脳科学者・篠原菊紀先生に聞く!やる気がでない!こんな時どうする?

テスト前で勉強しなくちゃいけないのに、なかなかやる気がでない…と悩んだことがある人は多いはず。

実際、スタディサプリ進路が全国の高校生300人にアンケート調査を行ったところ、「勉強をしたくない、やる気が起きないと思うことがありますか?」という質問にYESと答えた人は95%以上。

そこで、やる気がでない時、どんな方法でやる気を起こさせてきたのか。みんなのアイデアを聞いて、脳科学者の篠原菊紀先生に、やる気がでないときの解消法についてアドバイスをしてもらった。
 
【今回教えてくれたのは…】
篠原菊紀先生
脳科学者。
公立諏訪東京理科大学・工学部情報応用工学科教授、学生相談室長。
「遊んでいるとき」「運動しているとき」「学習しているとき」など、日常的な場面での脳活動を調べている。
『勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)、『マンガでわかる 脳と心の科学』(池田書店)、『「すぐにやる脳」に変わる37の習慣』(KADOKAWA)ほか、著書・監修多数。
フジテレビ『とくダネ! 脳活ジョニー』『今夜はナゾトレ』、BSフジ『脳ベルSHOW』、NHK『チコちゃんに叱られる』『子ども科学電話相談』『あさいち』、日テレ『頭脳王』などの解説や監修で、脳活動のおもしろさを伝えている。
ブログ「はげひげ」の脳的メモ https://higeoyaji.at.webry.info/
自分が今までやってきた、やる気アップの方法を思い出してみよう

全国の高校生300人に「勉強をしたくない、やる気が起きないと思うことがあるのはなぜですか?」と聞いてみると、

脳学者の先生にやる気を出す方法を聞いてきた

※やる気が起きないと思うことがあるのはなぜ?

・「苦手な教科があるから」(高2女子・北海道)

・「面倒くさいから」(高1女子・神奈川)

・「やる必要を感じないから」(高2男子・愛知)

・「おもしろくないから」(高2男子・大阪)

・「ほかにやりたいことや楽しいことがあるから」(高2女子・福島)
など、「難しい」「楽しくない」という気持ちが、やる気がでない理由に多いようだ。

一方で、「そのときはどうしますか? やる気を起こさせる自分なりの解決法などがあれば教えてください」という質問には、
・「好きな音楽を聴く」(高1女子・石川)

・「仮眠を取ってから勉強する」(高1男子・栃木)
という意見が多かったが、そのほかにも、さまざまな意見が出てきた。

その意見について、篠原先生に聞いてみると、
「本人が、それをすることで乗り切ってきたというのなら、基本的には、その人にとって正しいやる気アップの方法と言えます。

高校に入学できて、その先の進学まで考えている人なら、やる気がでないと悩みながらも、実際には何らかの方法で勉強をしてきたはずだから、やる気をだすことに成功しています。

自分がうまくいけていたときは、どういうときなんだろうと、多少でも勉強できたときのやり方を探すといいですね」

脳の奥にある線条体を活性化させることが、やる気につながっていく!そうは言っても、「全然やる気がでない」「ゲームにハマるように勉強できたら」と、やる気をだす方法を知りたい人のために、まず、やる気をだす脳のしくみについて、篠原先生に教えてもらった。
「脳の奥にある『線条体』は、行動と快感を結びつける場所で、ここを活性化させると無意識に行動できるようになります。つまり、線条体の活動を高めることが、やる気アップにつながるのです。

線条体は、行動側から活性化させる方法と、快感側から活性化させる方法があります。

何か行動を起こすと線条体の活動が高まりますし、これをやれば良いことが起きるのではないかという快感が予測されたときも活動を増します。

どちらの方法でも、やる気につながっていくのです」

やる気アップ術1:勉強と関係ないことでも、とにかく何かやってみる

脳学者の先生にやる気を出す方法を聞いてきた

※好きなことをやれば線条体の活動が高まるからやる気が湧いてくるみたい!



実際、みんなは、どんな方法で、やる気をだしてきたのか、それについて篠原先生にアドバイスをもらった。
・「好きなアーティストの曲を聞く」(高2男子・兵庫)
「最初は勉強に対するやる気がでなくても、好きなことをやれば線条体の活動が高まるので、そこに乗っかって勉強を始めてしまえばいいと思います」
・「ピアノの練習をする」(高1男子・岡山)
「これも、行動側から、やる気をだすことにつながります。

何でもいいから行動を起こしてしまえば、線条体は勝手に活性化するという側面があるので、それを利用しましょう。」

ピアノが好きで弾くのなら、楽しいという気持ちが快感側からの活性化にもなります」
・「好きな教科から勉強する」(高2女子・北海道)
「勉強して楽しい教科から始めるのは、線条体の活動を行動側からも快感側からも高めて、やる気につなげる良い方法だと思います」
・「とりあえず教科書や問題集をひらく」(高3女子・北海道)

