幼稚園教諭と保育士の違いって?働いている人に聞いてみた!
「子どもが大好き!」「子どもに携わる仕事をしたい!」そんな高校生たちのあこがれの仕事といえば、幼稚園教諭と保育士。
なりたい職業ランキングの女子部門で、必ずといっていいほど上位に入っている。
実は、幼稚園教諭と保育士の資格は、大学や短大、専門学校などの養成施設を卒業すれば、同時に取得可能なので、両方の資格をもっている人が多い。
しかし、仕事の内容は、似ているようで、大きく異なっているところもある。
そこで、幼稚園教諭と保育士それぞれに、なぜその職業を選んだのか、仕事のやりがいについて、お話を聞いてみた。
幼稚園教諭の場合
子どもとのコミュニケーションが楽しくて幼稚園教諭に
まずは、神奈川県藤沢市の「もみじ幼稚園」に勤務して2年めの植田晴菜さん。
※「もみじ幼稚園」に勤務して2年めの植田晴菜さん
幼稚園教諭になろうと思ったきっかけは?
中学1年生まではパティシエにあこがれていたのですが、2年生の職場体験で保育園へ行き、小さな子どもとかかわって、「あ、楽しい」「好きだな」と感じたのがきっかけ。
それ以来ずっと幼稚園か保育園の先生になりたいと考えていました。
だから、高校3年生で進学先を決めるとき、迷わず4年制大学の児童学部を選択。
受験した大学には短期大学部もあり、どちらでも資格は取得できますが、4年間じっくり学ぶほうが自分には向いていると思ったのです。
大学入学当初は、保育士を目指していましたが、2年次の実習で幼稚園へ行ったとき、担任としてクラスがもてることにやりがいを感じました。
子どもとのコミュニケーションが楽しかったので、意思疎通がしやすい3歳児から5歳児の幼児期に携わる幼稚園の先生になろうと決心!
正直に言って、幼稚園だと夏休みや冬休みなど長期休暇がとりやすいことも魅力でした。
園長先生の雰囲気を重視して、小規模の幼稚園を選んだ
大学4年次には、幼稚園1本で就職活動を始めたという植田さん。
「もみじ幼稚園」には、どうやって就職したの?
公立か私立か、特にこだわりがなかったので、いろいろな幼稚園を見学しました。
私立の場合、幼稚園によって、募集開始の時期は9月から12月くらいまで幅広く、採用試験の内容も違っていたんです。
なかには、採用試験でラジオ体操をする幼稚園も。
運動会などの行事を見学すると、幼稚園の雰囲気がわかるので、それを見てから決めるのがいいと思いました。
私の場合は、自宅から通いやすい範囲内にある幼稚園をインターネットで検索して、気になったところに電話で見学の申し込みをしました。
園長先生の雰囲気を重視していたのですが、「もみじ幼稚園」の園長先生に会って、「この園で、この先生のもとで働きたい!」と思ったので、この幼稚園一本で採用試験を受けました。
1学年1クラスの小規模の幼稚園で、子どもたちと密にかかわることができるのも、選んだ理由の一つです。
※幼稚園ではピアノを弾くことも多い
幼稚園児が楽しく遊んでいるなかに「学び」の要素も取り入れていく
植田さんは、現在、年中(4歳児)クラスの担任。
1クラス32人の園児をチーム保育という幼稚園の体制でほかの教諭とも協力しながら受けもっている。
幼稚園教諭の仕事はどんなことをしているの?
子どもたちがいるのは、基本的に9時から14時ですが、預かり保育もしているため、早い子は8時30分に登園して、18時までお預かりしています。
就職して1年めに年少(3歳児)クラスの担任をまかされ、そのまま持ち上がって、今の年中クラスを受けもっているので、少しは子どもたちのことがわかってきたかなという状態。
最初の年は、お互いに新1年生だったので、バタバタしているうちに過ぎていった、あっという間の1年でしたね。
毎日どんな遊びをするのか、担任がカリキュラムを考えているのですが、幼稚園では遊びのなかに「学び」の要素も取り入れていくことを求められます。
ちょっと難しかったかな、と反省することもありますが、子どもたちの反応が良かったり、楽しそうにしているのを見ると、準備を頑張って良かったなとうれしくなりますね。
※幼稚園児に絵本を読み聞かせる植田さん
※幼稚園児の作品を展示するのも大事なお仕事だ
子どもの「できた!」をサポートしながら、幼稚園教諭として一緒に成長
子どもたちとコミュニケーションできる毎日が楽しいという植田さん。
幼稚園教諭としてのやりがい、これからの目標は?
