管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

管理栄養士の仕事というと、学校給食の献立を考えたり、病院で食事指導をしたりする姿をイメージするよね。

コンビニのお弁当やスイーツで「管理栄養士監修」と書かれたパッケージを見たことがある人もいるのでは?

管理栄養士の職場は、病院や学校だけでなく、スポーツの現場、社員食堂、保健センター、高齢者施設、福祉施設、保育の現場、食品メーカー、研究・教育機関など、さまざま。

そこで、管理栄養士の仕事の種類と内容、管理栄養士になるにはどうすればいいか、勤務先・活躍の場、職場別・分野別の違い、給与などを詳しく解説。

実際に病院やスポーツの現場で活躍している管理栄養士に、仕事の内容、1日の流れ、やりがいなどについて話を聞いてきたよ。

目次

管理栄養士の仕事とは?

管理栄養士は栄養指導・給食管理・栄養管理のスペシャリスト 

管理栄養士の仕事とは?職場別・分野別にどう違う? 1日の流れ・やりがい・給与を徹底解説

※その人の現状、目標などに合った食事指導をする

管理栄養士は、厚生労働大臣の免許を受けた国家資格を取得しなければできない仕事。

病気などで一般的な食事ができない人、高齢で食事がとりづらくなっている人、障がいのある人などへの栄養指導や食事のアドバイス、学校や施設などの集団給食の献立作り、スポーツ選手に対する栄養管理、健康や美容のための栄養指導、食育、食品の研究や商品開発なども手がけている。

乳幼児から高齢者まで、あらゆるライフステージにおいて、食事や栄養についてのサポートを行うことができるスペシャリスト。

管理栄養士と、栄養士や調理師との違いは?

管理栄養士は、管理栄養士養成施設(4年制)を修了するか、栄養士の資格取得後に規定の実務経験を経た後、国家試験に合格すると免許を取得できる。

栄養士は、栄養士養成施設(2年制~4年制)を修了すると、無試験で都道府県知事から免許を受けることができる。

調理師は、調理師養成施設(1年以上)を修了すると無試験で都道府県知事から免許を受けることができるほか、2年以上の調理実務経験を経て国家試験に合格すると調理師免許を得られる。

管理栄養士は栄養士の上位資格にあたり、栄養士が主に健康な人を対象に栄養指導や給食の運営を行っているのに対し、管理栄養士は病気の人やアスリートなど特定分野に特化した専門的な栄養指導や栄養管理も行うことができる。

管理栄養士や栄養士は、仕事の内容によって調理を行うこともあるが、栄養素の計算や献立の作成がメインの仕事。

高度な調理技術は求められないし、まったく調理をしない仕事もたくさんある。

その一方で、調理師は調理のプロで、栄養学をふまえたメニューを考えることはあっても、栄養価の計算までは行わないことが多い。 管理栄養士の仕事とは?職場別・分野別にどう違う? 1日の流れ・やりがい・給与を徹底解説

  

管理栄養士になるには?

管理栄養士になるには国家資格が必須

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※管理栄養士は国家資格が必要な仕事

管理栄養士になるには、大学または専門学校の管理栄養士養成課程(4年制)を修了し、管理栄養士国家試験の受験資格を得なければならない。

その後、年1回、毎年2月下旬~3月上旬に実施される管理栄養士国家試験に合格して、厚生労働大臣の免許を受けると、管理栄養士になることができる。

そのほかに、大学・短期大学・専門学校の栄養士養成課程(2年~4年制)を修了して栄養士免許を取得後、規定の実務経験(栄養士養成施設での修業年限により1年~3年以上)を経ると、管理栄養士の国家試験の受験資格を得ることができる。

管理栄養士の国家試験の合格率は、令和4年の場合、4年制の管理栄養士養成施設の新卒者だと合格率92.9%だが、栄養士養成施設から実務経験を経て受験した人の合格率は28.8%でかなり差があり、管理栄養士の国家試験の受験者全体の合格率は65.1%(令和4年の場合)。 管理栄養士の仕事とは?職場別・分野別にどう違う? 1日の流れ・やりがい・給与を徹底解説

