これで怖くない! 海外留学前の不安を解消するための極意
夏休みの期間を利用した短期留学から海外の高校や大学への進学まで、海外留学に関心をもつ高校生が増えている。しかし、「海外留学に興味はあるけど、不安のほうが大きい」という人が多いのでは?
全国の高校生104人に※アンケートを実施してみると、「留学はしたほうがいいと思いますか?」という質問に、約70%の人が「したほうがいい」と回答!
その理由としては、
「グローバル化が進む社会で、外国の文化に触れることは大事だと思うから」(16歳男子・東京都)
「自分の人生経験として大きな価値があると思うから」(18歳女子・福岡県)
「実際に外国人と話すことで、コミュニケーション能力が上がると思うから」(17歳女子・長野県)
「知識だけではカバーしきれない経験ができるから」(18歳男子・長野県)
「人間的にも見方が変わるから」(18歳男子・神奈川県)
など、語学力の上達以外にも、さまざまなメリットがあげられた。
※海外留学したほうがいいとわかっているけど、気が引けちゃう原因って?
その一方で、「短期でも長期でもいいので、留学をしたいと思いますか?」と聞いたところ、60%以上の人が「留学したいとは思わない」と回答。
さらに、「留学の資金を補助してくれたら行きますか?」という質問にも、約67%の人が「いいえ」と答えた。どうやら、お金の問題だけではないようだ。
海外留学の不安要素は「治安」「言葉の壁」「精神的不安」。
では、高校生たちが海外留学をしたくない理由は何だろうか? 何が問題になっているのか聞いてみると、大きく分けて3つの不安要素があった。
まずは「治安」。
※治安の良い日本で生まれ育った高校生にとって、異国の地を怖く感じるのも当然
「言葉が通じるか。文化の違いに慣れることができるか。銃社会が怖い」(18歳女子・埼玉県)
「生活環境の変化に対応できる自信がない。治安の面でも不安」(16歳女子・神奈川県)
「身の安全が確立されているかどうかわからない」(18歳男子・福岡県)
その次が「言葉の壁」。
※留学先の言葉が話せないと勉強も生活もできない。高校で習った英語では不安?
「現地の人とうまくやっていけるのか、自分の語学力レベルで通用するのか、自信がない」(17歳女子・佐賀県)
「留学先の言語を使って生活できるか不安」(18歳男子・東京都)
「英語が話せない。留学先の法律、マナーを知らない」(17歳男子・東京都)
最後は「精神的不安」。
「育った環境とは違う中で、何が起きるかわからないから」(16歳女子・大阪府)
「外国人だけのところでうまくやっていけるか心配」(16歳女子・大阪府)
「現地の人とコミュニケーションがうまくとれず、孤立してしまいそう」(18歳女子・神奈川県)
これらの海外留学の不安要素を、先輩たちはどうやって克服したのだろうか?
海外留学にチャレンジしたい学生のために、文部科学省が取り組んでいる留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」で、海外留学をした先輩たちの体験談を聞いてみた。
日本政府だけでなく、官民協働の下、社会総掛かりで取り組む「留学促進キャンペーン」。
その主な取り組みである「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」は、2014年から2020年までの7年間で、約1万人の高校生・大学生を派遣留学生として世界各地へ送り出す計画。
産業界を中心に社会で求められる人材、世界で、あるいは海外を視野に入れて活躍できる人材を育成する。
File1. 小野寺 陸さんの海外留学体験記
※アメリカの航空会社を見学しに行った 小野寺 陸さん
●航空関係の仕事にあこがれて、アメリカの航空会社を見学
留学時期/高校1年の8月
留学期間/1カ月
留学先/アメリカ・シアトル
留学目的/英会話力の習得と航空会社の見学
※ボーイング社の本社に行きたくてシアトルに留学
留学しようと思ったきっかけは?
小さいころから、航空会社に勤務する父が楽しそうに仕事の話をしてくれるのを聞いていて、自分も将来は航空会社で働きたいと考えていました。
さらに、小学生の時、父の職場を見学して、英語を話している姿を見てカッコイイとあこがれ、英語を話せるようになりたくて留学したいと思うようになったんです。
行くまでに大変だったことは?
