「調査書」とは?大学受験への影響度、2025年度入試からの変更点は?もらい方も詳しく解説!
調査書とは、大学受験に必須の書類で、高校3年間の成績、総合的な探究の時間の記録、特別活動の記録などが記載されたもの。高校受験の出願時に必要な「内申書」と同じものだ。
調査書にはどんなことが書かれているのか、どのようにもらうのかという基本的なことから、大学入試の合否にどれくらい影響するのか、2025年度入試からの変更点まで、まとめて解説する。
目次
堀 浩司先生
滋賀県の公立高校(守山高校、草津東高校など)で教員歴37年。
「行き先指導ではなく生き方指導」「家から近い大学ではなく夢から近い大学」などを大切にした、3年間の体系的な進路指導を推進。
現在は、龍谷大学高大連携推進室フェロー、旺文社『蛍雪時代』アドバイザー、さんぽう講師としても活躍中。
調査書はどんな内容?
調査書とは、出身高校または在学中の高校で発行される大学入試に必須の書類で、入学志願者の学業成績、総合的な探究の時間の記録、特別活動の記録、出欠状況などが記載されたもの。大学を受験する際には、総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜のすべての出願時に必ず提出しなければならない書類だ。
※調査書(様式)文部科学省「大学入学者選抜実施要項」より
1)氏名・生年月日・現住所・在学中の高校名など
2)各教科・科目等の学習の記録(学年別・科目ごとの5段階の成績と修得単位数)
3)各教科の学習成績の状況(評定平均値)
4)学習成績概評(高校3年間の成績をA~Eの5段階で表したもの)
5)総合的な探究の時間の記録(学習活動内容と観点とそれに対する評価)
6)特別活動の記録(ホームルーム活動・生徒会活動・学校行事について観点と学年別の評価)
7)指導上参考となる諸事項(部活動の成績、取得資格・検定、表彰・顕彰、ボランティア活動、留学・海外経験など、5と6に記載できない特記事項)
8)備考(大学が指定する特定の分野において、特に優れた学習成果を上げたことなど)
9)出欠の記録
(※注1)調査書の発行時期により異なる。1月出願の場合は3年生の2学期まで、3月以降に出願する場合は学年末まで(以下同)
「学習成績概評」では、評定平均値によって、A=5.0~4.3、B=4.2~3.5、C=3.4~2.7、D=2.6~1.9、E=1.8以下 の5段階に分けられている。
参考: 入学者選抜実施要項|文部科学省
大学受験の調査書に記載される全体の評定平均値は、高校1年生から3年生の1学期(※注1)までの間に履修していた全科目の評定を合計して科目数で割ったもの。
教科ごとの評定平均値は、その教科の科目すべての評定(5段階の成績)を足して、科目数で割ったもの。
「全体の評定平均3.5以上」「全体の評定平均が4.0以上で、英語は4.3以上」など、学校推薦型選抜の出願条件で一般的に使われる基準となる。
評定平均とは?計算方法や対策など推薦入試志望者向けのポイントを解説!
学業成績以外の様子も幅広く記載される
調査書には、各教科ごとの成績だけでなく、「総合的な探究の時間」の授業でどんな学習活動をしたか、その内容と評価まで記載される。さらに、ホームルームや生徒会、学校行事での特別活動の記録、部活動の成績、取得した資格・検定、ボランティア活動など、幅広い内容になっているのだ。
大学受験の場合、文部科学省が調査書の様式を決めていて、出願先の大学や在学中の高校にかかわらず、同じ様式の調査書が発行される。
ちなみに高校受験の場合は、各都道府県によって調査書の様式が異なっている。
特に、「総合的な探究の時間の記録」の評価が注視され、内容について面接試験で詳しく聞かれることもあるでしょう。
また一般選抜でも、入学試験の点数が合否のボーダーライン上だった場合には、調査書の内容が合否に影響することもあります。(堀先生)
調査書は大学受験の合否に影響する?