「逆あがり、できたよ!」「見て!」と笑顔で報告してくれたり、休み明けの朝などは家であったことを言いたくて競うように駆け寄って来てくれたり、子どもたちとのコミュニケーションが本当に楽しいです。
子どもたちが発信してくれることを大切にしたいので、一人ひとりの話をできるだけちゃんと聞いてあげるよう、気を配っています。
心がけているのは、子どもたち一人ひとりへの声がけです。
次への1歩を踏む出せるように今、どんな言葉をかけたら次も頑張れるだろうな、というところをみつけながら、自らが自信をもっていけるようにみんなの前でほめています。
自分の良さに気づかないままだと、もったいないですから。
もちろん、危ないこと、ほかの人にやってはいけないことは、子どもと共に考え自らが気がつくようにしています。
2年目ですがまだまだ私自身も試行錯誤しながら一つずつ前に進んでいます。
園長先生や他の先生方にアドバイスをいただきながら、1年めを乗り越え、2年めで少しは視野が広くなったと思います。
子どもに対する気づきも多くなり、体調の変化、いつもと違う様子などがあれば、親御さんよりも敏感に気づくことができることもあるんですよ。
子どもの「できた!」をサポートして、一緒に喜ぶことができるのが幼稚園教諭。
子どもたちと共に成長して、卒園まで見届けたいですね。
「先生、大好き」の子どもたちの気持ちが本当にうれしいです。
子どもたちのあこがれの存在でもありたいと思っています。
※植田さんが働くもみじ幼稚園。園庭には立派な遊具が!
保育士の場合
小さな子どもが笑顔を見せてくれるのがうれしくて保育士に
続いては社会福祉法人 川崎保育会「ももの里保育園」に勤務して4年目の鈴木美乃さん。
※「ももの里保育園」に勤務して4年目の鈴木美乃さん
保育士になろうと思ったきっかけは?
私が通っていた小学校は、1学年1クラスで、地域に子どもが少なかったため、学校から帰ったら家のまわりで学年に関係なく遊び、高学年になると下級生の面倒をみていました。
小さい子どもの笑顔を見るのがうれしくて、中学生のころには保育士になりたいと考えていたんです。
高校2年生になると、放課後は保育園でボランティアをしていました。
当然のように短期大学で保育を専攻。
学生生活を楽しみつつ、しっかり学びたかったので、3年制の学校を選びました。
私が通っていた短大では、幼稚園2回、保育園2回、福祉施設1回、各2週間ずつの実習がありましたが、やはり私は、集団に対する教育よりも、小さな子ども一人ひとりのお世話をしっかりしてあげたいという気持ちが強かったので、保育士を目指しました。
子どもたちがよく笑っている保育園の雰囲気に「ここで働きたい!」
短大の2年次までに単位をほとんど取っていたので、3年次は就職活動に専念する余裕があったという鈴木さん。
「ももの里保育園」には、どうやって就職したのだろう?
夏休み前から保育園見学を始めました。
実習で、株式会社の保育園と社会福祉法人の保育園を経験して、自分には社会福祉法人の保育園の方針が向いていると実感。
公立の保育園も考えましたが、社会福祉法人をメインに、自宅から通勤可能な範囲内で保育園を探し、電話で問い合わせをして、園長先生にお会いしました。
10園以上は訪問したと思いますが、そのなかで一番雰囲気が良かったのが「ももの里保育園」。
まず園長先生が、お忙しいのに1時間くらい時間をとって、「大学生活はどうなの?」「どんなアルバイトをしているの?」「どんな子どもに育てたいと思う?」などと、親身にお話してくださったんです。
園内を見学すると、子どもたちがよく笑っているし、先生方が大声で怒鳴ったりしていない。
この園なら、自分も学びながら、楽しみながら、子どもたちと過ごしていけると思いました。
「社会福祉法人 川崎保育会」の採用試験を受けて、合格すると、運営する3園のいずれかに配属されるのですが、希望がかない、「ももの里保育園」に勤務することができました。
※園庭の遊具で遊ぶ子どもを見守る
複数の担任と協力して、子どもたちの成長を見守っていく
鈴木さんは、就職して1年めは2歳児クラスの担任、1歳児、2歳児を経て、4年めの現在は0歳児クラスの担任を任されている。
保育士のスケジュールや心がけていることを聞いてみた。
「ももの里保育園」では、7時から20時まで開園しているので、早番と遅番のシフト制になります。
早番は7時から16時、遅番だと11時から20時が勤務時間です。
最初の年は、2歳児クラス23人を担任4人で保育していました。
成長著しい2歳児は、着替えやトイレなど、自分でできることはなるべく自分でできるように指導しますが、保育士1年生の私は何でもやってあげたくなってしまう。
すぐ手を貸すことは、子どもたちのためにならないのだと気づかされる1年でした。
昨日できたことを今日もやりたがらなかったり、自己主張が激しい月齢の子どもに対して、どう声をかけていいかわからず、悩むことも。
そんなときは、先輩保育士に相談したり、背中を見て学んだこともあります。
先輩方は、いろいろな言葉の引き出しをもっているので、見よう見まねで、子どもたちと一緒に成長してきました。
心がけているのは、否定的な言葉を使わないこと。
「走らない」と叱るのではなく、「歩こうね」と言い聞かせる。
ていねいに話をすれば伝わるものです。
※保育園でも絵本の読み聞かせを行っている
保育士は子どもの笑顔と成長を一番近くで見ることができる
初めての0歳児クラスは、不安もあるけれど楽しみのほうが多いという鈴木さん。
保育士としてのやりがい、これからの目標は?