留学先の語学学校への入学申し込みはもちろん、学生ビザの申請なども、全部インターネットで調べて、自分で手続きをしました。
しかし、ビザの申請書は英語で書き方がわからなかったし、高校に入学してすぐ、新しい生活に慣れない不安定な状態で、時間もない中、いろいろな手続きをしなくてはいけなかったので大変。
苦労はしましたが、自己手配したことでプロセスがわかっていたから、何かあった時に自分で何とかできるという自信になりました。
治安の心配はあった?
なかったといえばうそになります。 留学先を選ぶ時、あまり治安が悪くないところを考えました。
アメリカでは、道が1本違うだけで、雰囲気がガラッと変わります。だから、危険なエリアをインターネットで調べて近づかないようにしたり、夜は出歩かないようにしたり。
リュックサックは後ろが見えないから、横に提げるバッグにするとか、細かいことにも気をつけるよう心がけました。 おかげで、怖い思いをしたり、盗難に遭うことは一度もなかったです。
語学力に不安はなかった?
英語の成績は普通より少し上くらいで、得意とまでは言えません。だから、正直言って、めちゃくちゃ不安でした。
でも、行けば何とかなるかな、と思っていました。 事前の対策としては、英語のニュースを聞いてみたくらい。
中学1年の時、授業で英語の教科書を全部丸暗記したことがあったのですが、その時に覚えたフレーズなどが日常会話で意外と役立ちました。
※語学学校のクラスメイトは台湾、香港、タイなどの高校生や大学生も
精神的な悩みはあった?
あまりホームシックにはなりませんでした。
最初の1週間は、親や友達とインターネット電話をしましたが、2週め以降、毎日が楽しくなって、ほとんどやっていません。
「トビタテ!留学JAPAN」の事前研修の時、同時期に留学する高校生や大学生と連絡先を交換していたので、何かあるとSNSで話を聞いてもらったりできたのは心強かったです。
語学学校の中国と香港のクラスメイトが、ホームステイ先も一緒だったので、学生寮のような気分で過ごせたことも良かったと思います。
行ってみて大変だったこと、失敗したことは?
英会話に関してはゼロからのスタート。
最初の1週間は、先生が言っていることを何も理解できず、正直、日本へ帰りたいと思ったほど。ひとりで言葉が通じないところへ行くのは、やっぱり不安でした。
ところが、2週めから、だんだん慣れてきて、少しずつ英語が話せるようになると、途端に楽しくなったんです。
語学学校のクラスメイトは当然ネイティブスピーカーではないので、英語がわからない者同士、話しやすかった。ゆっくり話すし、簡単な単語しか使えませんから。
そこから慣れていって、だんだん街中でも現地のアメリカ人と話せるようになりました。
英語が話せるようになると、すごくおもしろくて、頭の中が英語に変わってくるんです。
英語で考えるようになったり、ひとり言も英語になるくらいで、英語を話している自分に思わず感動!
不安だったのは最初の1週間だけで、今では楽しい思い出しか残っていません。
※現地のJALのスタッフに案内してもらって、ボーイング社を見学
留学して良かったことは?
シアトルに留学した一番の目的は、ボーイング社の見学。
「トビタテ!留学JAPAN」の事前研修で知り合った大学生にシアトル留学した先輩を紹介してもらい、その方の紹介で、飛行機を製造している工場や航空会社のオフィスを見学することができました。
現地のオフィスを見せてもらうことで、海外で働く姿がイメージできて、航空会社で働きたいという気持ちが強くなったんです。
さらに、MicrosoftやAmazonの本社も見学しましたが、日本のオフィスと雰囲気が全然違って、文化が異なることを実感。自分の世界が一気に広がりました。 いろいろな国へ行ってみたいと思うようになり、実際に海外旅行をする行動力がついたんです。
高校時代は、ひとりで台湾や韓国へ旅行しましたし、大学生になったら、また留学したいと考えています。
File2. 飯田汐音さんの海外留学体験記
※本場ニューヨークでダンスレッスン留学をした飯田汐音さん
【飯田汐音さん】
●ミュージカルの本場ニューヨークでダンスレッスン
留学時期/高校2年の7月~8月
留学期間/2週間
留学先/アメリカ・ニューヨーク
留学目的/ダンスと英会話力の習得
※留学した目的のひとつは、あこがれのブロードウェイでミュージカル鑑賞
留学しようと思ったきっかけは?