調査書は、大学受験の合否に影響する場合がある。特に、総合型選抜や学校推薦型選抜では、調査書を点数化したり、「総合的な探究の時間の記録」に記載されている内容を面接で聞かれたり、合否の判定につながることがある。
一般選抜の場合は、調査書の内容が見られることは少ない。
学校推薦型選抜では調査書の点数も重要
その場合、調査書の評定平均値が出願基準を満たしているかどうか、必ずチェックされます。
さらに公募制の学校推薦型選抜では、調査書を点数化し、学科試験や面接や小論文などの得点にプラスしたうえで合否を判定するケースが多いようです。
調査書の点数化の例として一般的なのは、評定平均値×10倍(50点満点)。
大学によって、学科試験や面接や小論文などと調査書の配点の割合は異なるので、志望校の入試要項を確認しておきましょう。
また、私立大学の場合、公募制の学校推薦型選抜では、A方式「調査書を点数化して判定に加味する方式」とB方式「調査書を加味しない方式」の選択が可能で、A方式とB方式の両方に出願できる大学が多くあります。
大学や学部によっては、部活動での全国レベルの活躍や資格・検定の取得が点数化されることもあります。
総合型選抜や学校推薦型選抜では、調査書に加えて、別紙(様式2)の活動報告書を提出する場合があり、全部の欄を埋めるくらいの取り組みをしてきた人は有利になります。
活動報告書の内容は、面接で詳しく聞かれたり、記載された活動についてプレゼンテーションをしたりすることもあって、その評価が合否に影響する可能性もあります。
その一方で、学校推薦型選抜で「調査書は参考程度」という大学もありますが、一般的には、調査書の「評定平均」が合否に大きく関係すると考えてよいでしょう。
指定校制の学校推薦型選抜では、出願基準に欠席日数が含まれることもあり、欠席が多いと、面接時に質問されるかもしれません。(堀先生)
一般選抜で調査書が合否に影響することは少ない
なかには、入学試験の点数が合否のボーダーライン上だった場合に調査書の内容で判定されることもありますが、原則として、一般選抜では調査書はあまり合否に影響しないと考えてよいでしょう。
2022年度から実施されている高校の新しい学習指導要領で、「知識・技能」「思考・表現・判断」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点について3段階(A・B・C)で評価する「観点別評価」が導入されていますが、現時点では、観点別評価は点数化しないというのが文部科学省の方針となっています。(堀先生)
調査書のもらい方は?
調査書は、高校の先生に「調査書発行願」などの書類を提出して、作成してもらう必要がある。高校によって、いつまでに申請すればいいのか、期限が設けられている場合が多いので、確認しておきたい。
時間に余裕をもって調査書の発行を申請
口頭で「調査書を3通ください」とか、「明日までに発行してください」と言っても受け付けてもらえません。
必要な書類に記入して、保護者の署名・捺印を求められるケースが大半。
担任の先生は、申請を受けてから調査書を作成するので、ある程度の時間がかかります。
出願の2週間前までに調査書発行願を提出する、といったルール(申請期限)を設けている高校が多いので、ガイダンスなどでしっかり確認しておきましょう。
調査書の発行依頼のスケジュールとしては、学校推薦型選抜は11月から出願が始まるので、10月下旬~11月上旬に調査書発行願などの書類を提出。
一般選抜は1月初旬から出願が始まるので、12月下旬に調査書発行のピークを迎え、依頼が集中すると発行までに時間がかかることもあるため、日程的な余裕をもって早めに申請をすることが大切です。
地方試験を実施している大学の場合、出願が早い順に自宅近くの会場を入試会場に割りふってもらえるケースがあるので、冬休み中に調査書をもらっておき、受付開始日に出願するといいですね。(堀先生)
1件の出願ごとに調査書1通が必要
例えば、総合型選抜を受験して不合格だった場合、同じ大学の同じ学部・学科の学校推薦型選抜や一般選抜に出願するときは、その都度、調査書の提出が必要です。
同じ大学の複数の学部・学科に同時出願するときは調査書が1通でOKというケースもありますが、出願時期が異なれば出願ごとに調査書が必要となるため、入試要項を確認して、全部で何通の調査書を発行してもらうのか計算しておきましょう。
現役生は無料で調査書を発行してもらえることが多いのですが、学校によっては、1通につき300~500円程度かかることもあります。(堀先生)
2025年度入試からどう変わる?
2025年度入試から、調査書の「5.総合的な探究の時間の記録」「6.特別活動の記録」「7.指導上参考となる諸事項」の3項目の様式が変更される。2022年度から新学習指導要領になって国語や地歴などの科目名が変わり、「知識・技能」「思考・表現・判断」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点を重視するようになったことに伴い、この3観点についての評価を記載する様式になっている。
「総合的な探究の時間」が3観点で評価される
2024年度入試までは、探究の授業のテーマや探究活動をした内容のみ、記載されていましたが、2025年度入試からは、「知識・技能」「思考・表現・判断」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点での評価まで入るようになります。
さらに、「6.特別活動の記録」でも、「ホームルーム活動」「生徒会活動」「学校行事」の3項目について、3観点に即して評価するスタイルに変わります。
2024年度入試までは、特別活動を行った事実のみの記載でしたが、2025年度入試からは、観点の欄に記載された内容について学年別に「〇」が入ります。
その観点で評価される場合は「〇」で、評価されない場合は空欄になります。(堀先生)
部活動の成績や取得資格などは別紙に詳しく記載
部活動の成績、取得資格・検定、表彰・顕彰など、3観点での評価が難しい特徴的なことがらを取り上げて記入するスタイルになります。
人によっては「特記事項なし」と記載されることもあり、特に一般選抜など調査書の内容が評価されることの少ない入試では「特記事項なし」が多くなるかもしれません。
その一方で、総合型選抜や学校推薦型選抜では、調査書に加えて、別紙(様式2)の活動報告書を提出する場合があり、調査書に記載されていた部活動の成績、取得資格・検定、表彰・顕彰、ボランティア活動、留学・海外経験などについては、活動報告書により詳しく記載するようになります。(堀先生)
学年別・調査書で高評価を得るには?
調査書で高評価を得るには、高校1年生のうちから勉強を頑張り、高校2年生からは資格・検定の取得も目指したい。高校3年生は1学期に全集中して、成績アップを目指そう!
