テスト前に掃除がしたくなるのはなぜ!? 理由と対処法を心理学の先生に聞いた
定期テスト前は勉強しなければならないのに、なぜか掃除がしたくなる……。そんな悩みをもつ高校生は多いのでは?
このようにやるべきことをやらず、別の行動に走ってしまうのはよくあることで、心理学の研究分野のひとつにもなっているのだとか!
テスト前なのにどうして掃除を始めてしまうのか、その理由や対処法を心理学の専門家に聞いてみた。
伊藤忠弘先生
学習院大学文学部心理学科教授。
主な研究分野は、動機づけ(モチベーション)と「自己」に関する研究。
動機づけの分野では、親や友人などが目標達成に向けた努力に及ぼす影響についての研究にも力を入れている。
「自己」の分野では自分の評価を高めようとしたり、失敗などによって自分の評価が下がりそうな状況でそれを維持するための行動をテーマに研究を行っている。
高校生の約7割が、テスト前に掃除をしたくなっている!?
#高校生なう編集部では、全国の高校生104人にアンケート調査を実施。「テスト前など勉強をしなくてはならないときに掃除や整理整頓をしたくなる?」と聞いてみたところ、69.2%の人が「掃除をしたくなる」と回答していることがわかった!
※「Q. テスト前など勉強をしなくてはならないときに掃除や整理整頓をしたくなる?」
そもそも部屋が散らかっていると、勉強に集中できない。
今回のアンケートでも「テスト前に掃除をしたくなる理由」として
多数派を占めたのは、こんな理由。
・勉強から逃れたい(高1男子・福岡)
・現実逃避(高3男子・京都)
・やる気が起きないから(高2女子・埼玉)
・キレイ好きだから(高3男子・北海道)
・散らかった部屋だと気持ち悪いから(高3女子・神奈川)
※テスト勉強をやりたくない気持ちが掃除に?
勉強したくないからとりあえず掃除をする……「私も同じ!」と感じた人も多いはず。
心理学では『先延ばし行動』と呼ばれ、多くの心理学者によって研究されているテーマなんですよ。
やるべきことをギリギリまでやらなかったから準備が十分にできず、学業の出来や仕事の質が悪くなることを問題行動としてとらえ、その理由や克服法を探る目的で研究が行われています」
伊藤先生は「動機づけ(モチベーション)」などの研究に取り組んでいる。
「掃除」なら勉強しない言い訳になる?
やりたくないことを先延ばしにするのは、多くの人の行動パターンであることがわかった。でも、テスト前にゲームやスマホに走るパターンもありそうだけど、なぜ「掃除」なんだろう?
セルフ・ハンディキャッピングとは、自分が高い評価を受けられるかどうか自信がない場合、課題を行うことを妨げるハンディキャップがあることをほかの人に主張したり、自分でハンディキャップを作る行為のことです。
例えば、ケガで練習がほとんどできなかったことを周囲の人に言いまくっているスポーツ選手。
彼がその試合で負けたとしても、ケガによる練習不足が原因で負けてしまったと周りの人は思うので、その選手は激しく落ち込むことはないでしょう。
つまり、言い訳を強調することで、自分のプライドを守ろうとしているからなんです」
「テスト前の掃除」の場合だとこうなる。
『遊んでいて勉強しない』と周りの人から思われてしまうだけですから。
でも掃除は、日常生活の大事な習慣です。
高校生の皆さんも、保護者から『部屋を片付けなさい!』といつも言われていると思います。
『掃除をしていたから勉強できなかった』ということならば、勉強しない言い訳になって、自分を守ることになるわけです」
掃除をすると、勉強の集中力が上がる?
掃除をすること自体はいいことだから勉強しない言い訳になりやすい。問題なのはテスト勉強を最優先しなければいけないのに掃除をやってしまうこと。
それはやっぱり悪いことなの?