・「とりあえず机の前に座る」(高2女子・神奈川)
「やる気がでなくても、とにかく始めてしまえば、線条体が活性化するため、やる気が後からついてくることはあります」
・「スマホのゲームをする」(高1女子・山形)
「ゲームなどの遊びをしても、行動側から、やる気をだすことにつながりますが、短時間でパッと切り替えて、勉強を始められることが大事です」
・「テレビを見る」(高3女子・宮城)

・「好きなマンガを読む」(高3女子・岩手)

・「YouTubeを見て気分転換する」(高2男子・東京)
「これらの行動も、時間を決めて、すぐやめられるなら大丈夫。

単純に『勉強しなきゃ』と思っているだけのときは、やる気に関わる線条体の運動系の活動が全く出てこないので、何でもいいからアクションを起こすことは、ただ思っているだけより、やる気につながるのです」
・「やる気が起こるまで待つ」(高2男子・京都)
「行動を起こさないと何も変わらないので、ただ待つのは合理的ではありません。

自分のやる気の波を想定して、これくらいの時間になればやる気がでてくる、とわかって待つのなら大丈夫です」

やる気アップ術2:自分の行動や勉強の成果を具体的にイメージしてみる

やる気アップ術2:自分の行動や勉強の成果を具体的にイメージしてみる

※成功したときのイメージをすることがやる気につながる!

・「今日、絶対にしないといけないことを絞って書き出してから勉強する」(高1女子・奈良)
「書くという行動をすることで、行動側から、やる気につなげていきます。

そのうえ、やらなくてはいけないことを書き出していくと、やっている自分が具体的にイメージできます。

行動のイメージができると、線条体が活性化しやすくなるため、さらにやる気アップへとつながっていくのです」
・「自分へのごほうびを考えて、それに向けて頑張る」(高3女子・広島)

・「早く終われば好きなことができる、と思う」(高2女子・長崎)

・「英語が話せる自分を想像する」(高3男子・愛媛)
「やる気につながる線条体や、勉強にハマる作用のあるドーパミン神経系は、快感があると活性化するだけでなく、快感の予測に対しても活動します。

勉強すれば何か良いことがあると具体的にイメージすることは、やる気アップになるのです」
・「目標を立てる」(高2女子・福井)
「行動しているイメージをもつと、線条体の活動が高まり、やる気がでてきます。

ただし、自分の行動を具体的に想像できないと効果がないので、試験で高得点を取る、志望校に合格する、といった漠然とした目標の立て方ではなく、定期試験でクラス上位に入って先生にほめられているとか、大学に入学して好きなことをしている自分の姿など、具体的な映像でイメージできることが大切です」

やる気アップ術3:仮眠や気分転換をして、脳をリフレッシュさせる

やる気アップ術3:仮眠や気分転換をして、脳をリフレッシュさせる

※寝て起きたときが活動しやすい脳の状態になるみたい

・「仮眠を取ってから勉強する」(高1男子・栃木)
「軽く寝て、パッと起きた時、脳で何が起こるかというと、心に安らぎを与えるセロトニンという物質の活動が一気に高まります。寝ることに意味があるのではなく、寝て、起きた瞬間に脳が目覚めて、活動しやすい状態になるのです。

そういう意味で、やる気をだすための正しい方法のひとつと言えます。

15~20分程度の短時間の睡眠で、一度意識を失うくらいグッスリと眠って、パッと起きることができれば成功。そのときの体調などにもより、うまくいくときと、スッキリ起きられない場合があるので、毎回できるとは限りません。

また、記憶は寝ているときに定着するので、朝まで寝てしまうつもりなら、少しでもいいから暗記モノの勉強をしてから寝ると、効率良く覚えることができますよ」
・「友達と一緒に勉強する」(高1男子・広島)
「友達に認められたり、ほめられることが好きな人は、ドーパミン神経系の活動を高める刺激になるため、効果があります。

逆に、他人のことは気にしない、自分の完成度だけを大切に考えている人にとっては、ほぼ意味がありませんね」
・「シャワーを浴びたり、運動をしてリフレッシュする」(高3男子・東京) ・「外に出る」(高1女子・埼玉)
「気分が変わることをすると、脳の安らぎを与える物質が増すため、良い切り替えになって、やる気がでてくると思います」
・「一度、5分ほどの休憩を取る」(高2男子・神奈川)
「勉強は、30分続けてやるよりも、15分ずつ2回に分けるほうが効率良いと言われています。やる気が続かないと感じたら、休憩をすることが大事。5分休んで、パッと切り替えましょう」
・「人と話して気分転換をする」(高1男子・熊本)
「自分が抱えている不安を書き出させてみると、その後、成績が良くなったりすることがあると言われています。誰かと話をして不安を解消するのはアリ。SNSでグチってみるのもいいでしょう」
・「焦らす」(高2女子・神奈川)

・「将来の不安について考える」(高2男子・熊本)
「やる気にかかわるノルアドレナリンという物質は、不安や恐怖、危機感から活性化する作用があるため、ネガティブな感情で、やる気を起こさせる方法もあります。

ただし、勉強しながらネガティブなことを考え続けると、そのことで脳のメモ帳を使ってしまって、思考力が落ちるため、注意しましょう」

やる気アップ術4:勉強に集中しやすい環境を整える

やる気アップ術4:勉強に集中しやすい環境を整える

※お菓子を置いて勉強するのは効果的!

