「調査書」には何が書かれている?大学受験で重要視されるのはどこ?
大学を受験するとき、必ず大学へ提出しなければいけないのが「調査書」。高校受験で出願するときに、中学校の先生からもらったことがある人も多いのでは?
調査書は、封筒に入れられて、しっかり封をされているから中身が見えず、何が書かれているのか、気になるよね。
そこで、大学受験の調査書にはどんなことが書かれているのか、大学入試の合否にどれくらい影響するのか、調査書をもらう際の注意点、調査書で高評価を得るためにはどうすればいいのか、教員歴37年の進路指導のエキスパート、龍谷大学高大連携推進室の堀 浩司先生に聞いてみたよ。
堀 浩司先生
滋賀県の公立高校(守山高校、草津東高校など)で教員歴37年。
「行き先指導ではなく生き方指導」「家から近い大学ではなく夢から近い大学」などを大切にした、3年間の体系的な進路指導を推進。
現在は、龍谷大学高大連携推進室フェロー、旺文社『蛍雪時代』アドバイザー、さんぽう講師としても活躍中。
目次
調査書とは?
調査書とは大学入試の出願時に必須の書類
調査書とは、出身高校または在学中の高校で発行される書類で、入学志願者の学業成績、特別活動の記録、出欠状況などが記載されたもの。大学を受験する際には、総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜のすべての出願時に必ず提出しなければならない書類だ。
また一般選抜でも、入学試験の点数が合否のボーダーライン上だった場合には、調査書の内容が合否に影響することもあります。(堀 浩司先生/以下同)
調査書には何が書かれているの?
教科ごとの成績、特別活動の記録、出欠など
実際の調査書はこのようなものになる。※調査書(様式)文部科学省「大学入学者選抜実施要項」より
ちなみに高校受験の場合は、各都道府県によって調査書の様式が異なっている。
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1)各教科・科目等の学習の記録(学年別・科目ごとの5段階の成績と修得単位数)
2)各教科の学習成績の状況(評定平均値)
3)学習成績概評(高校3年間の成績をA~Eの5段階で表したもの)
4)総合的な学習の時間の内容・評価
5)特別活動の記録(生徒会役員・委員会活動・学校行事の役員など)
6)指導上参考となる諸事項(部活動・ボランティア活動・留学、取得資格・検定、表彰・顕彰など)
7)出欠の記録
(※注1)調査書の発行時期により異なる。1月出願の場合は3年生の2学期まで、3月以降に出願する場合は学年末まで(以下同)
「学習成績概評」では、評定平均値によって、A=5.0~4.3、B=4.2~3.5、C=3.4~2.7、D=2.6~1.9、E=1.8以下 の5段階に分けられている。
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大学受験の調査書に記載される全体の評定平均値は、高校1年生から3年生の1学期(※注1)までの間に履修していた全科目の評定を合計して科目数で割ったもの。
教科ごとの評定平均値は、その教科の科目すべての評定(5段階の成績)を足して、科目数で割ったもの。
「全体の評定平均3.5以上」「全体の評定平均が4.0以上で、英語は4.3以上」など、学校推薦型選抜の出願条件で一般的に使われる基準となる。
2021年度から調査書の成績以外の欄が増えた
2021年度から調査書の様式が変わり、「指導上参考となる諸事項」の記載欄が拡充された。②行動の特徴、特技等
③部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等
④取得資格・検定等
⑤表彰・顕彰等の記録
⑥その他
さらに、大学が指定する特定の分野において、特に優れた学習成果を上げたことを調査書の備考欄に記載されるようになった。
※部活動を頑張れば調査書でアピールできる
調査書で合否が決まることがあるの?
学校推薦型選抜では調査書の点数も重要
その場合、調査書の評定平均値が出願基準を満たしているかどうか、必ずチェックされます。
さらに公募制の学校推薦型選抜では、調査書を点数化し、学科試験や面接や小論文などの得点にプラスしたうえで合否を判定するケースが多いようです。
調査書の点数化の例として一般的なのは、評定平均値×10倍(50点満点)。
大学によって、学科試験や面接や小論文などと調査書の配点の割合は異なるので、志望校の入試要項を確認しておきましょう。
また、私立大学の場合、公募制の学校推薦型選抜では、A方式「調査書を点数化して判定に加味する方式」とB方式「調査書を加味しない方式」の選択が可能で、A方式とB方式の両方に出願できる大学が多くあります。
大学や学部によっては、部活動での全国レベルの活躍や資格・検定の取得が点数化されることもあります。
その一方で、学校推薦型選抜でも「調査書は参考程度」という大学もありますが、一般的には評定平均のみが合否に大きく関係すると考えてよいでしょう。
指定校制の学校推薦型選抜では、出願基準に欠席日数が含まれることもあり、欠席が多いと、面接時に質問されるかもしれません。
※面接試験のときに調査書をみて質問されることも
一般選抜で調査書が合否に影響することは少ない
なかには、入学試験の点数が合否のボーダーライン上だった場合に調査書の内容で判定されることもありますが、原則として、一般選抜では調査書はあまり合否に影響しないと考えてよいでしょう。
2022年度から実施されている高校の新しい学習指導要領で、「知識・技能」「思考・表現・判断」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点について3段階(A・B・C)で評価する「観点別評価」が導入されていますが、現時点では、観点別評価は点数化しないというのが文部科学省の方針となっています。
調査書をもらうときの注意点は?