  

管理栄養士の勤務先・活躍の場・役割

管理栄養士にはいろいろな仕事と役割があり、「食」にかかわるあらゆる勤務先で活躍することができる。

医療・学校・スポーツ・福祉・保育・行政・研究など、幅広い分野があり、さまざまな職場で管理栄養士が働いている。

医療の現場の管理栄養士

病院や診療所に勤務。

患者一人ひとりの病状や身体の状況に合わせて、病気の改善、再発や合併症の防止を目指し、食事の提供や栄養指導を通して患者の栄養管理を行う。

医療チームの一員として、医師・看護師・薬剤師などと連携しながら治療に貢献する。

学校給食の現場の管理栄養士

小・中学校や特別支援学校、夜間の定時制高校などに勤務。

成長期に必要な栄養素の計算をして、学校給食の献立を作成する。

子どもたちが適切な食事をできるよう、栄養に関する知識を提供する食育のほか、食生活の改善や食物アレルギー・肥満・糖尿病などに対する個別指導を行うこともある。

スポーツの現場の管理栄養士

スポーツ関連施設に勤務するほか、フリーランスのスポーツ栄養士として活躍することもできる。

トップアスリートはもちろん、スポーツをするあらゆる人を対象に、運動能力を高めるための栄養や食事に関するアドバイスを行う。

パフォーマンスをアップするだけでなく、栄養面からケガや疲労が起こりにくい身体づくりのサポートも求められている。

社員・学校食堂の現場の管理栄養士

社員食堂や社員寮、高校・大学の食堂、学生寮などに勤務。

食堂の献立を作成したり、栄養についての正しい情報を提供したり、働く人や学生たちの健康づくりをサポート。

特に社員食堂では、年齢層が幅広く、さまざまな体質の人がいて、肥満や生活習慣病の予防対策が必要な場合もあるため、個人やそれぞれの集団に合わせた栄養素の計算やバラエティーに富んだ献立を考えることが必要となる。

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※栄養価を計算してバランス良い献立を作成

行政の現場の管理栄養士

地方公務員として、都道府県庁・市町村、保健所・市町村の保健センターなどに勤務。

乳幼児から高齢者まで、地域住民の健康づくりの政策の企画立案、健康づくりのセミナーの開催、栄養相談などを行う。

「食事バランスガイド」や「健康づくりのための身体活動基準」などの資料を作成・活用して、地域住民にとって健康づくりが身近になるような普及活動をすることも役割の一つ。

福祉の現場の管理栄養士

特別養護老人ホームや障がい者支援施設など、高齢者や障がいのある人を対象とした福祉施設に勤務。

一人ひとりの生活状況や身体状況に応じた食事を提供したり、栄養の指導・管理をしたりするのが主な仕事。

健康維持のために必要な栄養素の計算だけでなく、口や歯の状態に合わせて食べやすく飲み込みやすくする、少量でも適切な栄養が摂れるようにする、といった献立の工夫も重要。