・「好きなものに囲まれながら勉強する」(高2女子・宮城)
「好きなものやかわいいものを見ると、集中力テストの成績が上がると言われているので、ちょっとやる気が落ちたときに見るのはアリだと思います」
・「お菓子を横に置く」(高1男子・埼玉)
「目先に報酬をちらつかせると、勉強の効率が良くなる場合と悪くなる場合があります。何度もやっている問題をひたすらたくさん解くような単純作業の場合は良いのですが、例えば初めて解く問題など、頭を使わなければいけない場合は、お菓子を食べたときのことを考えてしまうなどの余計な脳活動が勉強の邪魔になることもあるので、避けたほうがいいでしょう」
・「音楽を聴きながら勉強する」(高3女子・神奈川)
「音楽を聴いてから勉強するのは良いのですが、聴きながらだと注意が必要。歌詞を聞いてしまうようでは、暗記モノはほとんどできなくなります。言葉が耳に入ってくると、脳のメモ帳を使われてしまうので、歌詞が頭の中に入らないくらい聞き込んでいる曲や意味がわからない外国語の曲、リズムだけの曲なら大丈夫だと思います」
・「集中できるように身の回りのものを片づける」(高2男子・愛知)
「まず掃除をしてから勉強するという人がいますが、これは一種のルーティンワーク。勉強前に、やる気を起こさせる儀式を作ってやるのも一手だと思いますよ」
 

やる気アップ術5:行動を肯定形でイメージし、擬音を使って言ってみる

やる気アップ術5:行動を肯定形でイメージし、擬音を使って言ってみる

※否定形は使わずすべて肯定形でイメージが大切

「やる気をアップさせるには、行動を具体的にイメージすることが大事。

例えば、『遊ばない』も行動のように思いがちですが、『遊ばない』という状況を具体的にイメージできますか? 動画で思い浮かべることはできませんよね。

『○○しない』では具体的な行動のイメージがわかないので、線条体が活性化しません。

『遊ばない』ではなく、『遊びそうになったら教科書をひらく』だと、動画が浮かんでくるので、線条体が活性化して、やる気がでてくるのです。

やる気を起こさせるには、否定形を使わず、肯定形を使って行動をイメージしましょう。

さらに、オノマトペ(擬音語や擬態語)を使うと、もっと脳が活性化しやすくなることが知られています。

『グイッと立ち上がって、ダダッと歩いて、ドッシリ座る』など、口に出してみると、やる気がアップしますよ」
 

やる気アップ術6:プランニングはじっくりと、でも中途半端でいい

やる気アップ術6:プランニングはじっくりと、でも中途半端でいい

※誰かに褒めてもらうことが大切なんだ

「線条体は、こういうことをすれば良いことが起きるという予測に基づいて活性化する働きがあります。

『勉強したら良いことがあった』という快感をくり返していくことが必要なので、例えば簡単な問題から始めて、自分ができることを積み重ねていったり、家族や先生、友達など、誰かにほめてもらうといいですね。

さらに、頑張って勉強した結果、大学に入学して何か楽しいことをしているなど、未来の自分の姿を具体的に映像化することが、やる気を起こさせることにつながります。

未来の自分をイメージしやすくするためにも、プランニングの時間をしっかりもつこと。勉強に関して、一度決めたらやり通さなくてはいけないと思い込んでいる人が多いのですが、状況が変わったり、目標修正することだってあるので、こまめにスケジュールを調整すればいいと思います。

完璧なプランニングをして、完全にイメージできてしまうと、逆にやる気が失せてしまうこともあるので、スケジュールが中途半端な段階で行動を始めて、直していけばいいのです。

うまくいかないのが当たり前だと思って、やれることをやっていく快感を積み重ねていきましょう」

やる気アップ術7:自分がうまくいった方法をいくつか試してみる

「やる気を起こさせる方法には個人差があります。

ある環境を用意すれば、誰でも同じようにやる気がでるわけではなく、やる気がでる人と、やる気がでない人に分かれます。昨日は、この方法でやる気がでたけど、今日はダメだった、ということもあります。

まずは試してみて、うまくいったら続ければいいし、やる気がでなかったら他の方法を探してみましょう。

うまくいく方法がみつかったら、それを勉強前のルーティンワークにしてもいいし、いつも勉強できるとは限らなければ、複数の方法を用意すればいいのです」
やる気がでないとあきらめていないで、まず何でもいいから行動して、楽しい未来の自分をイメージしてみよう。

楽しい未来の自分をイメージしてみよう。

※自分の成功したときのイメージを持つことが大事!


具体的に勉強にハマる方法を知りたい人は、篠原先生の著書がおすすめ。

『勉強にハマる脳の作り方』(フォレスト出版)


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