2025年度入試から、調査書では「総合的な探究の時間」の授業について3観点でより詳しく評価されるため、高校1年生から「知識・技能」「思考・表現・判断」「主体的に学習に取り組む態度」を意識して、探究活動に取り組むことが大事。
調べ学習ではなく「課題をみつけて問いを立て、調査研究して、成果を発表し、また次の課題発見につなげる」という、らせん状のサイクルを意識して取り組む姿勢が高評価につながる。
高校1年生は普段の勉強や学校生活を頑張る
評定平均は、高校1年生と2年生の各学年の成績と3年生の1学期(※注1)の成績の平均値になるため、高校1年生のうちから好成績を上げるよう、頑張りましょう。
情報・家庭基礎・芸術など、高校1年生しかない科目(※注2)は、1年間だけの成績で評定平均が決まってしまうので、しっかり取り組んでおくこと。
(※注2)高校によりカリキュラム(教科科目の学年配置)は異なる
学習の評価は、定期テストだけでなく、小テスト、提出物、授業態度などが総合的に評価されます。
定期テストの点数だけで成績が決まるというケースが少なくなってきているので、積極性をみせる授業態度を心がけましょう。
新学習指導要領では、主体性や対話的で深い学びが重視されるので、まじめに先生の話を聞いて黒板を写すだけでなく、グループ学習で積極的に発言をしたり、活動のときにアピールしたり、自分から進んで学習に取り組む姿勢をみせるといいですね。
2025年度入試からは、調査書の「特別活動の記録」に「ホームルーム活動」「生徒会活動」「学校行事」の各欄があるので、日直の仕事や掃除、学校行事への取り組みなども調査書に反映されると心得ておくこと。
勉強のみならず、何ごとにおいても「よく考えて判断し、豊かに表現し」「他者と協働して、主体的に取り組む」態度を身につけておくといいですよ。(堀先生)
高校2年生は特別活動や検定にも取り組む
資格・検定試験にも挑戦するといいですね。
特に英検は、学部によっては(国際系の学部など)学校推薦型選抜の出願基準になったり、合否判定の際に加点されたり、「みなし得点」(例えば「英検2級を取得していれば、英語の得点を70点とみなす」など)として使われたりするだけでなく、試験対策の勉強が入学試験に生かされることもあるので、受検しておきたいところ。
私立大学の学校推薦型選抜では、部活動のキャプテン、生徒会の役員、ボランティア活動などが調査書で点数化されることもあるので、やっておくと有利な場合も。
ただし時間的に余裕があれば、というレベルで、そのために勉強がおろそかになってはいけません。
軸足はあくまでも評定平均を上げることに置きましょう。
コンマ1でも各教科の評定平均を上げるのが得策です。(堀先生)
高校3年生は1学期に全集中!
つまり3年生の1学期は、1年生と2年生でそれぞれ1年間頑張った成績と同じ価値があるのです。
1学期に猛勉強すれば、評定平均を0.3程度上げることも可能。
逆に、3年生の1学期の成績をガタ落ちさせたら、それまで2年間の頑張りが台無しになってしまいます。
3年生だけ履修する科目なら、1学期の成績がそのまま調査書に記入されます。
一般選抜の入試科目でもある科目は、評定平均を上げるためだけでなく、一般選抜を受験することになった場合、勉強した分だけ自分の力になっているはずなので、3年生の1学期の頑張りは、決して無駄にはなりません。
部活動でも、3年生の最後の夏はインターハイ予選や全国コンクールがあり、結果をだせば調査書でポイントになります。
3年生の1学期こそ、勉強に部活動に全集中すれば、調査書で高評価を得ることができるのです。(堀先生)
まずは現状を見極め、今からできることを頑張ろう
調査書は、学習の記録や部活動の実績、資格・検定など、点数化されるところを頑張ると、特に学校推薦型選抜で合格に近づくことができる。高校3年生になってからでも、調査書で高評価を得る方法はある。
各学年ごとにできることがあって、いつから始めても遅くはないから、頑張ってみよう!
各教科の学習や探究活動をはじめ、何ごとにも前向きに取り組み、部活動に全力で打ち込み、学校行事には積極的にかかわり、日直や掃除など日々の活動にも手を抜かない、という全方位主義の毎日を送っていれば、自然と高校生活は充実します。
知識や技能だけでなく、それを活用できる「思考力」「判断力」「表現力」を身につけるために、自分から進んで物事に取り組み、周りの人を巻き込みながら行動できる態度を意識して高校生活を送るといいですね。
その結果として、調査書においても必然的に高評価を得られるようになりますよ。
「探究」の学習は、大学での学びにつながり、将来にもプラスになって、自分の人生を豊かにしてくれると思います。
「楽しいから一生懸命にする」ではなく、「評価されるから一生懸命にする」でもなく、「一生懸命やれば楽しい」という感覚を体感できる毎日を送りましょう。(堀先生)
文/やまだみちこ 取材協力・監修/堀 浩司 構成/寺崎彩乃(本誌)
※2024年12月更新
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