事故や病気による身体の慢性疼痛(長期間持続する痛み)を専門とし、中でも「幻肢痛」について研究しています。「幻肢痛」とは、失ったはずの手足に強く持続的な痛みを感じる現象です。事故や病気で手足を切断した方の半数以上が経験すると言われ、慢性疼痛の中でも重症度の高いものでありながら治療法は確立されていません。幻肢痛のメカニズムは、手足を失ったことにより脳が警告信号として発する痛みです。この痛みを軽減し、生活で使える手(義手)を再獲得することが私の研究主題です。現在はバーチャルリアリティ(VR)技術を用いて、失ったはずの手足が動く錯覚(運動錯覚)を引き起こし、痛みを軽減させる試みを行っています。作業療法士として、患者さんの痛みが解消された先にある、“日常生活への復帰”をめざして日々取り組んでいます。
担当講義「補装具治療学」では義肢や装具の構造・使用方法などを解説します。その際、先生が特に意識しているのは体感と視覚的なわかりやすさ。義肢・装具を初めて目にする学生も多いため、実際に「見て・触って・装着して」重量や装着感、操作方法を学べるよう授業を計画しています。現役の作業療法士である強みを活かし、臨床における義肢・装具の作業療法場面や生活での使用場面の動画を教材として用いることも。患者の気持ちを理解し、寄り添える作業療法士を養成するために臨床のリアルな声を伝えることも大切にしているといいます。
作業療法士は「日常生活を支援する専門家」です。日常生活動作を再獲得するための支援を通して、患者さんの苦労も喜びもともにする伴走者でもあります。より多くの人が自分らしく生きるために、一緒に学びましょう。
専門分野/義肢装具学(義手)、慢性疼痛(幻肢痛)
略歴/川崎医療福祉大学 医療技術学部リハビリテーション学科(現:リハビリテーション学部作業療法学科)を卒業後、作業療法士として川崎医科大学附属病院に勤務。2020年、川崎医療福祉大学 リハビリテーション学部作業療法学科へ入職し後進の指導に携わる。同時に広島大学大学院 医歯薬保健学研究科・博士後期課程にて学びを深め、現在に至る。講師。博士(保健学)。