、そのほかにも多様なステップがある。
詳細を解説していこう。
専門職員になるには大学院修士以上の学位がほぼ必須
国連やユニセフなどの国際機関で働くにはどんな能力が求められるのだろうか?熱いハートや語学力は当然のこととして、一つ重要なポイントになるのが学位。
もちろん各機関やポジション、採用方法によって違いはあるものの、自分が携わりたい専門分野について大学院修士以上の学位が求められるのが一般的なのだ。
なぜかというと、国連や国際機関の専門職員は即戦力採用だから。
例えば、貧しい国の衛生状態の改善に取り組むのであれば、すでに医学や公衆衛生に関する高度な専門性をもっている人材が求められるというわけだ(ちなみにどの機関にも秘書や運転手などの一般職はあるが、こちらは現地採用が中心)。
そうなると、大学の学部・学科選びの段階で、自分が国際貢献できる分野の中でも何の専門家を目指すのかをしっかり決めておくことが大切。
国際開発、国際協力系の学部・学科ももちろん有力な選択肢の一つだが、医学、保健学、福祉学、政治学、経済学、農学、環境学、理工学、建築学、会計学などの分野もニーズは高い。
なお、海外の大学院に進学して国際機関を目指す人も実際には多いが、国内の大学院からでも挑戦は十分可能だ。
採用は空席広告による募集が中心だが実はステップは多様
さて、肝心の採用方法だが、日本の会社のような新卒を対象とした定期採用はない。ではどうしたらいいのかというと、一つは、各機関で空席が生じたときに、該当する専門家の補充のため募集が行われるので、随時チェックして応募する方法がある。
このほか、若手を対象に国連事務局が実施するYPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)、日本の外務省が若手の日本人を対象に実施するジュニア・プロフェッサー・オフィサー(JPO)派遣制度などのプログラムを利用する方法も。
なお、JPOは前述のように修士号以上の学位が必要だが、YPPは学士があれば応募は可能だ。
また、それぞれの国際機関が実施しているインターン制度を利用して、無給のインターンとして働き始める方法もある。
日本ユニセフ協会では、大学生、大学院生、大学卒業後間のない人を対象に、ユニセフの活動に従事するインターンの募集を行っている。
働く期間は3カ月から1年までの間で選択することができる。
国際協力や国際関係にかかわる仕事はほかにもいろいろある!
※貧しい子どもを助ける仕事以外の国際協力に関わる仕事とは
貧しい子どもを助ける仕事以外にも、国際協力にかかわる仕事はいろいろある。主なところをいくつか紹介しよう。
外交官
在外の公館である大使館や総領事館でさまざまな外交事務を担当したり、現地の情報収集を担当する。諸外国と日本の関係を円滑に友好的に結ぶための政策決定などに影響を与える仕事だ。
対象となる国の言語や文化、政治・経済などに精通していることが求められる。
外務公務員
外務省(東京の霞が関にある本省と海外にある大使館など)で働く人たちが外務公務員。めまぐるしく変化する国際社会の中で、私たちが未来にわたり安全で豊かな生活が送れるように、外交政策を企画・立案する。
その政策をもとに、世界中に設置された在外公館のネットワークを通じて外交の最前線で働く。
大使館スタッフ
諸外国が日本に置く大使館や領事館などで仕事をする。事務処理などが主な仕事になるが、海外から派遣されてきている外交官に対して日本のことを伝え、理解を深めてもらう役割も担う。所属する大使館の国の言葉は必須。
日本の文化や歴史、政治・経済などについても熟知していることが大切だ。
国際協力に関わる仕事に就くために関連する学問について調べよう
※どんな学問が役立つのか具体的に見てみよう
現地が抱える課題を分析し、その解決策を探ることが求められる国際協力の仕事に就くには、そのために役立つ一定の専門知識があると有利。具体的にどのような学問がどのように役立つのかをチェックしてみよう。
国際関係学
国際社会に存在するさまざまな問題解決に向けて、国家地域間の比較やその地域の政治、経済、文化などを、調査や現地研修などを通して分析研究する学問。語学力の養成に力を入れている大学も多い。
国際協力に特化した学部・学科・専攻もある。
国際文化学
文化を共有する集団を民族、言語、国家、宗教、小集団や大衆などさまざまな側面で捉え、学際的・実証的に分析する学問。国際的視点や比較文化的視点を重視している。
政治・政策学
政治学では、理論と実例研究を通して国際社会や国家、地域社会などの政治現象を研究する。政策学は、フィールドワークを基礎にした問題発見・解決型の社会科学。
子どもの貧困や人権侵害などの問題に取り組むには、社会の仕組み自体を変える政策を立案し、現地の政府に働きかけて実行する必要があるため、政治・政策学で学んだ知識が基礎となる。
法学
国家と国家、個人と個人の利害の対立や意見の不一致を調整するためのルールである法の精神を体系的に学び、法の役立て方を追求する学問。途上国の問題解決のためには、法律の整備が必要となることも多いため、法律の専門知識が活かせる位階も多い。
総合政策学
複雑化・国際化した現代社会の課題を解決するための政策立案・遂行に向けて、学問の枠を超えて研究し、問題の解決手法を探る。社会課題の発見・分析やその解決策を探る力を養うことができる分野だ。
語学(英語)
使える英語能力を身につけるために、「読む・書く・聞く・話す」の4技能を総合的にしっかりと鍛える。国際協力の現場では、世界各国からスタッフが集まることも多いので、共通言語である英語が身についていると有利だ。
世界の子どもを助ける仕事や国際協力に関わる仕事にはさまざまな方法があることがわかった。
裏を返せば、決まったコースを歩めば必ずなれるというものでもないということ。
道のりはハードかもしれないが、その分やりがいも大きい仕事なのだ。
興味がある高校生は、まずはじっくり各職業の仕事内容を調べて、長期プランで専門能力を磨いていこう。
取材・文/伊藤敬太郎 構成/寺崎彩乃(本誌)
参考資料/国際連合広報センター 外務省 国際機関人事センター
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