学士とは?修士・博士・専門士とはどう違う?学費や就職に与える影響を解説!
「学士」とは、大学の学部を卒業した人が得られる学位のこと。「修士」「博士」や「専門士」との違いや、気になる学費、就職に与える影響など、リクルート進学総研 主任研究員の乾 喜一郎さんに教えてもらった。
進路選択の前に、ひと通り押さえておこう!
目次
学位とは
※学位とは自分の能力を客観的に示すことができる指標
「学位」とは、どれだけの年数の教育を受けたかを示す、国際的な基準のこと。主な学位には、博士、修士、学士、短期大学士などがあり、正式には、経済学、法学、看護学などの学問領域とセットで示される。
学位があることで、自分がどの領域についてどの程度の専門知識や研究力があるかを客観的に提示することができる。
それぞれの学位について詳しく見ていこう。
博士とは
「博士(はくし)」とはもっとも高い学位で、「ドクター(Doctor)」とも呼ばれる。大学院の博士課程3年間(博士課程後期ともいう)を修了した場合、もしくは大学院に提出した論文が認められた場合に取得できる。
博士は、研究者として独り立ちできるレベルのアカデミックスキル(学術的な研究力)があることを証明する学位であり、海外でも高く評価される。
修士とは
「修士」とは博士に次ぐ学位で、「マスター(Master)」とも呼ばれる。大学院の修士課程2年間(博士課程前期ともいう)を修了すると、取得できる。
修士は、一定の専門知識や基礎的な研究力があることを証明する学位であり、海外では採用条件として修士以上の学位が求められるケースが少なくない。
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「専門職学位」とは、専門職学位課程、つまり、専門職大学院を修了すると認められる学位のこと。
海外では、ロースクール、メディカルスクール、ビジネススクールなどの修了生と同等の扱いとなる。
専門職大学院は、学術的な研究力ではなく、高度な専門知識・技能を身につける場であるため、修士と差別化するために設定されている。
学士とは
「学士」とは、4年制大学の学部を卒業すると与えられる学位。「Bachelor(バチェラー)」とも呼ばれる。
大学を卒業する以外にも、独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構が実施する試験を受けて合格すれば、学士の学位が認められる。
国内の企業や団体では、採用条件を「大卒以上」、つまり、学士以上としているケースもある。
★参考資料
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構
短期大学士とは
「短期大学士」とは、2年制の短期大学を卒業することで与えられる学位。「アソシエイトディグリー(Associate degree)」とも呼ばれる。
短期大学士と認められると、大学への編入学が可能になる。
専門士とは
2年制以上の専門学校の卒業生に授与されるのが「専門士」。「ディプロマ(Diploma)」も呼ばれる。
専門士とは「学位」ではなく「称号」に位置付けられており、国際的な場面で使用する際には追加の説明が必要なケースもある。
国内では短期大学士と同等の証明となり、大学への編入学が可能になる。
なお、専門学校での修業年数が4年以上など一定の条件を満たした人には、「高度専門士」の称号が付与される。
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以下の要件を満たした課程で、文部科学大臣が認めた専門学校の修了者に対して付与される称号。
より高度な専門知識・技能をもつ人材の証しとして、国内では高く評価される場合もある。
また、高度専門士の称号を取得することで、国内においては大学卒業と同等とみなされ、大学院進学が認められる。
1. 修業年限が4年以上
2. 総授業時数が3,400単位時間(124単位)以上
3. 体系的に教育課程が編成されていること
4. 試験等により成績評価を行い,その評価に基づいて課程修了の認定を行っていること
学士・修士・博士・専門士の学費の違い
※学位や称号を得るためにどれくらいの費用がかかるのか解説する
より高い学位を取得するためには、より長い年数がかかる。そして、その分だけ費用がかかることも忘れてはいけない。
それぞれの学位取得までにどのくらいの学費がかかるのか、詳しく見ていこう。
学士の学費
大学の学部の学費は、国公立大学か私立大学かによって大きく異なる。また、私立大学では大学や学部によっても差があるので、注意しよう。
国公立大学
国立大学の学費については文部科学省が標準額を定めており、授業料は53万5,800円、入学金は28万2,000円、両者を合わせた初年度納入金は81万7,800円となっている。なお、一部の大学では標準額を上回るが、文部科学省は20%増を上限に定めている。
また、公立大学では、授業料は国立大学とほぼ同額だが、入学者や保護者の住所により入学金が異なるケースが多い。
国公立大学に4年間通った場合、学費として250万円ほど必要になる。
私立大学
私立大学の学費(平均)は、授業料93万943円、入学料24万5,951円、施設設備費18万186円、これらを合わせた初年度納入金は135万7,080円。実験実習料などを含めると、初年度には平均して148万2,964円が必要になる。
この金額はあくまでも平均であり、医学部や薬学部をはじめとした理系学部ではより高く、4年間もしくは6年間通うことも考慮すると、トータルで1,000万円を超えるケースもある。
修士・博士の学費
大学院の学費も学部と同様、国公立大学か私立大学かによって大きく異なる。最低2年間は在籍することを考慮し、あらかじめかかる学費を計算しておきたい。
なお、各種奨学金もあるが、日本では返済が必要なものが多いので、借りる場合は事前にしっかりと返済計画を立てておく必要がある。
国公立大学大学院
国立大学の大学院の場合、基本的には入学金、授業料は学部と同額だ。つまり、授業料は53万5,800円、入学金は28万2,000円となる。
また、公立大学も、学部に準じた金額のところがほとんどだ。