6歳の時からダンスを習っていて、ミュージカルの舞台に出演していました。
外国のミュージカル映画を観るのも好きだったので、いつかニューヨークのブロードウェイで本場のミュージカルを観たいと思っていました。
母の勧めで「トビタテ!留学JAPAN」を知り、事前研修で仲間と留学プランを語り合うことで自分の目的も明確になり、より充実した留学になるかな、相談できる仲間がいるのは安心だし、好きなダンスでなら頑張れる、と思ったからです。
行くまでに大変だったことは?
語学とダンスの両方の留学を手配してくれるエージェントを自分で探して、紹介してもらったプランに申し込みをしたので、特に大変だったことはありません。
治安の心配はあった?
24時間体制でスタッフがついてくれる留学プランで、寮にもスタッフが常駐していて、ひとりになることがないので安心。
でも、ニュースなどは気をつけて見るようにして、何かあった時の対処法を考えていました。
語学力に不安はなかった?
英語は得意な科目でしたが、会話力に自信がなかったので、ネイティブスピーカーの先生と会話ができる英会話スクールに1年くらい通って、ある程度の自信をつけてから、留学の申し込みをしました。
※テクノロジー、デザイン、税理士の勉強をしている学生もいて、いろいろな話ができておもしろい
精神的な悩みはあった?
初めての海外旅行で、地下鉄の乗り方やライフスタイルもわからないので、少し不安でした。
エージェントには、寮に日本人留学生がいるかどうかわからないと言われていたのですが、2人1部屋で、最初の1週間は同い年の日本人がルームメイトだったので、いろいろ教えてもらえて良かったです。
2週めは、1歳年上のコロンビア人でしたが、語学学校だけでなくダンススタジオも一緒だったので、すぐ仲よくなり、今でも連絡を取り合っています。
行ってみて大変だったこと、失敗したことは?
語学学校では、上から2番目の高いレベルのクラスに入ってしまい、専門的なディスカッションをする授業がメインで、最初はついていけませんでした。
いろいろな国から来ている留学生なので、国によって英語の発音のしかたが違って聞き取れない。でも「わからない」というのは恥ずかしい気持ちがあって聞けなかった。
ところが、ほかの人たちが堂々と「わからない」と言っているのを聞き、自分も勇気を出して言ってみたら、クラスメイトが教えてくれたり、気遣ってくれて、だんだん辞書なしでも理解できるようになったんです。
※仲よくなった高校生の友達に、浴衣を着せてあげたり、万華鏡をプレゼントして、日本の魅力を伝えた
留学して良かったことは?
タイムズスクエアにあるダンススタジオに、1日3時間×2コマ=6時間、週3日、通いました。とにかく驚いたのはジャンルの多さ。
民族舞踊まで習うことができて、さすが多民族国家だと思いました。
先生の英語の指示は聞き取れないこともあったけど、ダンス用語は何となく理解できるし、振り付けは見よう見まねでも習えます。
同じ曲、同じ振り付けなのに、踊る人によって表現のしかたが違う。
考えたことをそのまま表現すればいいのだと勉強になりました。
自分に足りないこともわかったので、これからもっとダンスの勉強を続けて、ミュージカルの舞台に立ちたいという目標ができました。
File3. 稲田あかりさんの海外留学体験記
※タイの少数民族の村でボランティア活動をした稲田あかりさん
●タイの少数民族の村で現地の人と交流しながらボランティア活動
留学時期/高校2年の12月~1月
留学期間/3週間
留学先/タイ・チェンライ
留学目的/山岳少数民族の村でボランティア
※タイのアカ族の村に留学して、現地の子どもたちと交流
留学しようと思ったきっかけは?
高校1年の冬、学校の留学プログラムで、タイのバンコクにあるスラム街へ行き、ストリートチルドレンを保護する施設で1週間、現地の状況について学びました。
その時は興味本位で参加したのですが、帰国後、タイの歴史を勉強して、スラム街に住んでいる人の8割が少数民族の出身だと知り、どうしたら解決につながるのか、現地のNGOがどういうことをやっているのか知りたいと思ったんです。
※地域のお祭りで、アカ族の伝統衣装を着た子どもたち
行くまでに大変だったことは?
