講談社は、社内に校閲部を持つ数少ない出版社です。校閲というと、誤字脱字や文法の間違いを正す仕事と思われがちですが、それだけではありません。私が担当している幼児誌の校閲では、イラストで描かれた怪獣の特徴や名称が合っているか資料で調べたり、付録の工作キットを実際に組み立てて、つくり方の説明文を検証したりすることも。また、当社の幼児誌は、平仮名だけの文章を子どもが理解しやすいように文節で言葉を区切る「わかち書き」を採用しているので、正しく記述されているか確認することも必要です。違和感や間違いに気づけた時は、読者の疑問や戸惑いを未然に防げたこと、書籍の信頼性を守れたことに、大きなやりがいを感じます。
言葉に興味があり、入学した名古屋外大の日本語学科では、言語学を専攻し、言葉の性質や使われ方を探究しました。また、日本語以外を母語とする人への日本語の教え方を学ぶ、「日本語教育」の授業も印象深いです。普段、何気なく使っている日本語のなりたちやルールを理解できたことで、言葉の細かなニュアンスや意味の違い、文章の誤りを論理的に考える癖がつき、今では仕事に必須の素養となっています。校閲は、繊細なうえ、時間的な制限もあるタフな仕事ですが、それでも新しいゲラ(校閲用の仮刷り)を受け取るたびにワクワクするのは、大学時代に得た「言葉って面白い」という感覚が、こころの真ん中にあるからにほかなりません。
総合出版社である講談社は、文芸書、絵本、ファッション誌、漫画、児童書など、さまざまな出版物を発行しています。ですので、それらのジャンルを一通り経験し、一日も早くすべての出版物に対応できる校閲者になるのが今の私の目標です。そのために、日頃から幅広い分野にアンテナを張り、知識や情報の貯金をしているところです。まだまだスタートしたばかりですが、念願の校閲職に就き、日々新しい情報や表現を目にするなかで思うのは、「正しい日本語」に正解はないということ。今後もさまざまな部署で経験を重ねながら、その時々に最も相応しい言葉や表現を、楽しみながら丁寧に追っていきたいと思っています。
株式会社講談社/外国語学部 日本語学科(2019年4月 世界教養学部 国際日本学科に改組)/2018年3月卒/大学で「マスコミ業界研究グループ」に参加したのがこの業界との出会い。学内新聞を制作する「新聞班」で企画を立てたり、取材に出かけて記事を書いたりするなかでマスコミ業界への就職を考えるように。そして3年次に参加した新聞社のインターンシップで、「校閲が向いているのでは?」と助言をもらったのを機に、就職活動は校閲職1本で勝負した。「後輩の皆さんには、自分は何が好きなのか、何をしたいのか。たくさん挑戦しながら自己分析を深め、進路や仕事選びに役立てて欲しい」と渡辺さん。