私が手がけている研究は、小惑星探査の技術です。小惑星の表面から地中深くの堆積物の層を崩さずにサンプリングするパイプ状の掘削機器に活用したのが、日本刀の技術。材料も製作方法も形状も日本刀の技術を用い、小さな力学的条件で深く刺さるパイプの先端を作り上げました。また、民間の宇宙企業が行う「人工流れ星プロジェクト」にも携わっています。人工衛星から放出される人工の流れ星の観測を通じ、流れ星や気候変動のメカニズムなどの解明を目指しています。私は流れ星のもとになる粒子を人工衛星に格納する装置を開発。今年中に人工流れ星が空を彩る予定です。私の研究に共通しているキーワードは「地球生命の起源」。地球生命は宇宙から来たという仮説もあり、私の研究がその秘密を探る糸口になるかもしれないと考えると、ワクワクしますね。
豊かな創造性を備えた機械エンジニアを育てる機械工学科では、航空エンジニアの養成を目指す「航空宇宙学専攻」も設置。先端技術を駆使した研究を展開する。3年次に行う「航空宇宙プロジェクト」では、1グループ6人ほどで設定されたミッションに挑戦する。渡部先生の授業では、たたまれていたパネルを展開するメカの製作というミッションを設定。「プロジェクトでは、失敗も貴重な経験に。失敗を克服するにはどうすればいいかを考えて行動することが重要なのです」と渡部先生。実際に目で見て体験して理解を深めることを重視している。
テクノロジーは世の中を便利にすると共に、生命の秘密や流れ星など心を豊かにし、ロマンにつながるもの。「メカの構造は?」「動く仕組みは?」など様々なことに興味を持つことが、機械工学や宇宙研究の第一歩です!
東京立科学技術大学大学院博士後期課程修了後、首都大学東京システムデザイン学部研究員、同大学助教、帝京大学理工学部講師を経て、2017年より神奈川工科大学工学部准教授、2022年には教授に就任。展開構造物や伝統技術を応用したサンプリング機構の研究を手がけ、新たな宇宙技術の開発に携わっている。