少数民族の村に留学できる手配をしてくれるエージェントがなかったので、自分で現地のNGOを調べて、直接電話をかけて、お願いしたんです。
現地でどんな生活をするのか、まったくわからなかったので、不安が大きく、親も高校の先生も心配していました。
そんな中、「トビタテ!留学JAPAN」で、そのNGOに留学したことがある大学生の先輩がいることを知り、いろいろ相談に乗ってもらったことで、少し安心。
さらに、そのNGOにアカ族の男性と結婚した日本人女性がいることもわかり、現地で頼れる人がいると心強く思いました。
そこで、1年かけてしっかりと準備をして、留学に至りました。
治安の心配はあった?
とにかく何もわからなかったので、不安だらけでしたが、留学した大学生の先輩に、気をつけること、事前に準備しておくことなど、いろいろ教えてもらいました。
語学力に不安はなかった?
英語の成績は普通でしたが、留学先では何語なのかもわからない状態。
一応、タイ語は少し勉強したものの、現地に行って初めて、アカ族という民族の「アカ語」だと知りました。
精神的な悩みはあった?
まったく知らない土地で、アメリカやヨーロッパをはじめ、いろいろな国から留学生が来ていましたが、日本人は自分ひとり。
しかも、ボランティア活動なので大人が多く、高校生もほかにはいなかったんです。
そこで、いきなりヨーロッパ圏の国の友達を作るのではなく、まず日本語を勉強しているタイのインターン生と仲よくなり、その人つながりで現地の言葉を教えてもらったり、頑張ってコミュニケーションをすることで、少しずつ不安を解消していきました。
行ってみて大変だったこと、失敗したことは?
今まで聞いたことがない言語だし、日本人も、高校生もいない。
山奥へ行くとインターネットもつながらなくなるので、何かあった時に相談できる人がいなくて、不安が大きかったです。
でも、少しずつボランティア仲間と交流したり、現地の生活に慣れていくことで、克服していきました。
※高校生は自分ひとりだけ。大人に交ざって、道路や水路を補修するボランティアもした
留学して良かったことは?
現地にあるアカ族の子どもが通っている学校で日本語を教えるボランティアをしました。
ただ日本語を教えるだけでなく、何か形になるものを残したくて、現地の子どもに授業の中で絵を描いてもらい、私が文章をつけて絵本を作成。
日本に帰ってきてから、地元の小学校や特別支援学校で授業をやらせてもらっています。
道路や水路の補修をするボランティア活動もしましたが、いろいろな国の人とかかわることで、国際協力について考えるきっかけになりました。
アカ族の村では、竹で造った家に泊まり、水しか出ない環境で、ドクダミや虫も食べましたが、わりといけましたね。
タイの料理は全部辛いとか、貧困地域に住んでいる人は不幸なんじゃないかとか、いかに自分が先入観をもって物事を決めつけていたのか気づかされました。
辛くない料理はいくらでもあったし、幸せそうに暮らしているすてきな人はたくさんいるんです。
もっと海外の地域研究をしたり、政策を学びたいと考えるようになり、留学をきっかけに、進路希望も大きく変わりました。
みんなと同じような不安を抱えつつ、それぞれの方法で克服していった先輩たち。
留学の不安を解消するには
1)自分なりの目標をもつこと
2)頼れる人を確保したり、安全情報を事前に調べること
3)「日本とは違う」 を楽しむこと がポイント
現地に行ってみて初めてわかること、学ぶことも多いので、留学をした高校生や大学生の先輩から情報収集すると安心だけど、あまり心配しすぎず、思いきって行ってみるのもアリかも?
高校生のうちに海外留学をすれば、数週間の短期間でも大きく成長できるし、モノの見方、考え方が変わって、新しい世界が開ける!
留学への道のりは、「トビタテ!留学JAPAN」の「高校生の留学準備ガイド」も参考にしてみて。
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※2019年1月スタディサプリ進路調べ
※2019年3月の取材時点の内容になります。