巨大作品を部員全員で作りあげる! 開成学園折り紙研究部とは?
東京都にある開成学園には「折り紙研究部」という珍しい部活がある。
普段は、個人で折り紙の技術を高めているが、一年に一度、文化祭の時期には、部員みんなで巨大な折り紙作品を作りあげるのだとか!
9月の文化祭に向けて、夏休みには3日間の合宿を決行するという。そこで早速、合宿中の折り紙研究部をたずねてみることに。
4m超えの紙で作る巨大折り紙!
“巨大作品"といっても、そもそもどれくらいのものなんだろう? 1年生で部長の笠島歩くんに聞いてみた。
「文化祭での巨大作品展示は10年ほど前からやっていて、毎年、2m超えのものを作っているんですよ。今年は、高さ1m、横幅2mほどのワシを作ります。僕たちは、『1枚の紙を折って作らなきゃ折り研じゃない!』と思っているので、パーツを作って張り合わせることはしないんです。だから、完成形のサイズから逆算すると、今年は4m30cm四方の紙を折り畳んでいかないといけないんですよ! でも、そんな巨大な紙は売ってないので、模造紙サイズのものを24枚分張り合わせて、大きな正方形を作るところから始めます」
2m超えの折り紙なんてすごい! 教室に並べられた紙は、床をほぼ埋めつくすほどの大きさ!
「鳥の毛羽立った感じを出すために、紙はあえて繊維が見えているものを選びました。紙が厚すぎると、折り重なっていくときにかたくて折れなくなってしまうし、薄すぎると破れてしまうので、ちょうどいい紙を選ぶのもけっこう難しいんですよ」(高2・高橋佑太郎くん)
そんなこだわりの紙を張り合わせていく作業は、時間をかけて慎重に進んでいく。
「ビニールテープで紙と紙を張り合わせるのですが、隙間ができたり、しわが寄ってしまうと、ピシっと折れなくて完成したときにキレイに見えないんです。あと、ビニールテープが重なりすぎて厚みができてしまうと折りにくいので、そこも計算して張っていますね」(高2・井上良樹くん)
紙を張り合わせる作業だけで3時間が経過。ようやく4m超えの巨大正方形ができあがり、いよいよこれから折る作業に入るかと思いきや…!?
「ここからは、まず“折り目"をつけていきます。普通サイズの紙で一度ワシを折って広げたものがあるので、この折り目を参考にしながら巨大な紙に筋をつけていくんですよ。今年、僕らが挑戦しているワシは220工程あるので、全部の折り目をつけるために、折って筋をつけて、また広げて…という作業を延々とくり返します。これだけで半日以上かかりますね」(高橋くん)
考えただけで気が遠くなる…。でも、この“折り目"をつける作業が、折り紙を折るうえで一番重要なのだそう。
「ここでつけた折り目を目印にして折っていくので、1mmでもズレると、完成したときに左右対称にならなかったり、うまく立たなかったりするんですよ。それに、一度折り目をつけると消えないので、何度もやり直すと正しい線がどれかわからなくなって、失敗のもとになるので気が抜けません」(高2・吉川晴矢くん)
部長の笠島くんを中心に、26名の部員がみんなで協力して紙を持ち上げて折り目をつけていく。「こっち押さえてるからひっぱって」「まだ折り目はつけないで!」と声を掛け合い、息を合わせて集中しながら作業が進む。
「紙が大きくて重いので、みんなで動きをそろえないと破れてしまうんです。ゆっくり立ったり座ったりをくり返すので、足も腰もかなり痛くなりますね。それに、毎日何時間も紙を折っていると、皮膚が薄くなってくるんですよ。そのせいで、熱いものが持てなかったり、指紋がなくなる人もいます。あと、折り目は爪でつけるので、爪が割れることもあって…。地味に大変なことが多いんですよ」(吉川くん)
巨大折り紙作りは、見た目以上に体力と精神力が必要なんだ…!
展示して初めて巨大作品作りが完了!
折り目をつけたあとは、ひたすら折る作業が続くという。合宿中だけでは完成できないので、文化祭前の2週間は、毎日2~3時間も折り続けるとか。
「折り進めていくと、大きかった紙がどんどん小さくなっていくんですよ。それがすごくうれしくて。やっと完成したときには、『あ~、もう折らなくていいんだー!』という解放感でいっぱいになります(笑)」(笠島くん)
「折り終わったあとは『いかにカッコよく展示するか』っていう方向に意識が向くんですよね。今年でいうと、ワシの翼にワイヤーを入れて天井からつるしたら迫力が出るんじゃないかとか、ツヤ出しスプレーをかけた方がリアルに見えるんじゃないかとか…。結局、文化祭の前日まで作業してると思います」(高橋くん)
折り終わってからも作業が続くなんて大変…! 手間も時間も集中力も必要な巨大折り紙作りに、ここまで夢中になれるのはなぜなんだろう?
「みんなで協力して作るものだからだと思います。普段は個人で作品を作っているので、みんなで団結して作業をするのがすごく楽しいんですよね。うまくいくと、『やったー!』って一緒に盛り上がれるのがうれしくて。大変なことも多いけど、部員同士で励まし合えるからこそ、頑張れるんだと思います」(井上くん)
「文化祭で作品を見てくれた人が、『こんなのどうやって作るの?』って聞いてくれたり、『すごい!』って驚いてくれたりするのを見ると『大変だったけど頑張って良かったな』って思えるんです。今は、折り紙作家さんが考えた作品を折っているのですが、いつかオリジナル作品を作れるようになるのが目標です」(笠島くん)
「折り紙の可能性は無限大です!」と井上くん。
この巨大折り紙作品を文化祭で見て感動し、折り紙研究部への入部を決めたという部員もいるほど、迫力と見ごたえのある彼らの作品。
今年は、9月24日、25日に行われる開成学園文化祭で見ることができる。巨大折り紙のスケールに圧倒されたい人は、ぜひ行ってみては?