介護スタッフや福祉施設のスタッフと連携しながら、利用者の健康をサポートする。

児童養護・保育の現場の管理栄養士

児童養護施設や保育園に勤務。

0歳から小学校入学前の子どもたちの成長に必要な調乳や離乳食、幼児食を提供する。

保護者や保育士、小児科の医師・看護師とも連携して、食物アレルギーに対応した適切な献立を考えたり、栄養指導をしたりする。

また、小学校入学以降の子どもたちに対しても、食材や料理に興味をもってもらい、正しい食生活ができるように食育を行うことも大切な仕事。

研究・教育機関の現場の管理栄養士

国や大学、企業などの研究室に勤務。

「食」について研究を行い、食と健康に関する科学的根拠を生み出し、社会に発信する。

食品会社などの企業では、健康に役立つ新たな商品を開発。

大学などの研究機関は、未来の管理栄養士や栄養士を育成している。

美容の現場の管理栄養士

エステティックサロンやフィットネスクラブ、トレーニングジムなどに勤務。

ダイエットや体質改善のための栄養指導、食事のアドバイスを行い、健康で美しいプロポーションづくりをサポートする。

フリーランスの管理栄養士

フリーランスの管理栄養士として、複数の仕事先と契約。

行政や企業からの依頼で、地域住民を対象にした栄養相談や健康イベントを実施したり、料理教室や健康講座を担当したりする。

病院や診療所の管理栄養士としては、在宅で療養している人や高齢者を訪問し、栄養指導や食事のアドバイスを行う。

テレビや雑誌、インターネット、SNSなどで料理や食に関する情報を紹介する仕事もある。
管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

  

管理栄養士の気になる給与は?

管理栄養士の平均年収は250万円~400万円

管理栄養士の仕事は、病院や学校をはじめ、さまざまな職場があり、勤務先によって給与に差がある。

全体的な年収は平均250万円~400万円程度。

公務員として働く管理栄養士は定期昇給が定められているので、年齢が上がるにつれて民間企業に就職した場合の平均年収を大きく上回っていく。

管理栄養士の統計が少ないため、参考までに栄養士の例を挙げると、

年収/平均367万5600円
月給/平均25万5500円
年間賞与その他特別給与額/平均60万9600円

出典:令和3年度 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

管理栄養士は栄養士の上級資格にあたるため、この給与額より少し上になると考えられる。 管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

  

病院勤務の管理栄養士にインタビュー!

東京都武蔵野市にある武蔵野赤十字病院で管理栄養士として活躍する森 裕司さんに話を聞いてきたよ。

管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

病院勤務の管理栄養士になろうと思ったきっかけは?

「小学校からサッカーをやっていて、身長が伸びなくて悩んでいた時、あこがれていた選手が食事に気を遣っていると聞き、『自分も食事を考えれば、その選手みたいに大きくなれるかな』と思って、食に興味をもち、栄養素を調べたりしていました。

母が給食センターの栄養士の仕事をしていることもあり、『食と栄養』は身近な存在だったと思います。

病院勤務の管理栄養士になろうと決めたきっかけは、高校1年生で持病の手術をするために入院した時。

食事療法が必要な症状ではなかったけれど、自分の病室担当の管理栄養士さんが、『今日のメニューは、ここがポイントです』『この食材には、こんな栄養素が含まれていますよ』と説明をしてくれたのがうれしかったんです。

母の姿を見ていたので『管理栄養士=給食センターで働いている人』というイメージでしたが、管理栄養士には、病院に勤務して、患者さんに寄り添い、サポートや励ましをする仕事もあることを知り、とても魅力を感じました。

自分の将来を考えた時、誰かに直接『ありがとう』と言われる仕事をしたいと思っていたので、病院勤務の管理栄養士になろうと決心!

大学の管理栄養士学科に進学して、管理栄養士の国家資格を取得し、武蔵野赤十字病院に管理栄養士として就職しました」
(森さん)

病院勤務の管理栄養士の仕事と1日の流れは?


管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

※患者のカルテからどんな食事指導をするか考える

8時30分~ 始業。患者のカルテをチェック

「現在は『消化器科・腎臓内科・外科』の病棟と『神経内科・脳神経外科・整形外科』の病棟の2つの病棟で、合計80人くらいの入院患者さんを担当。

その日に入院してくる患者さんの情報、現在入院中の患者さんの昨日の病状、検査データ、食事の摂取量、体調の変化などをチェックして、今日やるべきことを整理します」
(森さん)

10時~ 退院する患者や家族に対する食事指導

「消化器科や腎臓内科など、退院後も栄養指導や食事療法が必要な患者さんの病室をまわって、食事の指導をします。

患者さんご本人だけでなく、患者さんの食事を用意するご家族にも、資料などを渡して、入院中の食事の経過を説明し、退院後の食事についての注意点や摂取したほうが良い栄養素などのアドバイスを行います」
(森さん)