アンケート調査では「テスト前に掃除をしたくなる」と答えた人に、「掃除をする前と後では勉強の集中力は変わる?」という質問もしていて、75.0%の人が「勉強に集中できるようになった」と回答している。
※「Q. 掃除をする前と後で集中力はどう変わる?」(「テスト前に掃除がしたくなる」と回答した72人に質問)
その理由を紹介すると、こんな感じ。
・気分転換(高1女子・広島)
・やる気が上がる(高3男子・東京)
・余計なものが片付くから(高3女子・北海道)
掃除をして勉強がはかどったからといって、テストの点数が上がったという結果を出せているのかどうか、わからないからです。
ただ、好成績に結びついた人がいるのなら、掃除をしたいなら掃除をして、そのあとで勉強に取りかかるという行動は、その人に合っているといえるでしょう」
悲観的に考えることで勉強がうまくいく場合も!
「掃除のあとは勉強に集中できるようになった」と答えている人がどんな掃除をしているのかというと、ペン立てや机の上の整理といった簡単な片付けから室内の模様替えまでさまざま。掃除にかける時間は人それぞれでも、掃除のために勉強時間が減ってしまっていることになる。
気持ちがあせってしまって勉強が進まなそうな気もするけど、集中できた人はどんなタイプ?
それは楽観主義と悲観主義です」
『あとでも間に合う』『まだ時間があるから大丈夫』と、ポジティブに物事を考えるタイプ。
●悲観主義(Pessimism)
先延ばしをしてしまったことで『こんなことをしている自分はダメだ』『間に合わない。どうしよう……』とネガティブに物事を考えるタイプ。
ところが近年の研究で、悲観主義者の中にも物事を悪いほうに考えることでうまくいくという『防衛的悲観主義者(Defensive pessimist)』がいることが明らかになっています」
でも、それをモチベーションに変えるのが防衛的悲観主義の人の特徴です。
『ギリギリになってしまった…』という危機感が強いので、教科書やノートを徹底的に読みこむなど、時間がない中でもできる準備は全部やろうとする傾向にあります。
その結果、しっかり勉強してテストに臨めることになるということが考えられます」
※テスト前に掃除をすることがプラスになる場合もある!
気になるのは、アンケート調査で「掃除をしたあと、勉強によけい集中できなくなった」と回答した人たち。
「テスト前に掃除をしたくなる」と答えた人の25%にあたる。
※掃除をすると余計集中できなくなる人も…!
その人たちの声を紹介すると、
・疲れてしまった(高2女子・東京)
・ほかにやりたいことがみつかってしまったから(高1男子・石川)
・もともと勉強する気がない(高2男子・愛知)
このような人たちは、テスト前に掃除をすることでモチベーションが下がってしまったみたい…。
ならば、テスト前に掃除をしたくなる誘惑に打ち勝つしかなさそう。
よい方法はあるんだろうか?
「テスト前に掃除をしたくなる」誘惑に打ち勝つ方法
伊藤先生が教えてくれたのは、アメリカの心理学者、ケリー・マクゴニガル氏が提唱する「10分ルール」という方法(※)。もし10分待ってもまだ食べたければ、食べてもよいとする自分ルールです。
マクゴニガル氏は、このやり方でたいていの人は我慢できるようになると主張しています」
ダイエットであれば、減量に成功してスマートになった自分、さらにはスマートになっておしゃれを楽しめたり、モテるようになった自分など、できるだけ先のことまでイメージしてみることが大切なのだそう。
※とりあえず10分だけ我慢して勉強をする!
真っ先にやるべきことがあるのに、先延ばしをしたくなったとき、とりあえず、やるべきことをやり、『10分経ったらやめてよい』というルールです。
彼女はいったん始めると、たいていは続けたくなると説いています。
私の経験からも、それには賛成です。
テスト前に勉強しなければならないのに掃除をしたくなったとき、掃除を我慢して勉強を始めるのは大変なことかもしれません。
でも、一度始めると、そのまま勉強を続けやすくなると思いますよ」
この先、学校の定期テスト以外にも、大学の入学試験や資格試験など、さまざまなテストを受けなければいけない。
そんな大事なテストの前に掃除をしたくなったとき、掃除をするほうがいいのか、しないほうがいいのか、人にもよるけれど、伊藤先生から教えてもらったことをヒントに、自分に合った方法で勉強に取り組もう!
※自分にあった勉強方法を探してみて!
※アンケートは2019年4月スタディサプリ進路調べ
※2019年4月取材時点の情報になります。
※ケリー・マクゴニガルの著書『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)の中で紹介されている方法です。なお、10分ルールはあくまで事例として載せられているものであり、同書に実証的な裏付けは記載されておりません。
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