りりこ、17歳。孤高な日常と妄想の交差点~Vol.1~【高校生ノベル】
りりこ、17歳。広尾にある私立の共学に通う高2。
東京にきて4ヶ月が経とうとしているが、まだまだ戸惑うことばかり。
私は小学校4年生の時から高校2年生の途中までお父さんの仕事の都合でシンガポールに住んでいた。一つ上のお兄ちゃんの受験もあり中途半端なタイミングでこの東京に引っ越してきたので、高校にはもちろん馴染めていない。
朝7時半の満員電車は、いつまで経っても慣れなそうだ。
定員オーバーなのにあらゆるテクニックを使って無理やり乗る人々。「降りまーす!」に反応しない空気。電車が揺れるたびに聞こえる小さな「すみません」と小さな不協和音。ああ。満員の時は優先席に誰が座っていいわけ?!
遅刻は私のポリシーに反するから、ほどよく余裕のある時間に家を出て嫌いな満員電車に乗る。学校までは20分。そんなに遠くないけど、本当は少しの時間でも本を読むことに充てたい。まあ、学校に着いたらたくさん読む時間があるからいいんだけどね。
私のカラダの半分は本でできていると思う。本があれば、世界中どこにいたって孤独じゃない。
日本の高校は、何回かアニメで見たことがあったけど、人間関係はそれ以上に複雑なようで、登校初日にしてクラスの目立っているグループから私は嫌われてしまったらしい。
というのも、彼女らが「りりこちゃんっていうの?かわいい~!私たちと一緒に今日からご飯食べない?」と話しかけてくれたので、一緒にランチを食べた。その時、私が「どうしてみんな同じ髪型なの?!学校、校則厳しくないって聞いてえらんだんだけど。」と言ったら、一瞬場が凍ったのを感じた。
そして、それを機にその子たちが誰も話してくれなくなった。だって、みんなお揃いの髪型してて変だったんだもん。そんな感じで、学校では基本一人の時間を謳歌している。
お弁当だって、ママがつくると言ってくれるけど、シンガポールにいたときから基本的にはサンドイッチを毎朝自分でつくるのが習慣だったし、今もそうしてる。ハムとチーズのサンドイッチともう一つが、ジャムのサンドイッチ。ジャムの種類を変えるか、それをピーナツバターにするか、それ以外は毎日一緒。みんなのお弁当は、おかずが3種類とかそれ以上に入ってる。日本のお母さんは大変だと思う。
そして、私は、外見には手を抜かない。今日も髪を綺麗にストレートにした後、CCクリーム→薄ピンクのチーク→眉毛→ビューラー→マスカラの順で整えていく。ファンデは塗らない。黒髪主義。ビューラーは角度と回数が大事。根元から一発で上げるとカクッてなって変だから、8回くらいに分けて毛先に行くにつれて角度を急にしていく。そうすれば斜め後ろからも横からも前から見てもくるんと綺麗なまつ毛になるから。
クラスでは相変わらず女の子たちが色んな話題で盛り上がっている。見てると最近はスナチャとかSNOWでセルフィーをしてることが多いかな。それを週に4回くらいのペースでインスタに載せてるけど、私から言わせてもらうとインスタになんでも写真を載せちゃうのはナンセンス。だって自分のページのテイストが崩れちゃうでしょ?
まあ、私には関係ないしやりたいようにすればいいと思うけど。私はしないなってだけの話。「人は人、自分は自分。」呪文のように唱えると、気持ちが凛とする。
それより、東京にきてやっとお気に入りの場所が見つかったの。毎日毎日、大量に浪費されたつまらない時間をそこはチャラにしてくれる。
それは麻布十番駅7番出口から少し歩いたところにあるスタバ。
(~Vol.2~につづく)
大学生ライター
あぐり
アメリカの大学に9月から入学する新大学1年生。着物や歌舞伎などの日本の伝統文化とサブカルチャーが大好き。多趣味でハマったらどっぷりハマる性格なので本当に色んなジャンルの「オタク」界隈を通り抜けてきました。