11時30分~ 医療チームでミーティング

「カルテをチェックした時に気になる患者さんがいたら、医師・看護師・薬剤師と今後の食事の方針などを話し合います。

食事を変更した患者さんの摂取量の変化、患者さんが何か言っていなかったか、看護師に確認することも大切な仕事です。

患者さんによっては、自分より看護師のほうが話しやすいという方もいるので、気になることを看護師に聞いてもらったり、逆に自分が聞いたことを医師・看護師・薬剤師に伝えたりすることも。

食事で必要な栄養を摂取できない患者さんがいたら、薬剤師にどれくらいのエネルギーを点滴で摂取できるようにしてほしいか、詳しいデータを伝えています」
(森さん)

12時~ 患者の昼食の様子を見て回る

「神経内科や脳神経外科の患者さんには、麻痺や障がいなどでうまく食事ができない、話ができないという方もいるので、実際に食事をしている様子を見に行きます。

例えば、カルテでは『食事の摂取率5割』と記載されていても、実際はおかずのみ完食して、ご飯を食べていないなど、偏った食事をされている場合があります。

何を食べられているのか、おかずの形状は妥当か、食べづらそうにされていないか、もう少し食事の難易度を上げても大丈夫か、自分の目で確認することは管理栄養士の役目。

看護師と情報共有したり、歯科医師と一緒に回診したりすることもあります。

患者さんの状態は日々変化していくので、しっかりと把握しなくてはいけません」
(森さん)

13時~13時45分 昼休み

14時~14時30分 患者のカルテをチェック

「朝チェックしたカルテから、何か更新されていないか、午前中の検査の結果がどうだったか、退院が決定した患者さんがいないか、チェックしています。

食事のオーダーはカルテに変更事項を入力するのですが、夕食のオーダー締め切りが14時30分なので、それまでに食事の内容を変更しなくていいか、迅速に検討する必要があります。

入院病棟の給食は業者に委託しているため、当院の管理栄養士が献立作成や調理を行うことはありません。

ただし、委託業者との献立会議に出席したり、検食をして食材の大きさや色合い、味つけなどをチェックして変更を依頼したりすることはあります」
(森さん)

14時30分~16時30分 病室を巡回またはカンファレンス

「カルテをチェックして、気になる患者さんがいたら、病室に行って、直接お話を聞きます。

カンファレンスがある日は、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・メディカルソーシャルワーカー・管理栄養士など、医療チーム全員で、患者さんの現状の情報共有をして、退院後の方針、自宅療養なのかリハビリなどのために転院するのか、話し合っています。

そのほかに、患者さんの食事相談に応じたり、食事調整をした患者さんのカルテを変更したり、患者さんの今後の栄養管理計画書を作成しています」
(森さん)

17時 終業

「入院している患者さんの状態によって残業をすることもあります。

勤務時間は、8時30分~17時または9時~17時30分で、管理栄養士の夜勤はありません。

週休2日で、基本的には土曜日と日曜日が休日ですが、休診日でも入院病棟には1人以上の管理栄養士がいないといけないので、土曜日や日曜日に出勤したら、平日に代休をとっています」
(森さん)

病院勤務の管理栄養士の仕事のやりがいは?

