日本の教育にかけるお金は安すぎ? 欧米並みに目標を引き上げへ

日本の政府・自治体が負担する公的な教育支出は世界の主要国と比べて高いのか低いのか? 何となく、「そこそこ高いほうなんじゃないの」と思う人も多いだろうが、実はこんなデータがある。

 

EU諸国や日本、アメリカ、カナダ、韓国など34カ国が加盟するOECD(経済開発協力機構)の発表によると、2009年度に日本の政府・地方自治体が教育に支出した金額は、GDP(国内総生産)の3.8%。

 

この比率はOECD加盟国のうち、比較可能な31カ国中なんと最下位。ちなみにOECD平均は5.8%で、上位のデンマーク、アイスランドは7%を超えている。

 

こうした状況を受けて、この3月、文部科学省に置かれている中央教育審議会では、公的な教育支出をOECD諸国並みに引き上げることを国と地方に要求した。

 

どこまで実現するかは財政も厳しいなか不透明ではあるが、ここで気になるのが、「なぜ今まで教育支出が少なかったのか」ということと、「なぜ今増やすのか」ということ。この2点を東京学芸大学の田中敬文准教授に聞いた。

 

「この数字は誤解を招く面もあるのです。日本の教育支出額自体は安くはないのですが、GDPが大きいので比率としては小さくなってしまう。特に初中等教育に関してはそれなりに出しています。公立高校も無償化していますしね。

 

ただし、政府の教育支出が全体的に伸びていないのは事実ですし、特に大学や専門学校などの高等教育に関しては欧米諸国と比べてもかなり少ないのは確かです」

 

ヨーロッパでは大学・大学院まで無償という国もあるが、日本では国立大学でも多額の授業料が必要。しかもヨーロッパと比べると私立大学の数も多い。つまり、高等教育に関して、日本は家計の負担が非常に大きいのだ。

 

しかし、今や家計が苦しくなる一方で、大学の学費は親や学生自身にとって重荷に…。教育支出費拡大は授業料の軽減や給付型奨学金の拡大につながっていくのだろうか?

 

「それも一つですが、日本の大学は研究費も不足していますし、地方の国立大学では、留学生が『これが国立大学?』と驚くこともあるくらい施設の老朽化も目立っています。国際競争で勝ち残っていくためには、さまざまな面でお金が必要な状況なのです」

 

実は大学も苦しいというわけだ。そこで教育支出費拡大のポイントとなるのが国民全体の考え方の転換。大学へ通う人や保護者だけが負担するべきという考え方から、高等教育を国民全体で支えていこうというヨーロッパ型の考え方へ。これが浸透するかどうかが、今後の動向を左右することになりそうだ。