0歳児クラスでは、12人の子どもに対して担任4人、食事や寝かしつけはフリー保育士も入ってお世話をしています。
一人ひとりに手厚い保育ができて、子どもたちの笑顔を一番近くで見られるのがよろこび。
子どもの笑顔に変えられるものはありませんね。
近くに寄ってきてくれるとうれしいし、楽しく遊んで、どんどん成長していく姿を間近で見られるのは、とてもやりがいがあります。
保護者の方から「先生がこう言ってくれたおかげで、嫌いな野菜を一口食べられたんですよ」と家での様子を聞くと、自分のアドバイスが子どもに受け入れてもらえ、保護者の助けになれたかと思うと、励みになります。
0歳児から5歳児まで、発達に合わせた保育力を身につけることができるのはもちろん、元気な子どもが多いクラス、静かなクラスなど、クラスカラーにも合わせて、臨機応変に対応できる保育士を目指しています。
「鈴木先生のやり方っていいな」と後輩から目標にされるのが理想。
4年間ずっと乳児クラスの担任だったので、来年度からは幼児クラスも受けもちたいですね。
「子どもが好き」という気持ちがあれば、やっていける仕事だと思います。
※臨機応変に対応できる保育士を目指す
保育士・幼稚園教諭になるには
保育士資格、幼稚園教諭免許の取得方法は?
大学、短大、専門学校などの実習で、どちらを目指すか考えよう。
幼稚園教諭と保育士は、どちらも大学や短大、専門学校などの養成施設を卒業して、採用試験に合格すれば、仕事に就くことができる。
幼稚園教諭免許状を取得するには、幼稚園教諭養成課程のある大学などの養成施設で必要科目の単位を取得することが必要だ。
単位を取得していれば基本的に卒業と同時に免許が取得できるしくみなので、最低でも2年かかる。
また、取得できる免許は大学卒が一種免許、短大・専門学校卒は二種免許となり、種類によって給与や就職後のキャリアに違いが出る場合もある。
保育士も、保育士養成課程のある大学などの養成施設で必要科目の単位を取得すると、卒業と同時に保育士資格が取得できる。
また、養成施設で学ばなくても保育士国家試験に合格すれば資格を取得できるが、高校卒業後に養成施設以外の大学などで1年以上学ぶか実務経験2年以上の受験資格を満たすことが必要。
さらに、保育士資格取得後に3年以上の実務経験を経て、幼稚園教員資格認定試験に合格すれば、幼稚園教諭二種免許状が取得できる。
2015年4月1日から2020年3月31日までは、特例制度として、保育士の実務経験が3年以上(かつ勤務時間の合計4320時間以上)で、大学で8単位を修得し、各都道府県教育委員会の教育職員検定に合格すると、幼稚園教諭免許状が授与される。
※保育士・幼稚園教諭になるには?
幼稚園・保育園・認定こども園の違いって?
幼稚園教諭、保育士のいずれも、養成施設で2年以上学ぶか、試験に合格すれば資格を取得できるので、なり方はほぼ同じだが、受けもつ子どもの年齢が大きな違いだ。
さらに、幼稚園は「幼児の教育」を行い、保育園では「保護者に代わって保育する」という目的も異なる。
しかし、教育に力を入れている保育園や、保育園と同じくらいの長時間保育を行う幼稚園もあるので、仕事内容に関しては、園の方針によって変わってくる。
最近では、幼稚園と保育園の両方の良さを併せもった「認定こども園」という施設もあるので、自分に合った働き方を考えてみよう。
幼稚園教諭・保育士のどちらになるかは実習で現場を体験してから決めても大丈夫
大学や短大、専門学校などの養成施設では、幼稚園と保育園の両方で実習することができ、卒業と同時に、幼稚園教諭免許状と保育士資格を同時取得できる場合が多いので、高校生のうちに、幼稚園教諭か保育士のどちらを目指すのか決める必要はない。
実習で現場を体験して、自分がどういう環境で、どんな働き方をしたいのか、じっくり考えればいいのだ。
「子どもが好き」「子どもとかかわる仕事がしたい」という人は、幼稚園教諭と保育士の資格を取得できる大学、短大、専門学校への進学からスタートしよう。
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