管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

※患者の生活スタイルに合った食事を提案

「自分が担当している病棟は、自力で食事ができなかったり、食事制限されていたりする患者さんが多くいらっしゃいます。

そういう患者さんが、食事を楽しめるようになり、検査データの数値はもちろん、肌ツヤが良く、表情も明るくなって、元気そうに退院されていく姿を見ると、ホッとします。

『食事おいしかったよ』と言っていただけるのもうれしいですね。

新人のころ、最初に担当した80代の女性の患者さんに対し、わからないことだらけだった自分にできることはハキハキ元気にふるまうことだと思い、明るく接していました。

すると、たまたま病室へ行けなかった日の翌日、『どうして昨日は来てくれなかったの?あなたと会うことは注射1本分くらいの効果があるのよ』と言ってくださったんです。

食事を調整する仕事だけでなく、会って話をすることでも、患者さんの力になれるのだと気づき、大きなやりがいを感じました。

患者さんとの雑談のなかでも、その方の考え方や普段の生活を知ることができて、退院後の食事指導のヒントになります。

例えば、外回り中心の営業職の方に規則正しい食事をするように伝えても、なかなか改善していただけません。

ファストフードならサイドメニューで何を付ければ栄養バランスが良くなるか、その方の生活スタイルに合った食事指導が重要なので、難しくはありますが、その分、やりがいも大きい仕事です」
(森さん)

病院勤務の管理栄養士に向いているのはどんな人?

「やはり食べることが好きな人。

患者さんが食べたいものを、どうすれば食べられるようになるのか?

自分自身が食べることに興味をもっていないと、提案の引き出しが出てこないと思います。

自分で料理をしてもいいし、外食をした時に『こういう調理法をすれば食べられるかな』『こんな色味だと食欲をそそるかも』『この盛り付けなら量が少なくても見栄えが良くて満足感を与えられそう』といった発見をたくさんできるといいですね。

病院勤務の場合、医師や看護師をはじめ、いろいろな職種のスタッフとチームを組んで患者さんをサポートするため、コミュニケーション能力があると役立ちます。

患者さんの話に耳を傾けることが何よりも大事なので、人とかかわることが好きで、人とたくさん話をすることが好きな人は、病院勤務の管理栄養士に向いていると思います」
(森さん) 

病院勤務の管理栄養士を目指す高校生へのメッセージ

管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

※患者と話したり観察したりすることがヒントになる

病院勤務の管理栄養士は、幅広い年齢層のさまざまな職業の患者さん、病院内のいろいろな職種のスタッフとふれあうことができて、やりがいの大きい仕事です。

医療チームのスタッフだけでなく、患者さんから学ばせていただくことも多くあります。

カルテだけでは判断できない場合があるので、自分は困ったら患者さんのところへ行くようにしています。

患者さんの話を直接聞いて、身体の様子を見て、時には食事中に飲み込んだ後の口の中を見せてもらうことも。

病気が原因ではなく、入れ歯が合っていなくて食事が進まないケースもありますから、とにかく患者さんをしっかり観察して、話を聞くことが肝心です。

進学先を決める時、自分は、志望校の卒業生の就職先をチェックしていました。

病院に勤務したいと決めていたので、病院に就職した卒業生が多い大学を選んでいます。

管理栄養士といっても、いろいろな専門があるので、どういう先生がいるか、何を専攻されているのか、調べておくといいですね。

病院勤務の管理栄養士は、結婚や出産を機にパートタイムや時短勤務にすることもできるため、長く仕事を続けられます。

管理栄養士は女性が圧倒的に多いものの、男性だからこそ男性の患者さんの気持ちに共感できるというケースも少なくないので、男子高校生たちも、ぜひ管理栄養士を目指してください」
(森さん)
取材協力/公益社団法人 東京都栄養士会 武蔵野赤十字病院 管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

  

スポーツの現場の管理栄養士にインタビュー!

森永製菓inトレーニングラボに勤務して、世界大会へ挑む日本代表クラスのトップアスリートの栄養指導をしている管理栄養士の高倉弥希さんに話を聞いてきたよ。

管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

 

スポーツの現場の管理栄養士になろうと思ったきっかけは?

