授業では、国語科の教員になるために、国語科の「捉え方」や「教え方」を学びます。筆者の意図を読む力、相手に伝わる話し方、読みやすい文章の書き方も大切です。しかし、それと同時に学生の皆さんには「ことば」を使って自分自身と向き合ってもらいたいのです。私は教育現場で国語の先生をしながら、「性の多様性」についてずっと考えてきました。どうして女の子は自分を「おれ」と言ってはいけないの?男の子らしい話し方って何だろう?自己と、他者と、この世界と自分はどのようにつながるのか、「ことば」を使って考え実践することのすべてが、国語教育の内容であると考えています。さまざまなひと・もの・ことに対する見方・考え方について、「ことば」を通じて働かせるような国語教育について研究しています。
永田ゼミで学ぶ学生の研究テーマは様々ですが、研究の過程で全員がぶつかる課題があります。それは、20年間で形成されてきた学生たち自分自身。ある学生は自身の性自認について掘り下げ、またある学生は友人との関係について向き合いました。「自分を理解せず他者を理解することはできない。自分の“ものさし”を認識してから他者との対話がはじまります」と永田先生は伝えます。社会に出る直前の最後の4年間、自分自身の“ものさし”を表す「ことば」に出会うための旅に、永田先生は優しく寄り添っています。
迷ったり悩んだりする人こそ、いい先生になる。誠実に子どもと向き合いたいという気持ちが一番大切です。多様なバックグラウンドをもつ人々と出会い、他者に対して立ち止まることを大学で経験してください。
専門:国語教育学、ことばの学びとマイノリティ
広島大学大学院教育学研究科学習開発専攻カリキュラム開発分野博士課程後期修了。博士(教育学)。中学校・高校国語科教員等を経て現在に至る。ジェンダーや性の多様性と国語教育をつなぐ仕事とともに「自分と誰かの多様性に気づき、大切にできる教員」の養成に取り組んでいる。
著書『性の多様性と国語科教育―言葉による見方・考え方を働かせる授業づくり』(明治図書)