修士2年間で135万円ほど、修士・博士の5年間で290万円ほどがかかる。
なお、専門職学位課程(専門職大学院)は授業料が高く、年間で80万円ほどかかる。
私立大学大学院
私立大学の大学院の場合(いずれも平均)、修士では、授業料は77万6,040円、入学料は20万2,598円、施設設備費は7万6,206円、これらを合計した初年度納入金は105万4,844円になる。また、博士では、授業料は62万8,729円、入学料は18万9,623円、施設設備費は5万1,842円、初年度納入金は87万194円になる。
専門職学位課程はさらに高く、授業料は108万6,353円、入学料は19万8,190円、施設設備費は6万274円、初年度納入金は134万4,817円となっている。
専門士の学費
専門学校の学費(平均)は、授業料が69万5,000円、入学金が18万3,000円、実習費が12万4,000円、設備費が20万3,000円、そのほか7万2,000円で、これらを合計した初年度納入金は127万7,000円となる。学費を抑えたい場合は、数や分野は限られるが、公立の専門学校もある。
入学金 | 年間授業料 | 初年度納入金 | |
国公立大学 | 28万2,000円 | 53万5,800円 | 81万7,800円 |
私立大学(平均) | 24万5,951円 | 93万943円 | 135万7,080円 |
国公立大学大学院 | 28万2,000円 | 53万5,800円 | 81万7,800円 |
私立大学大学院(平均) | 20万2,598円 | 77万6,040円 | 105万4,844円 |
専門職学位課程(平均) | 19万8,190円 | 108万6,353円 | 134万4,817円 |
専門学校(平均) | 18万3,000円 | 69万5,000円 | 127万7,000円 |
★参考資料
私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
2022年度大学の学費平均額(旺文社教育情報センター)
令和3年度専修学校各種学校調査統計資料
令和3年度 学生・生徒納付金調査
学士・修士・博士・専門士の就活での影響の違い
※学位が就職に影響するかどうかは国内と海外で異なる
就職活動において、学位はどのように影響するのだろうか。国内と海外で事情が異なるので、それぞれ見ていこう。
日本の場合
国内で就職する場合、研究職や一部の専門職など修士や博士でなければなれない職業もあるが、一般的には学士以上かどうかが問われるケースの方が多い。特に中途採用では、学位よりも経験や実力を見て判断するケースが多いのが日本の特徴。
ただし、今後、海外から人材が流入することになれば、状況が変わる可能性もある。
海外の場合
海外で活躍したいのであれば、修士以上の学位を取得しておくことが望ましい。なぜなら、多国籍の人が働くグローバルな市場では、世界水準の学位が採用時の判断基準になるからだ。
たとえその国の言語がおぼつかなくても、ある専門分野について一流であれば、採用され得る。
また、仕事内容、求められる学位、給与が連動しており、学位により給与にも大きな差が出てくる。
学士・修士・博士・専門士の初任給の違い
厚生労働省が公表している「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、学士の平均初任給(月額)は22万5,400円。統計上、修士と博士は「大学院卒」としてまとめられているが、平均初任給は25万3,500円と、学士よりも3万円弱高くなっている。
また、専門士は20万6,900円であるのに対して、短期大学士(高専卒含む)は19万9,800円とやや低くなっている。
ちなみに、高校卒業者は17万9,700円と、学士に比べて5万円弱低い。
なお、海外では、学位による給与の差は一般的により大きくなる。
修士取得後では、年収で2000万を超えるケースも珍しくない。
★参考資料
令和3年賃金構造基本統計調査
学士・修士・博士・専門士の選び方
※将来目指す職業がある場合は、必要な学位を確認しておこう
将来、就きたい仕事が決まっている人は、その職業に就くために必要な条件を調べておこう。例えば、弁護士になりたいのであれば大学から法科大学院へ進学し、司法試験を受ける必要があるし、バイオの研究者になりたいのであれば最低でも修士は取得しておく必要があるだろう。
目指す学位を取得するのにかかる時間(4年間〜最大10年間)を考慮し、資金も含めて計画を立てておきたい。
一方、まだ進みたい道が定まっていない人は、今から無理に決めておく必要はない。
学部で学ぶなかでさらに研究したいと思えば、大学院への進学を検討すればいいのだ。
大事なのは、どのような選択肢があるのか、進学するとしたらどれくらいの時間やお金がかかるのかを、高校生のうちに知っておくこと。
そのうえで、まずは視野を広げてさまざまな分野に関心をもち、自分がどこで何を学びたいのかを明確にすることから始めよう。
まとめ
高い学位を取得するためには、それだけの時間的、金銭的な負担があることも理解しておきましょう。
また、働くなかで幅広い経験や実績を積み活躍する人もいれば、専門分野の研究に打ち込んで社会に貢献する人もいます。
大事なのは、自分はどうしたいのか、どういうタイプが向いているのかを見極めること。
その見極めは高校生の時点でする必要はないし、まだできるはずもありません。
仕事での経験をもとに、働きながら大学院に進む人も増えてきました。
今はとにかく、好奇心をもってどんどん世界を広げていくことが重要だと思います。(乾さん)
乾 喜一郎さん
リクルート進学総研 主任研究員(社会人領域)
一貫してキャリアに関する領域に携わり、2006年『ケイコとマナブムックシリーズ』編集長。
社会人大学院生をはじめ3000名を超える社会人学習者の事例を取り上げる。
2019年現職。学習者にとって意義のあるリカレント教育・社会人学習のあり方について提言を続けているほか、文部科学省等のリカレント教育推進施策の検討に参画している。
取材・文/笹原風花 監修/乾 喜一郎 構成/寺崎彩乃(本誌)
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