「小学校4年生から中学・高校でもテニスに没頭していた私を、母がスポーツをするには食事が大事だと支えてくれたのがすごく印象的だったのがきっかけです。

栄養士でも調理師でもないけれど、お弁当や普段の食事にも栄養面で気を遣ってくれた母に感謝していたし、尊敬していました。

母へのあこがれから栄養士の仕事に興味をもち、高校2年生で進路を考えた時、スポーツの経験も生かしたい想いから、将来はアスリートをサポートするスポーツ栄養士になろうと決心。

大学の食物栄養学科に進学して、管理栄養士の国家資格を取得しました。

大学にスポーツ栄養学のゼミ研究室があり、そのゼミは3~4年次しか受講できないけれど、先生に直談判して、2年次から大学の運動部のサポートをしている研究室の活動内容を教えてもらったり、スポーツ栄養学の勉強をさせてもらったりしていたんです。

就職活動でスポーツ関連の仕事を探していましたが、残念ながら新卒でのスポーツ栄養士の募集はみつからず、まずは管理栄養士としての経験を積もうと考えて、大学卒業後は病院に勤務。

最初の約1年間は、患者さん一人ひとりをみるのに時間をかけたくて、病床数の少ない病院で、患者さんの朝食から夕食まで作り、病棟を回って患者さんの様子を見て、病院勤務の管理栄養士の仕事の流れを把握しました。

その後、病床数700くらいの大きな病院に転職して、栄養指導や栄養管理、チーム医療の経験も積みました。

そのころは正社員ではなく、スポーツ内科のある別の病院も兼務していました。

スポーツ内科では、アスリートの体調不良や記録の伸び悩みに対して、貧血などが要因だろうか、エネルギー不足だろうか、そのほかに何か問題があるのか、血液検査をふまえた医師の先生の診断の後に、とにかく話を聞いて栄養指導を行いました。

病院に勤務して2年半くらい経ったころ、森永製菓inトレーニングラボで管理栄養士を募集していることを知り、応募。

かなりの高倍率だったと聞きましたが、採用されて、目標としていた今の仕事に就くことができたんです。

トップアスリートをサポートした経験がなかったので不安だったけれど、管理栄養士として患者さんをみていたことや、医療チームのスタッフとの連携、アスリートの栄養指導などの経験の積み重ねは生かすことができる仕事と考えました
(高倉さん)

スポーツの現場の管理栄養士の仕事内容は?

管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

※ウォーミングアップやクールダウンの時に選手の話を聞く

「現在は、7~8人のトップアスリートの栄養指導を担当しています。

ゴルフ・バドミントン・トランポリン・マウンテンバイク・ブレイクダンス・ソフトテニスなど、さまざまな競技のアスリートを担当していますが、全員が日本代表クラスのトップアスリートで、世界大会を目指しています。

アスリートとのコミュニケーションは、inトレーニングラボでのトレーニング時や試合や練習の視察に行く、オンラインで遠隔で行うなど、さまざまなシーン、方法で行っています。

普段のトレーニング時はもちろん、試合や練習を視察して、どういうタイミングで何を摂取しているか、選手の調子や表情を見ながら、どんな状態の時に水分補給しているか、自分の目でしっかりと確認して、どんな栄養補給を提案すればよいか、サポートの方法を検討していきます。

さらに、ゴルフ選手の場合ですと、飛距離を伸ばすために筋力アップしたいとか、1シーズンを通して活躍できるよう疲労回復に力を入れたいなどの課題もあります。

同じ競技でも選手によって取り組む課題が異なるため、一人ひとりに最適のサポートを考えていきます。

具体的には、選手とコミュニケーションをとる時に、『疲れの程度はどうですか?』『試合の時、水分補給の回数が少なかったように見えたけど大丈夫ですか?』など、課題の進捗を確認する投げかけや、視察で気づいたことを基に話を聞き、栄養サポートへつなげていきます。

家族に食事を作ってもらっている選手ならより細やかな献立の提案をすることもありますが、簡単なものを自炊するだけとか外食が多い選手には、どういうメニューを選べばいいかもアドバイスします。

個々の食生活のパターンを把握して、その選手の背景を理解したうえで、ただ良しとされる食生活にガラッと変える指導をするのではなく、一人ひとりの日常に寄り添ったサポートを心がけています。

アスリートのサポート以外には、inトレーニングラボが監修する食事のメニューを考えたり、自社の商品開発でアスリートの知見を情報提供したり、会社のホームページで栄養に関するコラムを執筆したり、さまざまな仕事もまかされています」
(高倉さん)

スポーツの現場の管理栄養士の仕事のやりがいは?