時間に余裕をもって調査書の発行を申請
調査書をもらうには、高校の担任の先生に「調査書発行願」などの書類を提出する必要がある。必要な書類に記入して、保護者の署名・捺印を求められるケースが大半。
出願の2週間前までに調査書発行願を提出する、といったルール(申請期限)を設けている高校が多いので、ガイダンスなどでしっかり確認しておきましょう。
調査書の発行依頼のスケジュールとしては、学校推薦型選抜は11月から出願が始まるので、10月下旬~11月上旬に調査書発行願などの書類を提出。
一般選抜は1月初旬から出願が始まるので、12月下旬に調査書発行のピークを迎え、依頼が集中すると発行までに時間がかかることもあるため、日程的な余裕をもって早めに申請をすることが大切です。
地方試験を実施している大学の場合、出願が早い順に自宅近くの会場を入試会場に割りふってもらえるケースがあるので、冬休み中に調査書をもらっておき、受付開始日に出願するといいですね。
1件の出願ごとに調査書1通が必要
大学入学共通テストの出願に調査書は不要だが、それ以外の総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜では、出願するごとに調査書を1通、必ず提出することになる。同じ大学の複数の学部・学科に同時出願するときは調査書が1通でOKというケースもありますが、出願時期が異なれば出願ごとに調査書が必要となるため、入試要項を確認して、全部で何通の調査書を発行してもらうのか計算しておきましょう。
公立高校の場合、現役生は無料で調査書を発行してもらえることが多いのですが、私立高校では1通につき300~500円程度かかることもあります。
学年別・調査書で高評価を得るには?
高校1年生は普段の勉強を頑張る
評定平均は、高校1年生と2年生の各学年の成績と3年生の1学期(注1)の成績の平均値になるため、高校1年生のうちから好成績を上げるよう、頑張りましょう。
情報・家庭基礎・芸術など、高校1年生しかない科目は、1年間だけの成績で評定平均が決まってしまうので、しっかり取り組んでおくこと。
学習の評価は、定期テストだけでなく、小テスト、提出物、授業態度などが総合的に評価されます。
2022年度からの新しい学習指導要領では、主体性や対話的で深い学びが評価されるので、グループ学習で積極的に発言をしたり、活動のときにアピールしたり、まじめに先生の話を聞いて黒板を写すだけでなく、自分から進んで学習に取り組む姿勢をみせるといいですね。
定期テストの点数だけで成績が決まるというケースが少なくなってきているので、積極性をみせる授業態度を心がけましょう。
※グループワークでリーダーシップをとろう
高校2年生は特別活動や検定にも取り組む
資格・検定試験にも挑戦するといいですね。
特に英検は、学部によっては(国際系の学部など)学校推薦型選抜の出願基準になったり、合否判定の際に加点されたり、「みなし得点」(例えば「英検2級を取得していれば、英語の得点を70点とみなす」など)として使われたりするだけでなく、試験対策の勉強が入学試験に生かされることもあるので、受検しておきたいところ。
私立大学の学校推薦型選抜では、部活動のキャプテン、生徒会の役員、ボランティア活動などが調査書で点数化されることもあるので、やっておくと有利な場合も。
ただし時間的に余裕があれば、というレベルで、そのために勉強がおろそかになってはいけません。
軸足はあくまでも評定平均を上げることに置きましょう。
高校3年生は1学期に全集中!
つまり3年生の1学期は、1年生と2年生でそれぞれ1年間頑張った成績と同じ価値があるのです。
1学期に猛勉強すれば、評定平均を0.3程度上げることも可能。
逆に、3年生の1学期の成績をガタ落ちさせたら、それまで2年間の頑張りが台無しになってしまいます。
3年生だけ履修する科目なら、1学期の成績がそのまま調査書に記入されます。
一般選抜の入試科目でもある科目は、評定平均を上げるためだけでなく、一般選抜を受験することになった場合、勉強した分だけ自分の力になっているはずなので、3年生の1学期の頑張りは、決して無駄にはなりません。
部活動でも、3年生の最後の夏はインターハイ予選や全国コンクールがあり、結果をだせば調査書でポイントになります。
3年生の1学期こそ、勉強に部活動に全集中すれば、調査書で高評価を得ることができるのです。
まずは現状を見極め、今からできることを頑張ろう
調査書は、学習の記録や部活動の実績、資格・検定など、点数化されるところを頑張ると、特に学校推薦型選抜で合格に近づくことができる。高校3年生になってからでも、調査書で高評価を得る方法はある。
各学年ごとにできることがあって、いつから始めても遅くはないから、頑張ってみよう!
文/やまだみちこ 取材協力・監修/堀 浩司 構成/寺崎彩乃(本誌)
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