高校生の留学体験②サンタとムーミンの国フィンランドへ
「英語ができるだけの人ならたくさんいる。ぼくはそれだけでなく、もう1つ自分らしさをもちたかった」――そんな思いを抱いて、村川龍一さん(高3)は高校1年の8月から10ヵ月間、非英語圏であるフィンランドに留学した。
青々と繁る針葉樹の森林と澄みわたる湖が美しい北欧の国、フィンランド。小さいころから「高校生になったら海外留学したい」と考えていた村川さんは、サンタクロース村があることやムーミンが創作された国であることから興味をもち留学先に選んだ。
滞在中にお世話になったホストファミリーは、両親、2人の姉妹、1人の弟の5人家族。姉妹がJポップやKポップなどアジアの音楽に興味があることから、村川さんの受け入れに至ったそうだ。
フィンランドの主要言語はフィンランド語。留学前はスクールに通って日常会話の基本を学んだが、最初は英語でのコミュニケーションが主だったという。
「フィンランド人の多くは英語が堪能です。お店ではアジア人だとわかると英語で話してくれたり、授業では先生やクラスメイトが英語でフォローしてくれたりしました」(村川さん、以下同)
ホストファミリーの両親は働いていたが、2人とも夕方5~6時には帰宅。たいていは家族そろって夕飯を囲んだ。夕食時のだんらんで両親から少しずつフィンランド語を教えてもらい、留学生活半年ぐらいからフィンランド語に切り替えていったという。
学校へは、同い年のホストシスターとともに通学。そこでたくさんの友達ができた。
「フィンランド人はけっこうシャイ。留学生がいるとわかっても、チラチラとみるだけで話しかけてこないことが多いんです。年の近いホストシスター2人から友達を紹介してもらうことから始めました。自分からも、授業で隣になった人には勇気を出して話しかけるようにしていましたね」
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)で上位にランクインするなど教育力に定評のあるフィンランド。学校の授業や課題の中身は日本と少し違うようだ。
「日本と同じような授業もありますが、ディスカッションする機会が多かったです。宿題は『問題集を何ページ』ではなく、あるテーマを与えられてエッセイを書くというものが主。テストの多くは、例えば2~3のトピックスがあげられていて、その中から1つ選んで説明しなさい、というかたちでした」
村川さんが留学中の印象的な出来事としてあげるのは、サンタクロース村やオーロラ観測で有名なラップランド地方への旅行だ。世界各国からフィンランドにやってきた留学生たちと共に行ったという。
「みんなで湖畔のサウナに入り、ほてってくると湖面の氷に穴をあけた湖に飛び込んで冷やすという入浴法を楽しんだのが良い思い出です。そこで留学生同士の絆が深まって、お互いのホストファミリーを行き来するようになりました」
留学生活で村川さんが得たものは、こうした楽しい思い出だけではない。
「授業でプレゼンテーションに慣れ、人前に出ることがあまり苦ではなくなりました。語学や社交性など、自分に自信がもてるようになった気がします」
留学前は目先のことしかみていなかったが、帰国後はその先にある将来にも目を向けるようになった村川さん。将来、仕事で再びフィンランドを訪れることを夢みている。
※取材協力:公益財団法人AFS日本協会