管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

※選手が最高のパフォーマンスをしてくれることが一番のやりがい

選手が試合で勝ったり、記録を伸ばしたり、トレーニングの成果がでた時が一番のやりがい。

自分がサポートをしてこの栄養素を摂ったから勝てた、ということはないけれど、選手のコンディションが良くなってパフォーマンス発揮に少しでもかかわれたことがうれしいです。

選手から『やって良かったよ』と感謝してもらえることは大きなよろこびです。

提案した献立の食事を作ってくださったお母さまから『とても作りやすいメニューでした。ありがとうございました』と言ってもらえた時も、すごくやりがいを感じました。

時には、負けてしまうこともあります。

結果がでないと、もっと何かできることがあったんじゃないかと激しく落ち込んだり、泣いたりしたことも何度かありました。

でも、選手とトレーナーと管理栄養士で1チーム。

一緒に悩んで、とことん話し合って、前向きなミーティングを行い、チーム全体で次の目標に向かって取り組んでいきます。

inトレーニングラボのスタッフ全体で組織的にアスリートをサポートしているので、情報共有して、先輩スタッフからアドバイスをもらうこともあります。

もともとスポーツが大好きでしたが、いろいろな競技の選手とかかわることで、新しい発見がたくさんあり、スポーツの魅力がどんどん深まっていく仕事だと思います」
(高倉さん) 

スポーツの現場の管理栄養士に向いているのはどんな人?

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※情報を精査して知識をアップデートすることも必要

「スポーツの分野は、まだ解明されていないことが多く、常にアップデートされています。

新しい情報を採り入れて仕事に生かしていく必要があるので、常にアンテナを張って、どんどんアップデートされていく情報を追求していける人がいいと思います。

アスリートをとりまいている環境も考え、一歩引いて周囲を見られる人、そのうえでアグレッシブに明るく前進できる人が向いているのではないでしょうか。

いろいろなスポーツと栄養に関する情報に目を向けて、その情報が本当に自分の担当選手にとって適切かを精査できる能力も求められると思います」
(高倉さん) 

スポーツの現場の管理栄養士を目指す高校生へのメッセージ

「スポーツの現場の管理栄養士は狭き門で、特にトップアスリートをサポートするのは過酷な現場です。

世界で勝つことを目標にしているトップアスリートに真正面から向き合うことは、生半可な気持ちではできない仕事で、覚悟が必要。

でも、スポーツの現場の管理栄養士を目指したいと考えている人には、スポーツが大好きな人が多いと思うので、スポーツが大好きという気持ちと、アスリートのベストパフォーマンスを全力で支えたいという強い気持ちをもって、前進してほしいですね」
(高倉さん)
取材協力/森永製菓inトレーニングラボ 管理栄養士の仕事とは?職場別、分野別にどう違う?1日の流れ、やりがい、給与を徹底解説

  

管理栄養士になるには、管理栄養士養成課程で4年間しっかりと勉強すれば80~90%の合格率で国家資格を取得できる。

しかし、管理栄養士の仕事内容はさまざまで、病院、学校、スポーツ施設、保育・福祉施設、社員食堂など、いろいろな就職先がある。

管理栄養士課程で、どんな専門の先生がいて、どんなことを学ぶことができて、どんなところに就職できるのか、細かく調べることが大事。

大学や専門学校のカリキュラムや講師陣を見比べて、志望校を決めよう! 取材・文/やまだみちこ 撮影/沼尻 淳子 構成/寺崎彩乃(本誌)
※この記事は2022年8月に取材した記事です。


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